CoCシナリオ『青白い馬』

CoCシナリオ『青白い馬』は2022年2月にリリースした無料シナリオです。最新シナリオではないのでご注意ください。

CoCシナリオ『青白い馬』

しんとした夜、貴方それはやってきた。

◆概要(PL開示情報)

PL人数:1人
所要時間:1h~3h
探索者:新規・継続不問。探索者同士は初対面でも良い。

KP難易度:易
謎解き難易度:易
戦闘難易度:-
戦闘:なし
ロスト率:低

後遺症:ルートによってあり
推奨技能:特になし

形式:真夜中のクローズド・ルルブ第6版準拠(7版改変可)
ジャンル:アポカリプス
キーワード:終末・二人きり・旅・現代日本

備考
・感想、リプレイ動画など→歓迎!ネタバレ配慮&シナリオ名の明記をお願いします。
・シナリオ改変→OK。根本的な世界観の改変以外ならご自由に。
・改変シナリオの配布→不可。

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【シナリオ概要】
ある夜、KPCが探索者の家に訪ねてくる。

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※探索者同士は知り合いでも初対面でも構わない。
※同棲している場合、外泊予定のKPCが夜中に突然帰ってくるという改変で問題ない。
※KPCはキャラシを持たないNPCでもよい。

※探索者が海外在住だとKPの改変の負担が大きすぎるため日本在住推奨。


BOOTHでも配布中!
pdf・txt・グーグルドキュメント版の本文や、その他画像素材が欲しい方は下記よりダウンロードしてください↓

【日本語/中文】CoCシナリオ『青白い馬』【本文無料タイマン】 - ゴムヤボシ - BOOTH
それ しんとした夜、貴方はやってきた。 🌙KPCと二人きりで風のような旅をするシナリオ🌙 ◆概要(PL開示情報) PL人数:1人 所要時間:1h~3h 探索者:新規・継続不問。探索者同士は初対面でも良い。 KP難易度:易 謎解き難易度:易 戦闘難易度:- 戦闘:なし ロスト率:低 後遺症:ルートによってあり 推奨技能:...

※次の項からKPのみがお読みください。

※トレーラー画像直後の目次がネタバレなのでお気をつけください

当画像はセッション用にDLを許可します

KP準備

当シナリオには特別な準備は必要ありません。
うちよそ・既知関係の探索者同士によるタイマン形式を想定していますが、初対面の探索者同士でも構いません。
また、KPCをこのシナリオだけのNPCに置き換えても問題ありません。

KPCの台詞は適宜口調を変更してください。

グーグルドキュメント版がご入り用の方はBOOTHよりダウンロードしてください。

シナリオの見方

目次があるので適宜飛んでください。

●凡例
<探索ガイド>…シナリオ上用意されている探索場所。
[KP情報]や※…KPのみが知る情報。橙色で記載。
[開示情報]…なんらかの行動後、PLに開示していい情報。
【(技能名)】…該当技能を振ったときに出る情報。マイナス補正は目安であり、KPが適宜調整してよい。暗い赤で記載。
[こんな感じの部分]とか群青色の部分…状況に合わせて適宜変更してほしい部分
☆…SANチェックポイント
“”…資料
→〇〇へ…次のイベントもしくは移動先の場所
◆…戦闘相手
◎フラグ…回収されたフラグ

背景

イタリアのとある劇場で行われたプッチーニの『外套』は、高い評価を受けた役者が主役を務める特に秀でた公演だった。役者の素晴らしい演技と、それを見つめる何百もの観衆と、『外套』という「死」を扱ったオペラ、この三要素が偶然にも死の神シノーソグリスの招来に足る儀式となってしまう。
さらに、キリスト教徒が多いヨーロッパであったことも相まって、シノーソグリスの力は「黙示録の四騎士」という形で世界中に伝播していった。

外出中だったKPCは探索者より早くこの異変に気づき、探索者故の勘からか(あるいは素人ならではの思いつきか)「第四の騎士を止めないとまずい」という結論に至った。正面から青白い馬に飛び掛かって騎手を蹴落としたものの、馬の後ろに居たシノーソグリスを直視したせいで代わりに第四の騎士にされてしまった。

やがてKPCは第四の騎士の務めを果たしながら、人間じみた寂しさとほんの少しの「期待」を胸に探索者の家を訪れる。

登場NPC・神話生物

①シノーソグリス
神格/敵/確定遭遇
『外套』に誘われて来た。黙示録の四騎士も特に意図するところではない。

②KPC/第四の騎士
人間/味方/確定遭遇
第四の騎士になってしまったためややシノーソグリス寄りだが、探索者を無理やり連れて行くことで探索できるようにしてくれる。

③牧師/第一の騎士
人間/味方/確定遭遇
第一の騎士を救おうとして自ら騎士に成り替わった牧師。騎手と争った際に腕を落とされて隻腕になっている。シノーソグリスが原因であることも突き止めており、彼が残した情報は「場所:公園」「場所:白い馬」で発見できる。

導入

※以下、シナリオ本編(KPCの口調は適宜変更)
※KPCと探索者は知り合い想定で書いているため、初対面のときは適宜描写を変更

まだ少し肌寒い夜だった。探索者が自室のベッドで微睡んでいたとき、急に数頭の馬の蹄の音がした。パカラッパカラッと地面を打ち鳴らすその音は、映画やドラマで聞いたことがある、早駆けの音だった。

奇妙に思って窓を開ければ、夜のとばりの中、ぼんやりと家の前に明かりを持った誰かが居た。そのひとは馬に乗っていて、長いマントに包まれて、古めかしい帽子を被っていた。

「やあ」

そのひとは挨拶をしながら持った明かりで自分の顔を照らした。そこで探索者はこの馬上の人物がKPCであると気づいた。KPCが持っている明かりはどうやらランタンのようで、それで照らされている以外は、馬の背より垂れた丈の長いマントの、なんとなく物寂しいシルエットしか見えなかった。馬はおとなしく、ときおりしっぽを揺らしていた。

「こんな時間にすまない。寄ってもいいかな」

KPCは奇妙によく通る声で探索者にそう言った。

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※玄関を開けたら→イベント:二人

イベント:二人

探索者が玄関を開けると、静かな夜空の下、KPCが馬を降りる。そのひとは黒い山高帽に黒いマントを着けて、古ぼけたランタンを持っていた。ずいぶん時代錯誤な格好だがKPCは気にする様子でもなく、探索者がドアを開けてくれたことに笑顔を見せるだけだった。

探索者はランタンに照らされた微笑みを見て、その蒼白の顔色に一瞬気後れした。オレンジの柔らかな明かりに照らされてもなおKPCの顔は死者のように生気がない。無意識に一歩退いて、そのひとの少し後ろで待っている馬も、やけに青白い毛並みをしていると気づいた。真冬の月から生まれたような色だった。

「お邪魔します」

KPCはコートも脱がずに家の中に入った。

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【アイデア】【目星】/KPCをよく観察する
たしかにKPC本人だと感じるが、それと同時に自分の知らないものになっているような物寂しい印象を受ける。

[KP情報]初対面の場合、「たしかに人間のように感じるが~」といった改変が必要。

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※この時点の質疑応答でKPCから聞ける情報は以下。
※KPCはシノーソグリスの使者(第四の騎士)になってしまっているので、人間の死に対してどことなく他人事である。探索者に対しても「このままだと寂しいから連れて行きたい」という感情が先行している。初対面の場合も同様で「明かりが点いていたからつい誰かを連れて行きたくなった」という感じ。

Q.なにがあった?
→それはもう話しても仕方ない。ただ一人で行くのはあまりに寂しいからPCの様子を見に来た。

Q.どこへ行くんだ?
→この星のどこまでも。

Q.その格好は?あの馬は?
→自分は4番目になり、すぐに発たなきゃならない。あの馬は4番目である証だ。

Q.4番目?
→自分の前に何人か過ぎて行っただろう。だから4番目だ。テレビかラジオはある?

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※会話に関わらず、KPCかPCがテレビをつけるよう誘導し、つけたら以下

テレビをつけるとやたら画質の悪い映像が映し出される。真っ暗で静かな夜の映像で、ときおり赤いサイレンが前を通り過ぎていた。電波自体の不調なのか音も途切れ途切れだ。くぐもったキャスターの声が聞こえる。

「速報です。お伝えしていた原因不明の感染症の罹患者が世界で4億人を越えました。さらに昨晩から罹患者たちの死亡が次々と確認され、日本は中国地方および日本海側が完全に沈黙。現在どの自治体にも連絡が取れません。政府は先ほど緊急会議を開き『あと数時間で日本国民は全滅する恐れがある』と発表しました」

そこまで読んでキャスターの大きな咳の音が入る。ヒューヒューと空風のような音がまじるそれは、少しずつ苦しみを伴ったものに変わり、やがて映像はなんの読み上げもなくただただ真っ暗な夜を映すだけになった。

星しか明かりのないその光景を見て、探索者はようやく思いいたる。さきほど自分が招き入れた人物を初めて見たとき、周りが静かな闇の中だった理由を。ランタンの弱々しい明かりがはっきり見えた理由を。ただの夜ではない、今夜は、自分以外が死に絶えた夜なのだ。
☆非現実的な状況にSANc(1/1d4)

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※ここまで描写したら→探索:自分の部屋

探索:自分の部屋

よく見知った自分の部屋も明かりが絶え絶えになる。電気の供給が滞っているようだ。あと10分もしないうちに停電するだろう。

<探索ガイド>
①KPC②インターネット

①KPC

KPCは真っ黒なマントを脱ぎもしなかった。古ぶるしく重たそうなマントの隙間から、ときおり同じく古ぶるしいブラウスとベストが見える。ベストは暖かそうな短い起毛の生地だったが、少し青白らんでカビっぽい印象を受けた。

・・・・・

【歴史】【人類学】/【芸術(服飾系)】
KPCの着けているマントは襟がついた防寒用のマントであり、19~20世紀にヨーロッパの一部地方で、漁師や夜警などが羽織っていたものに近いと感じる。

[KP情報]『外套』に出てくるミケーレの外套を模しているため、庶民的で古めかしい。

・・・・・

[KP情報]KPCはふわふわしているが会話に応じないわけではない。以下のことはRPで伝えてもいいし、コピペしてもいい。ただしシノーソグリスの従者となっているため核心的なことは話さない。

●KPCが話す情報
・最初は「4番目」を止めようとしたが自分がなってしまった
・「4番目」になったときにこの服と馬を授かった
・独りで行くのは寂しいから探索者にも来てほしい
・断るならこのまま他の人間と同じように死ぬだろう
・自分が地球を全て周り終わったらこの星に住む命は死に絶える

②インターネット

ネットは重く、電波は途絶えがちだ。もはや表示されないサイトも多くある。辛うじて緊急ニュースや助けを求める人間たちの書き込みは見れそうだった。
ひとまず感染症について調べると「原因不明」「急速な感染力」「対応策なし」といった絶望的な状況が明らかになる。また、感染症が発生したのはヨーロッパのあたりのようで、それ以前のニュースによると直前に大規模な火災が起きたらしいというのがわかる。

・・・・・

【図書館】【コンピューター】など/「馬」の目撃情報を探す
様々なネットユーザーによって転載されている文章が見つかる。海外発祥のようで、日本語訳されて国内でも出回っているようだ。

第一の騎士は白馬に乗って勝利を、第二の騎士は赤い馬に乗って戦火を、第三の騎士は漆黒のような馬に乗って飢えを、第四の騎士は青白い馬に乗って死を。
黙示録が始まったのだ。我々には祈る力すら残されない。

イタリアで政府転覆を狙った革命軍が勝利したと報じられた頃が懐かしい。あれからたった半日だ。2時間後には混乱を恐れた欧州諸国が市民の弾圧を始め、畑も果樹園も焼かれ、そうしたらいつの間にか、みんな空咳をし出した。それからは、早かった。逃げる場所がないのなら、騎士を止めるしかない。だが黙示録の四騎士を誰が止められようか。

[KP情報]「ヨハネの黙示録の四騎士」に言及している内容。KPCに聞くなら四騎士が持っているものを教えてくれる(のちの探索で出る情報と同じ)。

・・・・・

【目星】【図書館】【コンピューター】など/SNSを見る
SNSはサーバー落ちが酷く、なんとかつながってもほとんどのアカウントが数時間前に止まっていた。
その投稿履歴の中に奇妙な映像があった。
それはおそらくイタリアの街角で、革命軍の勝利に沸く市民の間を一頭の赤い馬が駆けていくものだった。馬の上には大きな剣を差した騎士が乗っており、それが通り過ぎるや否や、駆け付けた政府軍に市民が蹂躙され、そこかしこに火をつけるという凄惨な様相へと変わった。

探索終了後の処理

※探索が終わったら以下の描写

KPCに連れられて玄関を出ると、しんと冷え込む夜が広がっていた。KPCが待たせていた青白い馬が鼻先の草を食んでいる。探索者はアスファルトの隙間から生えた弱々しい草をぼんやり視界の中に入れ、そのまま顔を上げる。馬の後方、おそらくKPCがやってきた方角は、庭木も雑草もすべて枯れ果て、ときおり風に乗って塵のようなものが流れてくるだけだった。

KPCは慣れた手つきで馬に乗る。「どうぞ」と右手を探索者に伸ばし、腕を掴んだかと思うと、片手で引き上げて自分の前に乗せた。

「これで景色を楽しめるよ」

後ろから聞こえるKPCの優しい声音は、わずかに冷たさを孕んでいた。KPCの合図に合わせて馬はゆっくり駆け出した。

[KP情報①]KPCは常人ではなくなっているので年齢・性別問わず腕力が上がっている。探索者はKPCを押さえこめない。また、これ以降探索者が馬から無理に飛び降りようとしてもKPCが力づくで止める(落馬したら死ぬため)。また、明らかにKPCの視界がPCで遮られてしまう体格差であってもKPCは前を見ずに馬を走らせる。

[KP情報②]馬に乗らせてしまえばもうPL/PCは探索するしかなくなるため、KPCも他愛のない会話に応じたり、外した技能を代わりに振ってやったりしてもいい。ただし馬を止めることは絶対にない。馬の運転を妨害するような行為に対しては力づくで抑え込むこと。

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※ここまで描写したら→探索:疾駆

探索:疾駆

青白い馬はすぐに風に乗り、冷たい夜を切って凄まじい速さで駆けていく。KPCはまるで生まれたときからそれを知っているかのように馬を操る。夜空の下、息も絶え絶えな人間たちがわずかな物資を求めて争い、通り過ぎる頃には沈黙していた。探索者は流れる景色の中で自分以外のあらゆるものが死んでいくのを見た。

馬の蹄とKPCの息遣いと、馬に引っかけられたわずかな荷物が揺れる音だけが耳に入る。青白い疾風は瞬く間にいくつもの街を抜け、目の前に似たような騎手の背が2つ見えた。騎手をそれぞれ乗せた黒い馬と赤い馬は、ほとんど肩を並べて走っている。視界を滑っていく景色の中で真正面に捉えているそれらだけが浮き出て見えた。

「彼らが気になる?言ってくれれば、横に着けるよ」

KPCが後ろから歌うように言う。パンと足で馬の腹を叩く音がして一層速度が出る。小石交じりの土埃が頬を切っていく。たしかにどちらの馬にもすぐに追いつけそうだ。もちろん、今一度この奇妙な状況を見直すことも可能だろう。

<探索ガイド>
①KPCの馬②黒い馬③赤い馬

分岐

①を探索する→場所:KPCの馬
②を探索する→場所:黒い馬
③を探索する→場所:赤い馬

場所:KPCの馬

KPCが持っていたものなのか、青白い馬の胴には小さな布袋が引っかけられている。振り返ればKPCが不思議そうに微笑み返す。スピードは緩められる気配がなく、風を切りながら馬は進んでいる。

<探索ガイド>
①KPC②布袋

①KPC

マントが翻って中のブラウスが良く見える。くたびれた襟に防寒用のベスト、腰には長い剣。これほどの風だと言うのに山高帽は飛ばされもせずKPCの頭に収まっている。

【目星】/剣を借りる
剣に注目しているとKPCが抜いて渡してくれた。手に持ってみるとやけに軽く、刃も尖っておらず、素人目には使い物にならなそうだったが、刀身に文章が彫られていることに気づく。

それに乗っている者の名は「死」と言い、それに黄泉が従っていた。

[KP情報]『ヨハネの黙示録』第6章8節からの引用。第四の騎士の描写。原書では黄泉=ハデスだが、本シナリオではシノーソグリスのことである。この情報を元に後方を見る場合、薄く霧がかってきていることがわかる。

②布袋

ところどころ穴が開いている茶色いぼろぼろの布袋だ。中には小さなノートと小型ラジオ、伊日辞書が入っていた。

小さなノートは日本語と英語混じりで様々なメモが取られているようだったが、パッと見で読めるのは最後の殴り書きのみだった。

外套を見ていたら霧が立ち込めた。きっかけは些細な事なのだろう。私が偶然イタリアに旅行していただけだったように、騎士たちが目覚めた理由も大きなきっかけなどないのだろう。私は逃げなければならない。

≪入手≫伊日辞書(イタリア語と日本語に対応した辞書)
≪入手≫小型ラジオ

[KP情報]イタリアに来て『外套』を観劇していた日本人。異変に気づいてイタリアから脱出しようとしたが、シノーソグリスに気に入られて第四の騎士にされた。文中ではただの「外套」としか書かれてないのでこれだけでオペラだとはわからない。

ラジオ

※ラジオをONにする場合は以下

ノイズ交じりではあるものの、いくつかのチャンネルがまだ生きている。インターネットよりは役に立ちそうだ。

[開示情報]以後、任意のタイミングで何回でもラジオをチェックすることができる。

・・・・・

●チャンネル1
日本語でニュース速報が流れている。この「終末」はイタリアから始まり東欧諸国やウズベキスタン、中国などに広がり、日本へと到達したようだ。富裕層は既にアメリカへ避難したらしい。

【ナビゲート】【知識】
イタリア、東欧諸国(ルーマニア・ブルガリア等)、ウズベキスタン、中国(北部)、日本はほぼ同緯度上に存在する国である。イタリアから東へまっすぐ進むのであれば、日本の次はアメリカへ着くとわかる。

[KP情報]騎士たちはイタリアから東回りで地球を駆けている。そのためまだスペインなど(イタリアの西)にはこの変化は起きていない。大体横3周・縦3周くらいで地球全土を覆う。幅の広いスズランテープで地球を巻いているイメージ。

・・・・・

●チャンネル2
ノイズが酷くなにを言っているのかわからないが、歌のようなものが聞こえる。場所が悪いのかもしれない。

・・・・・

[KP情報]ラジオは探索箇所(赤い馬・黒い馬)によって内容が変わる。最初にKPCの馬を調べていない場合は情報は取れないが、生還に必須の情報ではない(ただし何が起きているのかはわかりにくくなる)。

分岐

①別の馬を調べる場合→探索:疾駆
②「KPCの馬」「黒い馬」「赤い馬」すべてを調べた場合→イベント:待ち伏せ

場所:黒い馬

潮の匂いが鼻孔をくすぐる。探索者を乗せた馬は、いつの間にか水面を蹴って海の上を走っていた。

月明かりを受けた飛沫(しぶき)が一瞬宝石のように輝き、探索者の頬に当たって弾ける。無数の冷たさと、無数の輝きの中、紺碧を割るように突き進む漆黒の馬を捉える。長い尾が水気で少々重たさを孕んで揺れるのを見たとき、次の呼吸の間にはもう探索者は騎手と肩を並べていた。

「しばらく並走するから、見たいものがあるなら見なよ」

KPCが歌うように言う。

<探索ガイド>
①騎手②黒い馬

①騎手

騎手は金髪をなびかせ、KPCと同じような黒いコートとボロボロの山高帽を身に着けていた。しかしその手綱を持つ手には綺麗なジェルネイルが施されており、古ぶるしい出で立ちにも関わらず騎手自身は現代の人間ではないかと思えた。

おそらく女であろうが、山高帽は不自然と思えるほど暗い影を落とし、淡いピンクの口紅以外は何も見えなかった。

【目星】【アイデア】/騎手をよく見る
彼女は腰に天秤を差していた。抜き取って見てみると、天秤は探索者の前で[左/右]に傾いた。振り返ってKPCにかざしてみると左に傾いた。

[KP情報]探索者が発狂している場合「左」、正気の場合「右」に傾く。

また、柄にこのような銘文がある。

小麦一ますは一デナリ。大麦三ますも一デナリ。

反対側にも銘文がある。

小麦とスペルタ麦はおくてであるため打ち倒されなかった。

[KP情報]『ヨハネの黙示録』第6章6節(第三の騎士が出てくる箇所)。また、「小麦とスペルタ麦は~」は『出エジプト記』第9章29節の引用。小麦は大麦より実りが遅いため難を逃れた…という内容。

・・・・・

※騎手とコミュニケーションを取ろうとする場合は以下

彼女は探索者がいくら話しかけようとなんの反応もしなかった。ただ、微かな香水の香りと耳に光る大振りのイヤリングが、およそ初めからこの黴臭い外套を羽織っていたわけではないことを示していた。

KPCは探索者の様子を見て言う。

「騎手になってしまったら頭にうずまくのは深い霧ばかりだ。私もいつああなるかわからない」

②黒い馬

馬は毛並みが荒れ果て、焦土から這い出でたかのように黒かった。それでも太い脚が力強く海を蹴って嵐のように駆けて行く。馬の胴に下げられたエナメル質のポシェットが場違いに煌めていた。

・・・・・

【目星】/ポシェットの中を調べる
小さな手帳が出てくる。中にはイタリア語がびっしり書かれている。

・・・・・

上記手帳に【イタリア語】/伊日辞書を使って翻訳する
最後ページの簡単な走り書きだけなんとか読むことができる。

素晴らしい!あんなに恐ろしく、強烈な「死」を描くなんて!迷ったけどやっぱり来てよかったわ。バーに寄って誰かと話したいけど…今日は霧が濃いから早く帰らなきゃ。

蹄の音がする

走り書きはこれで終わっている。

[KP情報]この女性も『外套』の観客の一人。

ラジオ

[KP情報]「場所:KPCの馬」で既に「小型ラジオ」を手に入れている場合、放送をチェックすることができる。

●チャンネル1
ノイズ交じりだが何かの朗読をしているようだ。

「…(ノイズ音)…見よ、白い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、弓を手に持っており、また冠を与えられて、勝利の上にもなお勝利を得ようとして出かけた。

(ノイズ音)…今度は、赤い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、人々が互に殺し合うようになるために、…(ノイズ音)…大きなつるぎを与えられた。

また、第三の封印を解いた時…(ノイズ音)…黒い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、はかりを手に持っていた。
すると、(ノイズ音)…声が、こう言うのを聞いた、『小麦一ますは一デナリ。大麦三ますも一デナリ。オリブ油とぶどう酒とを、そこなうな』。

第四の生き物が「きたれ」と言う声を…(ノイズ音)青白い馬が出てきた。そして、それに乗っている者の名は『死』と言い、それに黄泉が従っていた」

「以上、『ヨハネの黙示録』に出てくる四騎士の部分です。現在起こっている災厄の連鎖はこの…(ノイズ音)…であると…」

「疫病…死…である第四の騎士のみが取り沙汰されていますが…(ノイズ音)イタリアから拡散するように山火事や…イナゴの大群も発生しており…現在感染症が確認されていない国では深刻な食糧…(ノイズ音)」

「しかし、希望を忘れてはなりません。出エジプト記では大麦より後に実る小麦が荒廃を免れたという…(ノイズ音)…我々の中にもこの小麦たりえる者が…どこかに…(ノイズ音)…」

[KP情報]『口語 新約聖書』(1954)から引用。オープンソースとして閲覧可能。

・・・・・

●チャンネル2
ノイズ交じりだが歌のようなものが聞こえる。イタリア語の歌らしい。男が叫ぶような声で人名を呼びながら歌っている。

[KP情報]『外套』で歌われるアリア「何もない、静かだ(Nulla! Silenzio)」。老船長ミケーレが歌う歌。妻と浮気している船員が誰か、一人一人名前を挙げながら怒りに震えている内容のため、人名が羅列される。

分岐

①別の馬を調べる場合→探索:疾駆
②「KPCの馬」「黒い馬」「赤い馬」すべてを調べた場合→イベント:待ち伏せ

場所:赤い馬

視界が夜の濁流に飲まれ、一瞬にして土色に染まる。ガツッという蹄の音でこの馬が大きく飛び上がって小さな島に降り立ったのだとわかった。馬はいくつもの島を飛び歩き、その度に土が力強く弾け飛ぶ。それは前方の馬も同様で、真っ赤な稲妻のように上がっては落ち上がっては落ちを繰り返した。

7つ目の島を越えたとき、ついに二頭が横並びになった。炎のようなたてがみと灰燼のようなたてがみが境目をなくすと思われるほどその距離は近かった。

「さて、どうしたい?」

KPCが得意げに囁く。

<探索ガイド>
①騎手②赤い馬

①騎手

騎手は男だった。正確には初老の、もじゃもじゃと髭を生やした小汚い男だった。彼もまた古めかしい山高帽と黒いコートを身に着けていたが、なぜだかそれがしっくりくるような、奇妙な風格があった。

だが男の顔に眼球はなく、代わりに二つの虚ろがそこにあった。探索者が顔を近づけて様子を伺っていると、男の口から大量のフナ虫がこぼれ出た。それらは逃げるように男の体を這ったが、数秒もしないうちに死に絶えた。
☆SANc(0/1)

【目星】/男の持ち物を見る
男は大きな剣を背負っていた。手に取って確認すると「地上から平和を奪い取ることを許され、また、大きなつるぎを与えられた。」という銘文があった。しかし、それ以上に、この刀身には怒り狂った多くの人間たちの顔がいくつも映し出され、それは探索者の心臓に火をくべた。手あたり次第に全てのものを蹂躙し、傷つけ、支配したいという欲望が頭の中に渦巻いた。

[開示情報]【POW*5】成功か自傷(HP-1)でこの剣を手放すことができる。手放さなかった場合、戦闘技能以外のすべての技能が-50%。また、KPCか馬に危害を加えようとしてしまう。

[KP情報①]KPCか馬に襲い掛かってもKPCに首を締めあげられて負けてしまう。そのときに剣を落としてもよい。なお、剣を破棄しても騎手はいつの間にか剣を背負っている。触れたら同じことになる。

[KP情報②]この騎手は『外套』でミケーレ役を演じた役者である。のちの資料で出てくるが、彼の「死」に対する凄まじい演技が、シノーソグリスを招来してしまった。

②赤い馬

灼熱のような毛並みの馬に、重たそうなブリーフケースが引っかけられている。ブリーフケースを開けるとイタリア語のパンフレットらしきものと冊子が出てきた。

②-i.パンフレット

騎手そっくりの男が美しい女性と見つめ合っている写真が表紙のパンフレットだ。大きく「Giacomo Puccini Il tabarro」とロゴが載っている。

【イタリア語】/伊日辞書を使う
ロゴの意味は「ジャコモ・プッチーニ 『外套』」であるとわかる。中に載っている写真や単語からこれは『外套』という名のオペラのパンフレットで、この騎手は主役。老船長ミケーレ役として世界的に評価されている役者であることがわかった。

【芸術(舞台系ジャンル)】【人類学】/【知識】½
『外套』は老船長とその若い妻、そして妻の浮気相手の男で織り成される全一幕の短いオペラだと知っている。このオペラの老船長は妻の浮気に怒り狂い、浮気相手の男を殺し、妻に外套の下に隠した死体を見せつける。最後は妻の絶叫で物語が終わる、まさに市井の中の「死」を強烈に描いた作品である。

②-ii.冊子

表紙に「Giacomo Puccini Il tabarro」と書かれている冊子。全編イタリア語だが、書式で台本だとわかる。ラストシーン付近の台詞が赤い丸で囲まれていた。

「妻が言う、『昔貴方は言ってたじゃない、“人は皆、一枚ずつの外套を持っている、時にはそれに喜びを包み、時には悲しみを……”』ミケーレがそれに答える、『そして時には犯罪を、だ。さあ入って来い』」

後ろから覗き込んでいたKPCがすらすらと言葉を紡いだ。振り向くと微笑んでいるような、悲しんでいるような表情を浮かべていた。

「すべてはここから始まった。だからこの格好なのか。けど、だとしたらこの“外套”の中は何だ?何かに使えるかもしれない…」

[KP情報①]KPCから重要情報が出る箇所。赤字部分の内容は口調変更しつつ必ず伝えること。KPCもまだ推測の段階なのでこれ以上の進展はない。ちなみにどんなKPCでもなぜかこの部分の台詞は読める(騎士になった影響)が、きちんとシーンの説明をできるかどうかは任意。

[KP情報②]台詞の引用はWikipediaから:外套(プッチーニ)

ラジオ

[KP情報]「場所:KPCの馬」で既に「小型ラジオ」を手に入れている場合、放送をチェックすることができる。

●チャンネル1
ノイズ交じりだが誰かが今の状況について証言しているようだ。

「…そもそも革命軍なんてものは(ノイズ音)…少数の若者による乱痴気騒ぎで、今まで誰も…(ノイズ音)…だけどあの白い馬が通った瞬間、突然…(ノイズ音)、誰も彼もが熱に浮かされた兵士のように…(ノイズ音)やはりあの騎士が…」

・・・・・

●チャンネル2
泣いているような歌っているような女の声がする。途切れ途切れで詳細はわからない。

[KP情報]冊子・パンフレットを読んだあとなら『外套』のジョルジェッタだとわかる。明確なシーン設定はないが、「黒い馬」を先に調べている場合はミケーレに縋っているシーン、ここを先に調べているときはルイージに縋っているシーンあたりになる。

分岐

①「KPCの馬」「黒い馬」「赤い馬」すべてを調べた場合→イベント:待ち伏せ
②まだ「黒い馬」を調べていない場合→イベント:第三の騎士
┗要するに、第三の騎士を飛ばして第二の騎士(ここ)を調べたらこのイベント

イベント:第三の騎士

※「黒い馬」より先に「赤い馬」を調べたときのみ発生

突如すぐ傍で馬のいななきが聞こえる。斜め後方に天秤を掲げた騎手が、黒い馬に乗ってこちらを追ってきていた。KPCが小さな舌打ちと共に馬を旋回させる。尾とたてがみがしぶきを散らして大きな円を描いた。

汗馬の水滴が目線を横切るのを感じながら、探索者の視点はその奥へと急激に絞られていく。真後ろ。今まで自分たちが駆けてきた、その方向。地平線を覆いつくすような霧が広がっているのだ。霧は夜の中にあってもなおそれとわかるほどの明瞭さで、まるで一つの生き物のように探索者たちを追いかけてきたようだった。
☆SANc(1/1d4)

無意識に息を殺していた1秒、いやそれにも満たないわずかな時間を経て、視界が先ほどまでの景色に戻る。浮島を飛び越えていく赤い馬と黒い馬が前方を走っていく。KPCは事を荒立てることもなく、見事に黒い馬の後ろに着いたのだった。

「やれやれ、あんなに怒らなくてもいいじゃないか」

KPCは溜息をつきながら馬の速度を調整している。しばらくはおとなしく先導たちについていくつもりだろう。

—————————————–

※探索者はKPCと簡単な質疑応答(会話)ができる。KPCの持っている情報は以下。

●騎士について
・黒い馬の騎士は3番目、自分は4番目だから順番は守らなきゃいけない
・あの騎士の天秤は「飢え」を象徴しているらしい。また、飢えた者は皆理性を失い気が狂うことから、あの天秤が彼岸に傾いた者は正気を失っているとわかるのだとか。

●霧について
・あれは「黄泉」だ。4番目の自分の後ろをついてくる存在だ。
・言ってしまえばあれをなんとかすれば今回のことは解決するだろうが、自分はもう「役割」を与えられてしまっているので全面的な協力ができない。
・何の策もなしに近づいたら危険だと思う。

分岐

※RPなどし終わったらKPCが探索再開を促す→場所:黒い馬
※「KPCの馬」もまだ調べてないなら選択肢に追加

イベント:待ち伏せ

※「探索:疾駆」にあるすべての馬を調べ終わった場合のみ発生

2頭の馬は一切の躊躇いもなく駆け抜けていく。青白い馬は食いつかんばかりに後を追っていたはずだが、視界の中の景色が少しずつ緩んできたところで、探索者はKPCが速度を落としつつあることに気づいた。

そうして、おそらくたった24時間前までは活気ある人々でいっぱいだったであろうビル街に着き、馬が歩みを止める。力なく倒れていた人々がKPCとその馬を見るなり、這いずるように傍に寄ってきた。上手く馬の後方に来れた者はそのまま息絶えた。這いずる力もない者は干からびた腕を時折動かすばかりだった。

「ここで待ってみるのもいいかもしれない」

KPCは憐れな人間たちを見向きもせず、探索者の肩を軽く叩いてから左―――方角で言えば「北」のほうを指差した。

「先頭の騎士はとびきり速い。もう東西の途(みち)は駆け終えて南北の途に差し掛かってくる頃だ。私が騎士の行進から外れるわけにはいかないが、4番目で居続けるのは問題ないから、ここで待ち伏せていれば先頭の白い馬とその騎士を調べられるはずだよ」

KPCは誰も居ない小さな公園の木に馬を繋いで、木製のベンチに座り、探索者に隣に来るように促した。足元に置かれたランタンがKPCの顔を弱々しく照らし、淡い光のゆらめきによって、かの表情を楽しげにも寂しげにも表現してみせた。

「少し疲れてしまった。どこにも行かないでくれよ。起きたとき独りぼっちは寂しい」

そう呟きながら、オレンジ色の中にあった瞼がゆっくり閉じられていく。KPCは音も立てずに微睡みの海へとこぎ出したようで、あとに残ったのは閉じた闇と探索者ばかりだった。

[KP情報]ここはアメリカである。サンフランシスコ~ニューヨークあたりの想定(イタリアと同緯度帯)だが、そこまで厳密に描写しなくてもよい。

—————————————–

※ここまで描写したら→場所:公園

場所:公園

KPCを休ませている間、気づいたら周囲を深い霧が覆っていた。50㎡にも満たない小さな公園のまだらな赤錆が入ったフェンスが、なぜかその霧をせき止めているように見えた。大きな気体の塊であるはずのそれは、十分な星明かりもないのに真っ白く辺りに充満し、ただただ公園の前に鎮座している。探索者は指先から血が抜かれていくかのように、じわじわと体温が下がっていく心地がする。

一体ぜんたい、なぜ真っ暗闇の中でこの霧が見えるのだろうか。なぜ今自分の視界に「霧がある」と、そう認識できるのだろうか。考えても答えが出るはずもなく、ただ真後ろから鳴った物音に心臓を掴まれた。振り返れば、やせ細った犬がしきりに何かを並べている。その奇妙で一心不乱な様子を、KPCの馬がぼんやりと見ている。

<探索ガイド>
①犬②KPCの馬③霧

[開示情報]KPCはうつらうつらしているだけなので、一緒に探索したいのであれば話しかけて起こすことができる。

①犬

やせ細った雑種犬は噛みちぎってきたらしい人の腕や足を夢中で並べていた。空腹であろうにも関わらず、肉を神経質に並べては、血が出んばかりに鼻を地面にこすりつける。四肢の動きは不自然で、目は焦点が合っていない。犬は探索者の姿に掠れた叫び声をあげたあと、霧の中へと走り去り、二度と戻ってこなかった。

【目星】【アイデア】など/並べられたものを調べる
聖書を握りしめている男性の腕が落ちている。聖書を取って開くと、最後に何ページにも渡って本文の上から英語が殴り書きされていた。落ち着いて解読すれば要点くらいは掴めそうだった。

●477ページ
黙示録の四騎士が現れて世界は急速に終末へと近づいている。神に仕える身として断言しよう。あれは主が遣わしたものではあるまい。黙示録によれば第四の騎士の後を追ってくるのは黄泉の神ハデスだと言うが、私はもっと恐ろしい―――少なくとも、魂の善悪など計ってはくれぬような、そんなものを感じた。

●478ページ
シノーソグリス。私が限られた時間で手に入れられた唯一の手がかり。イタリアのごく一部の地方で信仰されていた死の女神だという。彼女が来ると辺りには深い霧が立ち込め、動物たちは奇妙な行動を取り、人間は自分が死ぬ夢を何度も見るそうだ。

●479ページ
初めて騎士が目撃されたのはローマのとある大通りだった。通り沿いには古い劇場があって、当時公演されていたのが『外套』だったという。それを知ったとき、私は終末の傍らで思わず笑い声をあげてしまった。そうしてぼろぼろと涙があふれた。

『外套』は、老人が妻の間男を殺すだけの、ちっぽけな小幕だ。あれは英雄の死もなければ国の滅亡もない、凡庸な死の話だ。だが、だからこそ我々の外套の中にも収まるような、網膜に焼き付く死なのだろう。

そんなものを何百人もの人間が一斉に見つめるのだ。カルティスト共の陰鬱な儀式より、美しく朗々たる歌声が、どうして劣ることができようか。彼女は、来た。それだけだ。

この終末はある意味人が神に勝った出来事なのかもしれない。血の一滴も流れない、作家の頭の中で作られた死が、どんな生贄よりも優れていたのだから。だが裁かれる者のいない終末ほど残酷なものはない。

以降のページにも殴り書きがあったようだが、破られている。

②KPCの馬

青白い馬は木に繋がれたままおとなしくしている。近づいて胴回りの灰色の毛並みをしげしげと見つめていると、不意にその皮膚が盛り上がり、てらてらとした爬虫類じみた質感に変わった。驚いて顔を上げれば馬の顔には虹彩のない目が4つ増え、左側だけに不規則に密集している。しかし、次の瞬間には気のせいだったかのように普通の馬に戻っていた。
☆SANc(1/1d2)

・・・・・

【アイデア】【クトゥルフ神話】【オカルト】
この馬を含む四騎士は本物ではなく、人間の持つ死や終焉のイメージと密接に結びついたことによって出現したものなのではないかと思いいたる。本質はあの悍ましい霧にあると感じるが、同時に、人々が四騎士の力を信じているからこそ黙示録に載っている「規則的な」終末で済んでいるのではないかとも感じる。

[KP情報]最終行動のヒント(第一の騎士の弓を使う等)だが、ダイスでしか出てこないため拾えなかったらKPCを起こして同じ内容を話させてもよい。一応似たような情報は「場所:白い馬」でも出る。

③霧

風に流されることもなく、まるでKPCが動くのを待っているかのように留まっている。

一歩足を踏み入れたとき、探索者は深い霧の中に、ねじれた岩のような、螺旋に絡まる樹木のような影を見た。その瞬間視界が暗転し、自由に動かない四肢と、二重映しのように青白い馬に乗る自分を見た。KPCと二人、すべての生き物を根絶やしにして、この星を駆けながら白砂のように崩れて消えていく。砂は風に舞い、後を追いかけてきた霧の中に吸い込まれて行った。
☆自分の死に様を見た探索者はSANc(0/1d4)

探索者は自分の叫び声で目を覚ます。辛うじて目線を動かすと足元に一枚の紙が落ちていることに気づいた。それは聖書を破ったもので、上から殴り書きがしてあった。

●480ページ
自らを傷つけた者、大事な者を害した者は、何人(なんぴと)からも奪われる前に自ら理性を奪い去る。決意ある狂気はときに我々に戦う力を齎す。

探索者は紙を握りしめ転がるように公園に戻った。霧も霧の中の影も追ってくることはなかったが、これ以上は近づく気さえ起きなかった。

[KP情報]最重要情報の一つ。①犬で見つかるメモ書きの続きである。ページ数は新約聖書(本文480ページ)であることを示唆しているだけなので特に意味はない。

探索終了後の処理

※すべて探索し終わったら以下(KPCが寝ている場合は起きて話しかける)

手がかりほしさにラジオをいじってもノイズさえ聞こえなくなっていた。気づけばKPCが後ろに居た。

「そろそろだね」

馬の手綱を握って探索者を見つめている。遠くで蹄の音がする。北から直線の吹雪のような白い馬が駆けてくる。KPCが探索者を乱暴に抱えて馬に飛び乗った。弓を構える第一の騎士を真正面に向かえながら、KPCもまた剣を抜いた。

—————————————–

※ここまで描写したら→場所:白い馬

場所:白い馬

その騎士は隻腕だった。片手で弓を構え、口を使って引き絞る。進路を塞ぐ自分たちに向かって過(あやま)たず矢が飛んでくる。KPCはそれを長剣で弾く。器用に旋回と地団駄を繰り返しながら白馬へ距離を詰めていった。

「ほら早く!」

KPCは怒鳴りつけるように探索者に言う。

<探索ガイド>
①騎手②白い馬

①騎手

騎手は隻腕ということ以外、他の騎手たちと同じ格好をしていた。30代半ばくらいの男で、弓を絞るために弦を噛むたびに、山高帽の間から落ちくぼんだ眼孔が見えた。

【DEX*5】【こぶし】【組み付き】など/弓を奪い取る・調べようとする
弓には「それに乗っている者は、弓を手に持っており、また冠を与えられて、勝利の上にもなお勝利を得ようとして出かけた。」と彫られていた。騎手が取り返そうと咄嗟に弓を掴む。しかし、矢を放ちすぎて血まみれになったその指は、銘文を少しだけなぞって離された。探索者が手に残った弓に目を落とすと、「勝利」の文字だけが彼の赤い血で輝いていた。

探索者が弓を手に入れたのを見て、KPCは剣を騎手の背中に引っかけて矢筒を奪った。そのまま探索者の腕の中に落とし、再び馬の制御に戻った。
≪入手≫第一の騎士の弓と矢

[KP情報]これがないとほぼ生還不可能。ダイスを外しても積極的に提案を促したりKPCから弓を取れと言わせたりすること。銘文は6章2節からの引用。

②白い馬

胴に煌びやかな冠とブックベルト付きの手帳が引っかけられている。冠は難なく取れるが、特に奇妙な点は見当たらない。手帳には英語でいくらかの記載が見られる。

●1ページ目
彼女が黙示録の四騎士と結びついたのは不幸中の幸いだったかもしれない。死を司る第四の騎士を第四の騎士たらしめているのはかの者に従う黄泉である。そして終末を終末たらしめているのは騎士たちの行進である。この法則さえ突き崩せれば、我々の世界は元の姿に戻るだろう。問題は手段だ。法則を崩すために法則を利用するべきかもしれない…。

●2ページ目
正面からでは彼女「に」理性を奪われる。

[KP情報]騎手及びこの手帳の持ち主は公園で聖書に殴り書きをしていた男性と同一である。筆跡を見るなら気づいてもよい。

—————————————–

※全て調べたら以下の描写

「調子はどう?」

馬をさばきながらKPCが声をかける。返事をしようと振り返れば、KPCの外套の内側から白いもやが立ち込めていることに気づく。後方のより深くなった霧と同じものに見えた。

【アイデア】【クトゥルフ神話】
この外套の中はあの霧の中に繋がっているのではないかと感じる。

[KP情報]重要情報ではあるが、外套を使った生還方法は後遺症確定ルートなのでダイスを外したらそれで終わりにしたほうが親切な可能性もある。

—————————————–

※ここまで終わったら→イベント:終末

イベント:終末

第一の騎士はKPCと激しい攻防を繰り広げていたにも関わらず、突如としてその動きを止めた。彼は手綱を引き、暴れる白馬を無理やり後退させている。真っ白な蹄の音が重く響き、鈍く鈍く―――まるで音と現象が合っていないかのように鈍く、尾を引いていく。頬をしんとした冷たさが撫でる。視界の端が白く染まっていくのがわかる。後方から追ってくるだけだった霧が、首をもたげるように自分たちに押し迫ってきていた。

「私たち、四騎士失格みたいだね」

KPCが皮肉をこめて呟く。深い深い真っ白な霧の中に居る何かが、その巨体をうねらせながら這い出ようとしている。月の光だけが輪郭を浮かび上がらせ、沈黙したビルの影がうっすらと何棟も見えて、まるで「彼女」の貌にかかった薄絹のヴェールを持ち上げているかのようだった。

もはや探索者に残された猶予は一刻もない。

[開示情報]何か一つ行動ができる。技能ロールは必要ない。これまでの情報や描写などを見返し、よく考えてから最終行動宣言をすること。なお、正解の行動だった場合のみ、最終行動宣言が2行動分と取れる内容であっても構わない。
また、当シナリオの生還には複数の手段が存在するため、必ずしも全ての情報を使うわけではない。

エンド分岐

[KP情報]生還するためには「終末の定義を壊す」必要がある。また勝利の騎士である第一の騎士が持っていた弓矢でないとシノーソグリスには効かない。よって以下のパターンがある。

①自傷あるいはKPCを傷つけることで発狂してからシノーソグリスに第一の騎士の矢を撃つ(黄泉の撃退/最も安全)→イベント:魂を奪う者
※すでに発狂していたとしても、自傷かKPCを害する以外の原因では意味がない。

②なにも対策せずにシノーソグリスに第一の騎士の矢を撃つ(黄泉の撃退/出目ゲー)→イベント:彼女

③KPCの外套の中に入ってシノーソグリスの体内にワープし、第一の騎士の矢で傷つける(黄泉の撃退/後遺症確定)→エンドB:悲しむ人々は幸いである

④自分が弓矢で白馬を殺し、「同時に」KPCに青白い馬を殺させる(この場からの騎士の一掃/出目ゲー)→イベント:騎士はもう居ない

・・・・・

※「KPCの外套の中に矢を撃ち込む」は矢の軌道的にシノーソグリスに当たらない(上空に出るため)。

イベント:魂を奪う者

※発生条件:自傷あるいはKPCを傷つけることで発狂してからシノーソグリスに第一の騎士の矢を撃つ
※以下は自傷した場合の描写のため、KPCを傷つける場合は適宜描写を変更すること。

探索者は手に持った矢を咄嗟に自分の太ももへと深々と刺す。鏃(やじり)が完全に自分の肉の中に入り、隙間から血が溢れてくる。喉が急速に乾いていくような、目からあらゆる水分が失われていくような、呼吸さえままならなくなるほどの痛みが脳を駆け巡る。
☆探索者はただちに現在の正気度の1/5の値を失う

[KP情報]現在SANの1/5の値の減少=無条件で不定の狂気が発症する値。発狂内容は「シノーソグリス撃退への執着」に固定。ここではシノーソグリスに干渉させる前に「自分の意志で」発狂したことが重要になる。

驚くKPCを乱暴に掴んで伏せさせ、探索者はまるで有史以前からそうすることが必定であったかのように矢をつがえる。重たい霧の影から黒い石碑のようなものがゆっくりと姿を現し始める。それは折り重なり捩じ上げられた石碑に見えたが、なぜかどことなく有機的な輪郭を有しており、硬い岩壁の隙間から人間の腕じみたものが一本だけ突出していた。まったくの意味をなさない、この世のどの合理にもそぐわない、かくも不快で悍ましい姿が死の神シノーソグリスの全貌だった。

だが、今の探索者にはその強大な恐ろしさを理解できない。目はまっすぐ石碑の中央に向けられ、いつの間にか垂れてきた鼻血を舌で舐めて、筋肉が引き裂けんばかりに弓を引き絞る。撃つ、撃つ、撃つ。それだけに脳が支配されている。曲線の表面にほんの小さな波状のひびを、異常な集中力で見つけたとき、探索者はほぼ反射的に矢を放っていた。

—————————————–

※ここまで描写したら→エンドA:一日の苦労は、その日一日だけで十分である

イベント:騎士はもう居ない

※発動条件:自分が弓矢で白馬を殺し、「同時に」KPCに青白い馬を殺させる

探索者は「彼女」に追いつかれる前に素早く矢を白い馬に放つ。矢は馬の眉間に深々と刺さり、第一の騎士は馬と共に地面へ倒れ伏す。だが背後のKPCは未だに剣を振り上げたまま自身の馬に振り下ろせずにいた。その手は震えており、目は血走り、第四の騎士という呪いに蝕まれているようだった。

[KP情報]KPCは【POW*5】を振る。ステータスがない場合はここで3d6を振ってPOWの値を決めてからロールすること。このダイスはオープンで振る。

分岐

①【POW*5】成功→エンドC:怒りは一瞬で、恵みは命ある限り長い

②【POW*5】失敗→KPCは剣を振り下ろせないことを描写し→エンドD:罪から来る報酬は死である

イベント:彼女

※発動条件:なにも対策せずにシノーソグリスに第一の騎士の矢を撃つ

第一の騎士から奪った「勝利の矢」を弓でつがえる。重たい霧の影から黒い石碑のようなものがゆっくりと姿を現し始める。

それは折り重なり捩じ上げられた石碑に見えた。古びた歪な、どこにも存在しない文字が書かれた石碑だ。表面は石であるにもかかわらず、どこか有機的で、時折どくりと臓器のように波打った。小さな波状のひび割れから何色ともつかない水が漏れ出した。螺旋状の石の隙間には人間の腕じみたものが一本だけ突出していて、拳を握ったまま細かく痙攣している。まったくの意味をなさない、この世のどの合理にもそぐわない、かくも不快で悍ましい姿が死の神シノーソグリスの全貌だった。
☆SANc(1d10/1d100)

分岐

[KP情報]KPCにもSANcが入る。SAN0になった場合、完全に騎士になってしまい馬を走らせてしまうので探索者が矢を当てられなくてエンドD。それ以外のケースはKPの判断に任せる(発狂なら幸運を振って馬が動かないか判定するなど…)。

①SANが0になった/発狂した→エンドD:罪から来る報酬は死である

—————————————–

②発狂しなかった場合は以下

幾重にも頭の中で再生される自分の、KPCの、あらゆる人間の死の映像が、探索者の魂を散り散りに引き裂こうとする。それでも探索者は冷静に弓を引き絞り、眼前の強大な神に向かって矢を放った。

※ここまで描写したら→エンドA:一日の苦労は、その日一日だけで十分である

エンドA:一日の苦労は、その日一日だけで十分である

※到達条件:先述したいずれかの方法でシノーソグリスを撃退する

第一の騎士の―――勝利の騎士の矢はシノーソグリスめがけて流星のように飛び、彼女の「肌」に深々と突き刺さった。その瞬間、大気が嵐のように揺さぶられ、霧が探索者の視界を覆った。KPCの悲鳴が馬の制御が効かなくなったことを示していた。瞬く間に探索者は地面へと投げ出された。

痛みに耐える余裕もなく慌てて身を起こす。KPCも同様に、横で呻きながら顔を上げる。周囲に広がっていたのは、しんとしたビル街だった。

しかし、この街は確かに生きていた。朝焼けが空に広がる中、コンビニの電気が点いているのが見える。のろのろと信号を無視して走る車が見える。新聞屋の自転車が路地に入っていくのが見える。静かだった。だが、まだみんな起きていないだけなのだ。

探索者たちが呆然としていると、視界の端から白馬の描かれたリヤカーを引いた長髪の男が歩いてきた。髭は伸びっぱなしで、どことなくヒッピーのような雰囲気さえある。男は慣れた様子で話しかけてきた。

「どうなさいましたか?寝る場所に困っているなら…僕たちの無料支援所に案内しますよ。どうぞ、ほら、このリヤカーに乗ってください。大丈夫です。困った人を助けるのが僕たちの仕事ですから」

探索者とKPCはなすがままにリヤカーに乗せられて運ばれていく。支援所では暖かいスープをもらって、昼頃には日本行きの飛行機に乗ることになった。

生還報酬

●生還報酬
正気度回復 1d10
【クトゥルフ神話】+5%

●不定の狂気の特殊処理
「自分の意志で」発狂していた場合、以下のどちらかの狂気と技能成長を持ち帰る。狂気の継続期間は1d10か月、技能は永続。
①神話生物と戦えるように鍛錬し続ける(【弓】+20%。※初期値10%)
②シノーソグリスに勝ち続けるために研究する(【クトゥルフ神話】+10%・シノーソグリスについて、6版マレモンに掲載している情報すべてを知識として得る)

エンドB:悲しむ人々は幸いである

※KPCの外套の中に入ってシノーソグリスの体内にワープし、第一の騎士の矢で傷つける

探索者は馬上で体をひねってKPCの外套をまくりあげ、そのまま体を突っ込んだ。困惑するKPCの声を背に聞きながら外套の中に落ちていく。霧はどんどん濃くなっていき―――思惑通り、シノーソグリスの真上に飛び出した。

ねじれた岩の裂け目にちっぽけな自分の体が落ちていく。中は羊水のような奇妙な温かさがあり、無数の突き出た小石が肌を破っていった。幾重にも頭の中で再生される自分の、KPCの、あらゆる人間の死の映像が、探索者の魂を散り散りに引き裂こうとする。半ば意識を失いかけながら矢を握りしめた腕を振り上げる。重力に任せて上から下へ、小さな小さな勝利の鏃が一直線に彼女の体内を傷つけた。

突如体が重くなる。水中のようだった体が一気に宙に放り出されたのだ。凄まじい速度で地面に叩きつけられながら、探索者は自分の周りの霧が薄れていくことに気づく。自分の名前を呼ぶKPCの姿もあと少しもすれば鮮明に見えるだろう。

だが、霧が完全に晴れる直前、巨大な手が探索者の体を鷲掴んだ。その腕は人間の肉ではなかった。霧散していく黒い物体から伸びている、まさしくシノーソグリスの腕である。探索者は絶叫しながら引きずられていく。口から、鼻から、目から、彼女の霧が入り込んでくる。体内が霧でいっぱいになったとき、誰かが必死に自分を抱き寄せた。

霧がすべて晴れた周囲に広がっていたのは、しんとしたビル街だった。

しかし、この街は確かに生きていた。朝焼けが空に広がる中、コンビニの電気が点いているのが見える。のろのろと信号を無視して走る車が見える。新聞屋の自転車が路地に入っていくのが見える。静かだった。だが、まだみんな起きていないだけなのだ。KPCが自分を抱きしめて震えていた。

終末は、もうない。自分たちは帰れるだろう。だが探索者の頭の中には深い深い霧が渦巻いている。穏やかな死の女神の息吹が―――。

生還報酬

●生還報酬
正気度回復 1d10
【クトゥルフ神話】+5%

●後遺症
今後、発狂内容が「希死念慮」に固定される。
※一時・不定のどちらかか、両方にするかは任意
※デバフ解除系のシナリオで解除してOK

エンドC:怒りは一瞬で、恵みは命ある限り長い

※到達条件:青白い馬を殺せという指示にKPCが【POW*5】を成功させる

KPCは自らの呪いを断ち切るように怒声を上げ、力任せに剣を突き立てる。青白い馬は血を流すこともなく、ぶよぶよと奇怪に形を変えながら倒れ行く寸前に霧散した。探索者はなすすべもなく地面に投げ出された。

痛みに耐える余裕もなく慌てて身を起こす。KPCも同様に、横で呻きながら顔を上げる。周囲に広がっていたのは、しんとしたビル街だった。

しかし、この街は確かに生きていた。朝焼けが空に広がる中、コンビニの電気が点いているのが見える。のろのろと信号を無視して走る車が見える。新聞屋の自転車が路地に入っていくのが見える。静かだった。だが、まだみんな起きていないだけなのだ。

探索者たちが呆然としていると、視界の端から白馬の描かれたリヤカーを引いた長髪の男が歩いてきた。髭は伸びっぱなしで、どことなくヒッピーのような雰囲気さえある。男は慣れた様子で話しかけてきた。

「どうなさいましたか?寝る場所に困っているなら…僕たちの無料支援所に案内しますよ。どうぞ、ほら、このリヤカーに乗ってください。大丈夫です。困った人を助けるのが僕たちの仕事ですから」

探索者とKPCはなすがままにリヤカーに乗せられて運ばれていく。支援所では暖かいスープをもらって、昼頃には日本行きの飛行機に乗ることになった。

生還報酬

●生還報酬
正気度回復 1d10
【クトゥルフ神話】+5%

エンドD:罪から来る報酬は死である

※到達条件:正解以外の行動・出目に負けるなど

—————————————–

※まだシノーソグリスのSANcを入れてない場合は先に以下を描写

重たい霧の影から黒い石碑のようなものがゆっくりと姿を現し始める。

それは折り重なり捩じ上げられた石碑に見えた。古びた歪な、どこにも存在しない文字が書かれた石碑だ。表面は石であるにもかかわらず、どこか有機的で、時折どくりと臓器のように波打った。小さな波状のひび割れから何色ともつかない水が漏れ出した。螺旋状の石の隙間には人間の腕じみたものが一本だけ突出していて、拳を握ったまま細かく痙攣している。まったくの意味をなさない、この世のどの合理にもそぐわない、かくも不快で悍ましい姿が死の神シノーソグリスの全貌だった。
☆SANc(1d10/1d100)

—————————————–

※上記処理があってもなくても以下を描写

霧が自分たちを包み込む。淑女のヴェールは死神の囁きに変わり、かくあるべしと頭の中に入り込む。終末。騎士。黙示録。自分は騎士の侍者なのだと、この者と共に最果てまで終末を届けるのだと、一種の恍惚さえ胸に込み上げる。探索者は前を向く。腹の横からKPCの腕が伸び、手綱を握り直す。

「一緒に来てくれてありがとう」

すべてを忘れたような、穏やかな声でKPCが言う。規則正しい蹄の音と身を切る風の音が心地よかった。二人は駆ける、駆ける…世界が終わり、自分たちが終わるまで。

—————————————–

世界滅亡。ロスト。

余談・宣伝

短いくせに情報量キモすぎて全部?ブロックで構成されたマリオのステージみたくなってしまいました。

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22.02.02 ヴォンボ(@deitoro)

本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION

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