CoCシナリオ『君の胴』

CoCシナリオ『君の胴』は2021年4月にリリースした無料シナリオです。最新シナリオではないのでご注意ください。

CoCシナリオ『君の胴』

君が横たわっている。廊下は暗い。

◆概要(PL開示情報)
PL人数:1PL固定(タイマン)
所要時間:ボイセ30分~1時間
探索者:PCはKPCと面識があること。新規・継続不問。

KP難易度:易
謎解き難易度:易
戦闘難易度:戦闘なし
戦闘:戦闘なし
ロスト率:低

推奨技能:【目星】

形式:一本道クローズド・ルルブ第6版準拠
ジャンル:シュールホラー
キーワード:独りぼっち、一本道、初心者向け

備考
・感想、リプレイ動画など→歓迎!ネタバレ配慮&シナリオ名の明記をお願いします。
・シナリオ改変→OK。根本的な世界観の改変以外ならご自由に。
・改変シナリオの配布→不可。

—————————————–

※当シナリオはKPCをPCと縁のあるNPCに置き換えて回すことも可能です。
※KPC-PCの関係性は知り合い以上なら問題ありません。


BOOTHでも配布中!
pdf・txt・グーグルドキュメント版の本文や、その他画像素材が欲しい方は下記よりダウンロードしてください↓

【日本語/中文】CoCシナリオ『君の胴』【30分タイマン】 - ゴムヤボシ - BOOTH
君が横たわっている。廊下は暗い。 30分で終わるタイマンシナリオです。KPCはのびのびしているだけなので探索はPCのみが行います。 独りぼっちで怖い思いをするよその子が見たい!というときにおすすめ。 ※当シナリオはKPCをPCと縁のあるNPCに置き換えて回すことも可能です。 ※KPC-PCの関係性は知り合い以上なら問題...

※以降の項目はKPのみがお読みください。

※トレーラー画像直後の目次がネタバレなのでお気をつけください

当画像はセッション用にDLを許可します

KP準備

・このシナリオには特別な事前準備は必要ありません。
・PCの行動によってはKPCに後遺症が付与されます。

Googleドキュメント版がご入り用の方はBOOTHからDLしてください。

シナリオの見方

目次があるので適宜飛んでください。
KPはNPC解説→ルート解説→背景→導入…の順で読んだほうが理解しやすいかも。

●凡例
<探索ガイド>…シナリオ上用意されている探索場所。
[KP情報]…KPのみが知る情報。
[開示情報]…なんらかの行動後、PLに開示していい情報。
【(技能名)】…該当技能を振ったときに出る情報。マイナス補正は目安であり、KPが適宜調整してよい。
☆…SANチェックポイント
“”…資料
→〇〇へ…次のイベントもしくは移動先の場所
◆…戦闘相手
◎フラグ…回収されたフラグ

背景

夜の中から覚醒世界を視ているリリスは、しばしば気に入った人間の魂を攫い、その人間を模した人形に閉じ込めて遊んでいた。人形は夜の魔女の目を通して捉えられた歪な姿であったが、本物の魂を押し込められたそれは、縁深いもう一人の人間を喚ぶには十分だった。

一方で、リリスと同じく覚醒世界に介入することを好むニャルラトホテプは、彼女の気まぐれな遊びを目障りに思っていた。ニャルラトホテプはリリスのねぐらに僅かに干渉し、彼女の遊びが「ちょうどいいところで」失敗に終わるように細工した。

リリスに攫われたKPCの魂に喚ばれ、探索者は魔女のねぐらを歩くことになる。

登場NPC・神話生物

①KPC
人間/味方/ルートにより遭遇(エンド描写)
シナリオ中はほとんど出番がない。リリスにたまたま目をつけられて魂を攫われてしまう。本人が寝てる間に起きた出来事なのでまったく記憶にないし意識もない。

②リリス(マレモンp.256)
神話生物/敵/確定遭遇
夜の魔女。人の魂を歪な人間に閉じ込めて気晴らしをしており、たまにそれに引っ張られてねぐらに来てしまう人間を食べたり潰したりしている。なお、巨大で邪悪な姿のためSAN減少値はリリスの化身である雌ガグに準拠している。

③ニャルラトホテプ(6版p.221)
神格/味方/遭遇なし
リリスのねぐらに干渉し、彼女を退けるためのアイテムやヒントを残している。

導入

※ここからシナリオ本編
※PCの持ち物はすべて無い

目が覚めたら廊下だった。暗い、金属製の壁に囲まれた廊下だ。それは例えば研究所や軍事施設のものに思えた。蛍光灯は自分の真上と、左右1ブロックほどだけちらついており、それ以外に光源は見当たらない。だから、この廊下が前にも後ろにも長かろうということはわかっても、ドアがありそうだとか、曲がり角がありそうだとかは暗闇に遮られて到底判別つかなかった。

しかし、一つだけ見えるものがある。探索者の2メートルほど前、辛うじて蛍光灯の明かりが届く範囲に人の両足。ちょうど仰向けに横たわっている向きだが、見えるのは膝までであり、それより上は暗くて見えない。

<探索ガイド>
①前②後ろ

①前

前に進んでその両足を確かめる。見覚えのある靴だった。KPCがよく履いていたものだ。だが動く気配はない。靴の横には財布とその中身がぶちまけられていた。カードや保険証からKPCのものだとわかる。

・・・・・

【目星】/体に触れる
膝から上が暗闇に覆われていると言っても、段々と目は慣れてくる。真っ暗な空間にうすらぼんやりと輪郭が浮かび上がりはじめ、違和感に気づいたのはそのすぐあとだった。KPCの体の輪郭がどこまでも続いている。廊下の奥の奥、もはや何も見えない黒一色のほうまで、ずっと続いているように見える。それはつまり、この横たわっている両足に繋がっているはずの胴、あるいは足、あるいは首が、異様なほど長く伸びているということに他ならなかった。試しに足を引っ張ろうとしてもびくともしない。それは人間の重さではなかった。
☆依然として膝から下しかはっきりと見えない。SANc(1/1d3)

・・・・・

【医学】【生物学】/履物の裾をめくる/靴と靴下を脱がす
脛からつま先までしか見れないが、人間の足のように見える。体温もだいたい人肌だろう。

・・・・・

【目星】/廊下の奥を見る
この廊下は暗すぎてどこまで続いているのかはわからない。ただ、この方向へ進めばKPCの顔は見れるはずだ。

②後ろ

後ろを振り返ってもなにもない。ただ長い廊下が続いているだけだ。2メートルも進むと光源がなくなるため何も見えない。ときおり、女の笑い声のようなものが聞こえる。反響から察するに数百メートルの距離があるように思う。

分岐

①後ろに進む→サブイベント:嘲笑
②前に進む→場所:腰
③これ以降、PCがKPCに攻撃を加える行動を取った場合→処理:KPCへの攻撃

サブイベント:嘲笑

※後ろに進んだ場合のみ発生

横たわるKPCから背を向けるように後ろへ戻る。黒く塗りつぶされたかのような暗闇に足を踏み入れる。一歩前に進むごとに女の笑い声は大きくなる。壁、床、天井の輪郭が僅かに見えるだけで他はなにもわからない。ただただ女の笑い声がする。その声を聞くたびに、心臓を握りつぶすかのような恐怖と焦燥が喉にせりあがる。
☆女の声は気まぐれに止み、気まぐれに再開する。SANc(0/1d2)

[KP情報]PLに危機感がない場合、少し進んだ後もう一度このイベントを起こしてSANc減少値を2倍にし、警告してもよい。

分岐

①それでも後ろに進む→エンドC:破顔
②前に進む→現在地から次の探索箇所を描写

処理:KPCへの攻撃

[KP情報]リリスに魂を封じ込められている間(PCが最終行動で魂を解放するまでの間)横たわる長い体はKPCの体と同義である。PCが加えた攻撃はそのまま現実のKPCの体に反映される。よって以下の処理をする。

—————————————–

①攻撃はどのような手段でも自動成功とし、ダメージを算出

例)KPCの体を踏みつける→【キック】自動成功:ダメージ1d6+db

※PCが最終行動でKPCの魂を解放するまでに受けたダメージがKPCのHPを上回った場合、KPCは死亡する。KPはそれをPLに知らせる必要はない。そのままシナリオを続行し、最終行動後にエンドD:君の夜を描写する。

※KPCがキャラクターシートを持たない場合は、KPが(CON+SIZ)÷2として{3d6+(2d6+6)}/2でHPを算出し、それを上回った場合死亡として処理する。(ココフォリアは中かっこ{}に反応しないので先にCONとSIZを算出しておくとよい)

—————————————–

②以下を描写

探索者が攻撃を加えても、KPCが動くことはなかった。皮膚を調べれば損傷が見られることから攻撃自体は通っているようだ。

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①②の処理が終わったら探索に戻ってよい。ダメージは蓄積であるため、注意すること。

場所:腰

探索者は前に進むことにした。足元に横たわるKPCを感じながら、暗闇の中で足を動かす。廊下の壁はひんやりとしているものの特に異常はなく、それはここがどこなのか判断する手掛かりがないのと同義だった。

おそらく数十歩は進んだろうか。おそるおそる視線を下げても、未だにKPCの体は「ある」。振り返れば離れた光源にKPCの足が照らされている。

<探索ガイド>
①床②壁③KPCの体

①床

こつり、と靴先に何かが当たる。手探りで拾い上げると小さなマッチ箱だった。中にマッチは4本。手元を確かめたいとき使えるだろう。

[開示情報]マッチの火は一箇所分の探索しかもたない。(例:探索ガイドの「①床」のみ)

・・・・・

※マッチをつける場合は以下を描写

手元の狭い範囲だけがオレンジの光に照らされる。横たわるKPCの体が見える。見覚えのある衣服を身に着け、仰向けに倒れている。今自分が見ているのは、ちょうど腰のあたりのようだった。先ほど見た足先から軽く50メートル。ここまでが「足」だったのだと、否が応でも理解する。
☆不可解な状態の体にSANc(0/1)

②壁

灯りがあった場所と同じならここも金属製の灰色の壁なのだろう。手探りで何かないか探っていると、小さな絵画のようなものがあることに気づいた。手に取ってみたが暗くて何が書いてあるかは見えない。

・・・・・

※マッチをつける/最初の蛍光灯の下まで戻って確認する場合は以下を描写

女の絵だった。描かれた女は真夜中の屋外に全裸で棒立ちのままこちらに微笑みかけている。顔の細部までは描きこまれていないが、白く浮かび上がるような肌から絶世の美女を表しているのだろうとわかる。

【目星】
絵の裏にタイトルと作者のサインが書かれていた。作者の名前は奇妙に歪んでいて読めない。タイトルは「梟」らしい。

[KP情報]梟(ふくろう)。欽定訳聖書ではリリスを「鳴き喚く梟」と表現している。

③KPCの体

暗闇にうっすらと見える輪郭から「まだ」横たわっていることがわかる。しゃがんで触ってみるとちょうど腰のあたりだとわかった。先ほど見た足先から軽く50メートル。ここまでが「足」だったのだと、否が応でも理解する。
☆不可解な状態の体にSANc(0/1)

[KP情報]すでにマッチをつけている場合は描写・SANc共に不要。

・・・・・

【目星】/KPCをまさぐる
KPCの腰の下に何かを見つける。手触りから考えるに大きな裁ちバサミのようだ。持ち手の部分に彫られた文字だけが青白く光っていた。

人の魂は陽の光よりも強く輝く

蛍光塗料で光っているわけではないようだが、どちらにせよその光は弱弱しく、あたりを照らすには心許ない。まだマッチの火のほうがマシなくらいだ。
≪入手≫裁ちバサミ

分岐

①後ろに進む→スタート位置までは何事もない。それより後ろはサブイベント:嘲笑
②前に進む→場所:胴

場所:胴

探索者は暗闇の中でなおも歩を進める。廊下はなんの変化もないし、あったとしてもこの暗闇ではわからないだろう。遠くの背後からは相変わらず女の笑い声がかすかに響いている。

<探索ガイド>
①壁②KPCの体

①壁

相変わらず手探りでしか調べられない。様々な方向に手を伸ばすと、指先が硬いものに触れる。形状からして電気のスイッチらしい。

※スイッチを入れる場合は以下

カチリとスイッチを押すと数十メートル先の蛍光灯が一つだけ光った。最初に見た様子と変わらない無機質な廊下と共に横たわるKPCが照らされ、ちょうどそこが顔なのだとわかる。首だけ起こしてこちらを見ている。髪の長さや目鼻のバランスからKPCのようだと思う。だが遠すぎてはっきりとはわからない。白色の灯りが目と鼻と口に影を落としている。こちらを見ている。長い長い体の終点、曖昧な顔、それがKPCである確証はどこにもない。胎の底から恐怖がせりあがってくると同時に蛍光灯がぶつりと切れる。
☆再び暗闇が戻る。SANc(1/1d2)

②KPCの体

これだけ歩いてもまだKPCは横たわっている。ようやくへそあたりまでは来たようだ。

【目星】
目を凝らすと体に不自然な凹凸があるように思えた。ただ引き延ばされたのではなく、少しずつズレたまま繋がっているような、蛇腹と階段の中間のような凹凸だった。

※マッチを点ける場合は以下を描写
明かりにかざすとやはり不自然な凹凸があるとわかる。それはここだけではなく、まだ続く胴のほうも、今まで見てきた腰のほうも同様のようだ。だが別の生き物の部位を無理につなげている痕跡はない。

分岐

①後ろに進む→スタート位置までは何事もない。それより後ろはサブイベント:嘲笑
②前に進む→場所:胸

場所:胸

どれほど歩いただろうか。振り返ると唯一明るかったスタート地点はもうだいぶ遠いところにある。未だに暗闇でなんの手掛かりもない。KPCの顔まであと少しだとは思うが、顔を見て解決の糸口を掴める確証はないままだ。

<探索ガイド>
①壁②KPCの体

①壁

かすかだが光が漏れている。どうやらスライド式のドアがあるようだ。鍵はかかっていない。

※ドアを開ける場合→場所:小部屋

②KPCの体

[KP情報]調べる前に「場所:小部屋」に入ってしまうと以後ここを調べる機会は失われる。

胴から胸にかけての部位のようだ。手を当てると呼吸で上下しているのがわかる。

【目星】
胸ポケットに何か入っている。紙のようだが、暗くてわからない。

・・・・・

※マッチを点ける/小部屋に入ってから読む場合は以下を描写

紙には焼き付けたような筆致でこう書かれている。

Me――――――You――Mine

【アイデア】
これはこの廊下で、Youは自分の現在地を示しているのではないかと思う。

分岐

①小部屋を調べる→場所:小部屋
②後ろに進む→スタート位置までは何事もない。それより後ろはサブイベント:嘲笑
③前に進む→イベント:女へ(描写適宜改変)

場所:小部屋

ドアの向こうは切れかけの蛍光灯で照らされた小部屋だった。そこは打ち捨てられた研究室のような、中世の書斎のような、非現実的な不可思議な内装していた。覚束ない光量がぼんやりと古びた机、汚れた壁、高い棚を浮かび上がらせている。

<探索ガイド>
①机②壁③棚

①机

引き出し付きの書き物机のようだ。埃などは被っていないが、頻繁に使われている形跡もない。机上には一本の黒いナイフが刺さっており、柄は蛇が巻き付いた意匠になっている。また、刃の部分に「魔女の刃」と彫られている。
≪入手≫黒いナイフ

・・・・・

【目星】/引き出しを開ける
引き出しには乱雑に何十枚もの写真が入っていた。どれもKPCの写真だったが、目の位置が三重になっていたり、口が下方にズレていたりして歪な相貌になっている。中にはどのような角度から撮ったのかわからないものもあり、ただの写真ではないような気味の悪さを感じる。
☆不気味な写真にSANc(0/1)

・・・・・

写真に【目星】
KPCがコートを着て夜道を歩いている写真に「I like it.」と殴り書きされている。KPCの後ろに広がる夜空をよく見ると無数の目が映っていた。

[KP情報]「気に入った」と書かれている。KPCの胸ポケットからメモを見つけている場合は同じ筆跡(リリス)だとわかる。

・・・・・

写真に【写真術】※知識として使用
失敗したパノラマ写真のような歪さを感じる。しかしパノラマで撮影したような幅広の写真は見当たらない。

②壁

壁の大部分が黒い粘着質な蜘蛛の糸のようなものに覆われている。棒か何かで取り払うことは不可能なようだ。

【目星】【アイデア】
この糸は何かを隠すように壁を覆っているように見える。

[KP情報]裁ちバサミや黒いナイフでも糸は取り払えない。マッチが1本以上残っている場合のみこの糸をすべて燃やせる。描写は以下。

マッチに火をつける。炎は綺麗に黒い糸だけを燃やし、そのまま消えた。汚らしい糸の下からは一枚の絵画が出てきた。絵の中心では男が光の玉を掲げており、その下で漆黒の髪をした女がのたうち回っている。額縁には小さく「魔女へ」と書かれていた。

③棚

埃を被った背の高い木製の棚だ。アンティーク調の高級品に見えるが、ところどころ表面に亀裂が走っている。

【図書館】/中を開けてよく探す
軋む扉を開けると中には無数の紙が入っていた。羊皮紙か、そうでなくとも何十年も前のような黄ばんだ紙ばかりだった。大半は読めもしなかったが一枚だけ探索者にも読めるものを見つける。

魔女を信じてはいけない。魔女を頼ってはいけない。魔女は攫った。木偶にかの魂を詰めて、おまえを見て嗤っている。

[KP情報]KPCの胸ポケットのメモか写真の殴り書きを見つけている場合、筆跡が異なることがわかる。これはリリスではなくニャルラトホテプが探索者に残したメモ。額縁にあった「魔女へ」とは筆跡が一致する。

探索後の処理

探索を終え、部屋を出る場合→イベント:女

イベント:女

小部屋の探索を終えて再び真っ暗な廊下に戻る。ふと今まで来た方向に顔を向けると、遠くに女の顔が見える。それは廊下を塞ぐほどの大きさだった。それは廊下いっぱいに広がっていた。目覚めたときに居た唯一点いていた蛍光灯。その下に巨大な女がいるのだ。女は、顔しか見えない。真っ黒い髪を床に垂らしながらこちらを見て笑っている。廊下に寝そべるような格好で、顔だけをこちらに向けている。蛍光灯の無機質な明かりに照らされたまま、女の赤い口が三日月型に歪む。

美しい女だった。探索者は息を呑む。女の眼球はほぼ漆黒の瞳で占められていて、白い光源が映りこんでいた。女の大きな腕が前に出される。腕が床に着くと同時に廊下が揺れる。巨大な女から悍ましい笑い声が響く。這いずってくる。この廊下を、たった数百メートルの距離を、女は進んでくる。また腕が前に出される。廊下が揺れる。
☆「夜の魔女」リリスを見た探索者はSANc(0/1d10)

—————————————–

※続けて以下を描写

このままではすぐに追いつかれる。KPCの顔がある方向に走るしかないだろう。廊下が揺れるたびに周りの蛍光灯が火花を散らし、今までの沈黙が嘘のように一瞬だけ明かりが点く。また消える。また点く。背中に女の気配を感じながら、未だ首だけを起こしているKPCのほうに走る。

強制【DEX*5】
成功→女の手がすぐそこまでやってきている。足元のKPCの体には皺が寄っていた。もつれないようにがむしゃらに足を動かしてなんとか走り続ける。
失敗→女の手がすぐ後ろで振り降ろされる。巨大な爪が背中を裂く。女の笑い声がこだまする。傷を確かめる時間は当然なく、血を滴らせながら走り続ける。(HP-1d3)

[KP情報]ロールの成否に関わらずここで死亡することはない。

—————————————–

※ここまで描写したら→イベント:魔女へ

イベント:魔女へ

ジジジと不快な音を立てながら蛍光灯が目の前の空間を照らす。そこにはKPCの顔があった。目も鼻も口も、僅かずつズレながら複数ついている。あの部屋で見た写真に似た不気味な顔だった。後ろから女の気配が迫る。あなたは足の力が抜けてその場に膝をつく。すぐ前に歪なKPCの顔が来る。よく見るとそれは、内側から微かな光を発しているようだった。

[開示情報]PLは最終行動宣言を行う。行動は1回のみ可能だが、技能ロールは必要ない。

エンド分岐

[KP情報]裁ちバサミの文字・小部屋の絵画とメモでエンドAに入る行動を判断できる。

※以下に分岐(切る部位は顔以外不可)

①「裁ちバサミ」でKPCの顔を切って中の光を出す→下記を描写後、エンドA:君の笑み

②「黒いナイフ」でKPCの顔を切って中の光を出す→下記を描写後、エンドB:君の顔

③それ以外の行動→エンドE:恍惚

—————————————–

※①「裁ちバサミ」でKPCの顔を切って中の光を出すか、②「黒いナイフ」でKPCの顔を切って中の光を出すの場合は以下を描写

KPCの―――否、KPCを模した何かの顔に刃を入れる。皮膚を裂く感触はあれど血が噴き出すこともなく、まさしくこれは木偶なのだろうとぼんやり思う。ようやく皮を開けば中に煌々と輝く光球が浮かんでいた。

その瞬間、全ての空気を震わせて笑い声が響く。生温かい息が背中を舐める。思わず振り返ると視界を覆いつくすように女の顔が迫っている。真っ赤な唇が開かれ、無数の牙が覗く。もはや考える猶予はない。探索者はKPCの中にあった光の玉を手に取って女の前にかざした。

廊下すべてを照らすようなその光に巨大な女は絶叫を上げる。その真っ白い肌が、赤い口が、小さな粒子となって溶け出す。鼓膜にこだまする叫び声の中、探索者は意識を手放した。

エンドA-B(D)分岐

①「裁ちバサミ」でKPCの顔を切って中の光を出した→エンドA:君の笑み
②「黒いナイフ」でKPCの顔を切って中の光を出した→エンドB:君の顔
③いずれかの行動を取ったが、道中でKPCを攻撃してHPを0にしている→エンドD:君の夜

エンドA:君の笑み

※条件:「裁ちバサミ」でKPCの顔を切って中の光を出した
※KPCの口調は適宜変更

探索者は自分の家で目を覚ます。慌てて周りを見回すが、正真正銘自分の家だ。その後、探索者は妙な廊下に呼ばれることもなく、穏やかな日々が帰ってきた。

KPCに会ったのは数日後だった。「やあ」と気のない声をかけられる。その顔には探索者が切り開いた通りの大きな傷がついていた。

「これか?さぁ…朝起きたらこうなっていて病院に行っても原因がわからなかったんだ」
「すごいだろう。まるで刃物で切られたみたいな傷だ。そんな記憶はないけどな」

気丈に振舞っているがKPCの表情は暗い。顔面に走る傷をときおり煩わしそうに手で隠している。探索者が何か言いかけたとき、ポケットから何かが落ちた。KPCがそれを拾う。あの廊下で見つけた裁ちバサミが、怪訝な表情を浮かべたKPCの手に握られている。

鋏は未だ微かに光っていたが、KPCに握られているうちに徐々にその光を失っていった。それと同時にKPCの顔から傷が消えていく。まるで上から絵具でも塗りつぶすかのように、大きな傷は綺麗になくなり、元通りの見慣れたKPCの顔に戻っていた。

「ずいぶん物騒なものを持っているんだな」

そんなことは露も気づかず、KPCは訝しがりながら探索者に鋏を差し出す。それはもはや何の変哲もない、ただの裁ちバサミであった。探索者は小さく笑みを浮かべて受け取った。

生還報酬

生還報酬(PCのみ)
生還 1d6
リリスを見た【クトゥルフ神話】+3%

※裁ちバサミも獲得できるが、既に魔力は失われている。

エンドB:君の顔

※条件:「黒いナイフ」でKPCの顔を切って中の光を出した
※KPCの口調は適宜変更

探索者は自分の家で目を覚ます。慌てて周りを見回すが、正真正銘自分の家だ。その後、探索者は妙な廊下に呼ばれることもなく、穏やかな日々が帰ってきた。

KPCに会ったのは数日後だった。「やあ」と気のない声をかけられる。その顔には探索者が切り開いた通りの大きな傷がついていた。

「これか?さぁ…朝起きたらこうなっていて病院に行っても原因がわからなかったんだ」
「すごいだろう。まるで刃物で切られたみたいな傷だ。そんな記憶はないけどな」

気丈に振舞っているがKPCの表情は暗い。顔面に走る傷をときおり煩わしそうに手で隠している。探索者が何か言いかけたとき、ポケットから何かが落ちた。KPCがそれを拾う。あの廊下で見つけた黒いナイフが、怪訝な表情を浮かべているKPCの手に握られている。

「ずいぶん物騒なものを持っているんだな」

相変わらず暗い目のまま、KPCは探索者にナイフを渡す。

「そういえば、黒い髪の女の夢を見るようになったよ。ちょうどこの傷ができてからだな」

KPCはぼんやりそう呟いた。

生還報酬

KPC:PCが切った通りの傷が顔面に残る(APP-2)

生還報酬(PCのみ)
生還 1d6
リリスを見た【クトゥルフ神話】+3%

エンドC:破顔

※条件:後ろに進み続ける

静寂と暗闇の中を進む。あとどれだけ行けば最奥なのか、それすらわからない。笑い声がどんどん近づいてくる。それが人ひとりの声にしては大きすぎると気づいたときには、もうその呼吸まで感じる距離に来ていた。

途端、頭上の蛍光灯が点く。暗闇が取り払われる。目の前に女の顔。大きな、廊下いっぱいまでみっしりと詰まっている女の顔。魔女の顔があった。
☆「夜の魔女」リリスを見た探索者はSANc(0/1d10)

巨大な女は血のように赤い唇を楽しそうに歪める。逃げる間もなく大木と見紛う白い腕に掴まれる。胴が軋む。地の底から湧き出るような笑い声が響く。魔女はその巨躯を以て、探索者をおもちゃのように両手で握りしめた。肋骨が折れ、内臓がせりあがってくる感覚に襲われる。

ごぽ、と口から胃が飛び出す。臓物と口との僅かな隙間を縫って血が噴き出る。探索者は目玉すら零して息絶えた。魔女の笑い声はしばらく止みそうにない。

—————————————–

PC:リリスに殺されロスト
KPC:リリスに魂を囚われロスト

エンドD:君の夜

※条件:最終行動前にKPCのHPをゼロにする

探索者は自分の家で目を覚ます。慌てて周りを見回すが、正真正銘自分の家だ。

KPCが死んだという報せが来たのはそれから数日後だった。自宅で一人、暴行を受けて死んでいたのだそうだ。

死体の様子をよくよく聞くと、あの廊下でやったことと似ているようだった。

生還報酬

PC:生還(生還報酬なし)
KPC:PCに殺されロスト

エンドE:恍惚

KPCのような「何か」を前に立ち尽くす。やるべきことがわからないまま女の様子を見ようと後ろを振り返ったとき、ちょうど蛍光灯が切れて一瞬暗闇が戻る。そしてまた明かり戻ると女の巨大な顔が目の前にあった。

灯りが切れる。灯りが点く。切れる。点く。悪夢のような黒と白の繰り返しの中で女の口が大きく開くのが見えた。悲鳴のような笑い声と共に鋭い歯が視界を覆う。灯りが切れる。闇が降りる。次灯りが点いたときには、女と血だまりしかなかった。

—————————————–

PC:リリスに殺されロスト
KPC:リリスに魂を囚われロスト

余談・宣伝

だいたい30~40分で終わるシナリオなので、「うちよそタイマンしてたのに結構早く終わっちゃった!もう一本何か回したいなぁ~」っていうときにちょうどいいと思います。

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この度はシナリオのご購読ありがとうございました。楽しんでいただけたら幸いです。

21.04.16 ヴォンボ(@deitoro)

本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION

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