CoCシナリオ『仰望すれども銀』

CoCシナリオ『仰望すれども銀』は2021年9月にリリースした無料シナリオです。最新シナリオではないのでご注意ください。

CoCシナリオ『仰望すれども銀』

探索者はとある理由から博物館へ行く。

◆概要(PL開示情報)

PL人数:1PL推奨
所要時間:1h~3h
探索者:新規・継続不問。

KP難易度:易
謎解き難易度:易
戦闘難易度:なし
戦闘:なし
ロスト率:低

推奨技能:【目星】【値切り】

形式:博物館クローズド・ルルブ第6版準拠(7版改変可)
ジャンル:歴史スペクタクル
キーワード:歴史、探索、謎解き

備考
・感想、リプレイ動画など→歓迎!ネタバレ配慮&シナリオ名の明記をお願いします。
・シナリオ改変→OK。根本的な世界観の改変以外ならご自由に。
・改変シナリオの配布→不可。

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※1PLを想定した描写になっています。
※当シナリオでは【値切り】に対し「OKしてもらえそうなギリギリの値段まで攻められる=鑑定・値踏みの知識がある」という解釈をしています。


BOOTHでも配布中!
中文版・pdf・txt・グーグルドキュメント版の本文や、その他画像素材が欲しい方は下記よりダウンロードしてください↓

【日本語/中文】CoCシナリオ『仰望すれども銀』 - ゴムヤボシ - BOOTH
☆☆プチっとできる短時間ソロシ!☆☆ ☆☆初心者のKP・PL練習に!☆☆ ☆☆推理・謎解きの練習に!☆☆ 『仰望すれども銀』 探索者はとある理由から博物館へ行く。 ◆概要(PL開示情報) PL人数:1PL推奨 所要時間:1h~3h 探索者:新規・継続不問。 KP難易度:易 謎解き難易度:易 戦闘難易度:なし 戦闘:なし...

※以下はKPのみがお読みください

※トレーラー画像直後の目次がネタバレなのでお気をつけください

当画像はセッション用にDLを許可します

KP準備

本シナリオに特別な準備は必要ありません。

グーグルドキュメント版がご入り用の方はBOOTHよりダウンロードしてください。

シナリオの見方

目次があるので適宜飛んでください。
KPはNPC解説→ルート解説→背景→導入…の順で読んだほうが理解しやすいかも。

●凡例
<探索ガイド>…シナリオ上用意されている探索場所。
[KP情報]あるいは※…描写不要・KPのみが知る情報。※橙色で記載
[開示情報]…なんらかの行動後、PLに開示していい情報。
【(技能名)】…該当技能を振ったときに出る情報。マイナス補正は目安であり、KPが適宜調整してよい。※朱色で記載
☆…SANチェックポイント
“”…資料
→〇〇へ…次のイベントもしくは移動先の場所
◆…戦闘相手
◎フラグ…回収されたフラグ
[]付きの群青で記載された文字…NPCによって適宜描写を変更する部分

背景

先史時代、ダオロスはアナトリアを始めとする様々な地域に出没していた。ダオロスの傍に居た人間は全員かの神に似た無機物ーーー多くは美しい貴金属の財宝に変化してしまい、さらにそのせいでダオロスに糧として吸収されるようになった。

ヘレニズム期にもダオロスが現れ、アナトリアにあるとある街が一夜にして全員「変わって」しまった。大部分がダオロスに吸収されたが、遺されたものはそのまま地中に埋まった。ダオロスはその後も気まぐれに出現し、残った財宝たちを吸収したり吐き出したりして移動した。

しかし現代、大規模な発掘調査でヘレニズム期の犠牲者たちーーーすなわち数々の財宝が発見され、彼らは海外へ散り散りになる。

ダオロスの影響を受けた奇妙な人のなれ果ては、本能的に新たな糧をダオロスの元へ献上するため現代人を誘導する。人のなれ果てたちはダオロスの奉仕者と人類寄りの2種類がいるが、個々の意志はなく、曖昧な大きな二つの残留思念があるだけである。序盤のリュトンや浅鉢は前者で、地下で見つかる財宝たちは後者に該当する。

なおダオロスはこの一連の動きをまったく関知していないし、興味もない。エンドCルートの探索者は、発狂によって勝手にダオロスに選ばれたように錯覚しているだけである。

導入

※以下、シナリオ本編

ある夜、探索者は夢を見た。
自分の体が沼に沈んでいく夢だった。腕をあげようとしても、身を捩ろうとしても動けず、ゆっくりずぶずぶと沈んでいく。探索者の周囲はぐるっと一周なめらかな土手のようなものがあり、もし腕を上げられたとしても到底掴めそうな場所はない。だから探索者は直立のままゆっくり沈むしかなかった。

だが不思議と恐怖はなかった。このまま水底に横たわって、自分は静かに眠るのだろうとさえ思った。そうして胸元まで水に沈んだとき、探索者ははたと、自分の体がもうないことに気づく。今水面から出ている胸から上以外、ない。そこで冷気が這いよるように、じわじわと理解する。自分は沼に取られて動けなかったのではなく、「ない」から動けなかったのだと。途端に恐怖と焦燥がこみ上げる。ないはずの肺が圧迫される。助けを呼ぼうと声を出す。誰も来ない。自分は一生、このままだ。

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探索者は飛び起きる。悪夢で済ますには嫌に現実味を帯びたものだった。
☆SANc(0/1)

時刻は朝。妙な夢を見た以外には何の変哲もない一日の始まりだ。外は快晴だった。

【目星】/テレビを付ける
朗らかな顔でキャスターが朝のニュースを読み上げている。
「2年前に調査が終わったアナトリア半島の出土品が、いよいよ世界各地でお披露目されることになりました。今回の発掘調査では主にヘレニズム文化の精巧な銀食器などが出土しており、日本でも調査団および各博物館、公的機関の協力により国内提携博物館での展示が始まっています」

※上記情報が出ても出ていなくても以下を描写
※ある程度朝のルーティンのRPをしてからでもよい

ふいにゴンッと頭になにかぶつかり床に落ちる。痛みに頭をさすりながら転がったものを拾い上げると、重たい金属製の山羊ーーーのような置き物だった。ような、というのは山羊の下半身が上向きのラッパのようになっていて、とうてい普通の山羊の造形ではなかったからだ。天井を見ても物が落ちてきそうな場所はなく、そもそもこんな奇妙な置き物は所持していない。

不審がって今一度それに視線を戻す。古びた銀色の山羊が突如こちらを向く。硬い金属であるにも関わらず、ぬるりと首をもたげ、探索者の方へ向いたのだ。

「ソルディナ記念館へ行け」

山羊は口を動かし確かにそう言った。そして元の方向へ向き直ると、一切微動だにしない、ただの銀の置き物へと戻った。
☆SANc(1/1d2)

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【知識】【歴史】【人類学】
山羊の口には細い注ぎ口があり、後ろのラッパ部分から中で繋がっているようだった。この特徴的な形状は「リュトン」だろうと思う。リュトンは古代文明の儀式用の盃および水差しであり、ヘレニズム期にはギリシャ~小アジアにかけて大量に生産されていた。

・・・・・

【目星】/自分の体を見る/腕を前に伸ばすしぐさ
ふと、自分の腕に[下記計算式を元に出した数値]と書かれていることに気づく。擦っても洗っても取れそうにない。刻印されているような見た目になっている。

[KP情報]探索者の体重をgに換算し、4で割った数値が刻印されている。単位はドラクマ。1ドラクマ=約4g。体重がわからない場合は平均体重を割ってそれっぽい数値を入れるだけでOK。
例えば175cmの40代男性の平均体重は74.4kgなので、74400÷4=18600ドラクマとなる。ただし、数値しか書かれてないので探索者にはなんのことだかわからない。

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[KP情報]山羊のリュトンは持っていこうが捨てようが関係ない。警察に預けてもよい。ダオロスのいるアナトリア半島地下からワープしてきたものなので、未発見の出土品である。

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①外に出る→イベント:うつつの底
②調べものをする→場所:インターネット

場所:インターネット

探索者は適切なキーワードで検索するか、技能を振ることでネット上から情報を拾うことができる。探索者は電波が届く限り任意のタイミングでこの調査が可能。

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①「アナトリア半島」/【ナビゲート】【歴史】
アナトリア半島は西アジアに位置する半島で、ちょうどヨーロッパとアジアを繋ぐ形になっている。先史時代から西洋文化と東洋文化が習合する地であったため、歴史的にも重要な地域である。「小アジア」とも呼ばれる。

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②「ソルディナ記念館」/【図書館】【コンピューター】
「ソルディナ記念館」はK県蛇令(だれい)市にある法人経営の博物館である。蛇令市と縁のある資産家にしてコレクターのジョシュ・ソルディナが創始者で、現在は孫のケン・ソルディナが運営しているようだ。ジョシュ・ソルディナは生涯をかけて様々な文化的遺物を収集しており、記念館ではそのコレクション展示や、他団体とのコラボ企画展などを行っている。現在は「アナトリア~文明のるつぼ~」展が開かれているようだ。
ソルディナ記念館へはここから2時間ほどで行ける。

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③「山羊 ラッパ」「山羊 銀 変わった置き物」など
山羊の口には細い注ぎ口があり、後ろのラッパ部分から中で繋がっているようだった。この特徴的な形状は「リュトン」だとわかる。リュトンは古代文明の儀式用の盃および水差しであり、ヘレニズム期にはギリシャ~小アジアにかけて大量に生産されていた。

※【知識】【歴史】【人類学】成功時と同じ情報

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④「ヘレニズム とは」「ヘレニズム 特徴」など
ヘレニズム文化とはギリシア文化(美術)に影響を受けた古代オリエント文化全般を指す。特に小アジアでは美しい写実的な装飾が施されたリュトンや食器などがいくつも出土している。アレクサンドロス3世の治世からプトレマイオス朝エジプト王国の滅亡まで栄えていた文化である。

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①まだ導入しか終えておらず、初めて外に出る→イベント:うつつの底
②記念館の探索に戻る→探索:ソルディナ記念館

イベント:うつつの底

※探索者がソルディナ記念館に行く気が合ってもなくても外に出てしばらく移動すると発生

ふいに靴底が滑って転びかける。なんとか軸足を踏ん張って体勢を直すと、周囲を歩く人々の頭が、少し高い位置にある。まるで頭一つ分高くなったようだ。探索者は違和感を覚えながら目線を落とす。その足はしっかりと地面を踏みしめているが、その踏みしめているはずのコンクリートが妙ななめらかさを以て歪んでいた。

周囲が、高くなったわけではない。探索者の半径1mほどの地面が浅く落ちくぼんでいるのだ。ぐるりと一周、緩やかな曲線を描いて高さ30cm程度、小さい土手のようなものができている。明らかにおかしい状況であるに関わらず、周囲の人間たちは目にも留めず歩いていく。

探索者は土手から上がろうと一歩踏み出す。足がやけに重かった。左足が、動かない。なめらかな地面に少しずつ「沈んで」いっている。短い悲鳴をあげそうになりながら全力で左足を持ち上げる。急にガクンと身が軽くなった。探索者の左足がよろよろと前に出る。目線の高さが戻っている。奇妙な浅いくぼみも、なめらかな土手も、どこにもない。
☆異常な体験にSANc(1/1d3)

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①ソルディナ記念館へ向かう→探索:ソルディナ記念館

※記念館に向かわないと浅鉢になって死ぬだけなので、行かない探索者には似たイベント起こしてSANc減少値を増やしていき、上手く誘導することが望ましい。どうしても行かないなら死んでもらうしかない(このケースのエンド描写はない)。

探索:ソルディナ記念館

電車に乗ってK県蛇令市まで行き、バスに乗って海を眺めながら揺られること20分ほど。それなりに活気のある街の真ん中で降りると、すぐに広めの駐車場が見える。

ソルディナ記念館はパステルカラーの小洒落た建物だった。立派なジョシュ・ソルディナの銅像の隣には「企画展開催中!」というスーパーのようなのぼりが立っており、まさしく地元の文化施設の趣がある。

入口には今回の企画展『アナトリア~文明のるつぼ~』の看板が立っていた。アナトリア半島で出土した物の特別展示がされているらしい。

中に入ると、企画展用の特別内装になっており、すぐ目の前にまえがきのプレートが置いてあった。

企画展『アナトリア~文明のるつぼ~』
5年前にアナトリア半島で突如発見された財宝類は、その昔、ヘレニズム期に土地を治めていた地元豪族の埋葬品だと見られています。約3年の精査と鑑定を経て、一般公開が可能になった貴重な出土品の数々ーーーその一部を、当記念館は特別に展示できる運びとなりました。ご協力いただいた各研究機関・調査団のみなさまには心よりお礼申し上げます。

当記念館では、今回のヘレニズム期の出土品と併せて、故ジョシュ・ソルディナのコレクションも公開しています。彼のコレクションにはメソポタミアやスキタイなど、ヘレニズムとは異なる出土品が多くあります。ぜひ今回の目玉であるアナトリアの遺宝と比較してご鑑賞ください。

館長 ケン・ソルディナ

企画展は第一展示室と第二展示室を丸々使って行われているらしい。どちらから見ても問題ないようだ。

<探索ガイド>
①第一展示室②第二展示室

[KP情報]シナリオ内の各遺物の情報は探索・推理の邪魔にならないよう大幅に簡略化して書かれている(現実ではもちろん例外も存在する)。このことは適宜PL伝えてよい。また、参考文献についてはシナリオ末尾に記載している。

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①第一展示室へ行く→場所:第一展示室
②第二展示室へ行く→場所:第二展示室

場所:第一展示室

ここはヘレニズム期以外の出土品ーーージョシュ・ソルディナのコレクションが展示されているようだ。とはいえ、壁際の展示台のほか、ガラスケースがあちこちに設置されており、個人蔵とは思えないほどの量だ。目玉であるアナトリアの出土品がないからか、あまり人は多くない。

<探索ガイド>
①壁際の展示台②ガラスケース

①壁際の展示台

先史時代の出土品を中心に展示物の軽い説明が成されている。素人でも目を引くのは、スキタイ人の精巧な黄金の装飾品や造形が特徴的なマヤ文明、メソポタミア文明の出土品などだろう。

※以下の情報は重要であるため、技能を外しても積極的に出すことが望ましい。

・・・・・

【目星】/スキタイの展示品を見る
美しい金の輪が展示されている。細長く伸ばされた純金がばねのようにとぐろを巻いており、先端は精巧な犬の彫刻が施されていた。傍に説明文がある。

「スキタイのトルク」
これは前4世紀ごろにスキタイ人が付けていた首飾り(トルク)です。コイル状の繊細な装飾と、装着のための蝶番がついた実用性が最大の特徴です。基本的にスキタイのトルクは3重構造(3回巻いた形)になっており、犬やヒョウ、ライオンなど肉食動物の装飾が施されるパターンが多く見られます。

・・・・・

【目星】/マヤの展示品を見る
美しい緑色の仮面が展示されている。土台となる木製の仮面に貝殻や薄い鉱石を貼り付けたもののようだ。鼻が大きく黒目がちな仮面の表情は、西洋美術とはまた一線を画している。傍に説明文がある。

「マヤの仮面」
温暖湿潤気候のマヤ地域は、木や毛織物などの長期保存に向かないため有機物の遺物はほとんど残っていません。しかしこの木の仮面は樹脂加工によってほとんど完璧な状態で発見されました。マヤ人は彼らにとって大事な植物であるトウモロコシを象徴する「翡翠(緑色の鉱物)」を特に好み、多くの装飾に利用しました。また、貝殻と翡翠を貼り付けるモザイク装飾も好んだようです。

・・・・・

【目星】/メソポタミアの展示を見る
牡牛の装飾が施されている黄金の器が展示されている。器全体には赤や青の美しい石がはめ込まれており、鉢の内側の底には鱗模様が描かれている。傍に説明文がある。

「メソポタミアの器」
メソポタミアでは豊かさの象徴として牡牛の装飾が好まれました。他にも草木や鳥など、普段彼らが目にしていた風景そのものが意匠に落とし込まれています。特にこの器にも見られる鱗のような模様は、日本では青海波(せいがいは)文様という海の象徴ですが、メソポタミア人にとっては山の象徴だったようです。純金・純銀に加え、ラピスラズリやカーネリアンなど宝石(色石)が使われているのも特徴的ですね。

②ガラスケース

ガラスケースでは同一のテーマを持った展示品が並んでいる。

【目星】/展示を全部見る
様々な作風の蛇の装飾品が飾られている。傍に説明文がある。

ヘビを象った装飾品は多くの古代文明の下で生産されました。ヘビの毒の治療法がない時代に生きる彼らは、ヘビを「強力な力の象徴」として扱っていたようです。ヘビの「強力な力」は、富や権力の象徴より「破魔」の意味合いが強く、護符やお守りに使われていた痕跡が残っています。

分岐

①第二展示室へ行く→場所:第二展示室
②どちらの展示室も調べ終わった→イベント:特別展示

場所:第二展示室

それなりの人数の地元民が興味深げに展示品を見ている。説明のプレートや順路の案内板も凝っており、ここがこの企画展のメインであろうことは一目瞭然だった。

入口のすぐ横にアナトリア半島の写真が載った大きなパネルがある。

アナトリア半島の村落でヘレニズム期の宝飾品が大量に発見された際、世界中の研究者が首をかしげました。と、いうのも、発見された遺宝は明らかに煌びやかな埋葬品であるにも関わらず、棺や祭壇の類が一切見当たらなかったからです。

調査が進み、出土品はやはり各地で見つかっているものと同様、豪族の遺体と共に収められた埋葬品と酷似していることがわかりました。しかし同時に、見つかったこれらの財宝は「埋めた形跡がない」ことも判明しました。つまり、無造作にばらまかれた大量の財宝が誰の手にも振れずに長い時間を経て土に埋もれたーーーというような状況が示唆されてしまったのです。

このような前代未聞の調査結果には、未だ侃々諤々の議論が成されています。もはや重要なのは出土品そのものよりその出土状況になり、既に追加で何陣もの調査団がアナトリアへ向かう事態となっています。

21世紀の考古学を以てしても謎めくアナトリアの新たな財宝たち。みなさんもぜひその目でお確かめください。

<探索ガイド>
①正面展示②ほかの展示

①正面展示

ガイドポールで囲まれた大きなガラスケースに赤い布がかけられている。中は見れないようだ。

うろうろしていると女性スタッフがにこやかに近づいてきて「こちらの特別展示品『浅鉢』はあと30分ほどで公開となります。それまでは他の展示をご覧ください」と案内してくれた。

[KP情報]ガイドポール…接近禁止のためのおしゃれなポールと紐のやつ。

②ほかの展示

数々の展示品と共にヘレニズム文化の特色が説明されている。

ヘレニズムとはギリシア文化と古代オリエント(東方)文化が混ざりあった文化を指します。アレクサンドロス3世の大遠征によってアナトリアをはじめとする西アジアにギリシア美術がもたらされ、結果、その影響を色濃く受けながらもアジア的な繊細さも併せ持つ新しい文化ーーーヘレニズムが生まれました。

ヘレニズム期の出土品の特徴はなんと言っても写実的な装飾でしょう。金や銀を薄く伸ばし、毛の一本一本まで再現している装飾品・儀式装具が多数見受けられます。

さらに、経済的な流通の一助として、ほとんどの細工品に重量が刻印されているのも特徴でしょう。単位は年代によって異なりますが、ドラクマであることが多いようです(1ドラクマ=約4g)。

・・・・・

展示品はどれも金銀でできた器やリュトン、ネックレスだった。大きな器だと、内側の底にギリシア神話の英雄の全身レリーフがあったり、精巧な山羊の彫り物がされていたりと、内部まで凝った装飾があるのだとわかる。

【値切り】/展示品をじっくり見る
展示されている装飾品はどれも純金・純銀製だとわかる。銀の器に指し色で金が使われているものもある。どれも緑青が浮いていないため、少なくとも鋼などでかさまししているようには見えない。
そうなると、貴金属に対しここまで精巧な浮き彫りができる当時の細工技術も驚嘆に値するだろう。レリーフ(浮き彫り)されている鹿・馬・山羊・人間などは、どれも生きているかのように瑞々しい。

※当シナリオでは【値切り】に対し「OKしてもらえそうなギリギリの値段まで攻められる=鑑定・値踏みの知識がある」という解釈をしている。

分岐

①第一展示室へ行く→場所:第一展示室
②どちらの展示室も調べ終わった→イベント:特別展示

イベント:特別展示

落ち着いた女性の声で館内放送が響き渡る。

「ただいまより、アナトリア出土品の一つ『浅鉢』が公開になります。こちらは現地研究機関の協力のもと、特別に当館で期間限定での公開が実現いたしました展示品でございます。実物の展示は数少ない機会となりますので、みなさまぜひ第二展示室正面展示にお越しください」

それを聞いて人の流れがぼちぼち第二展示室に向かう。どうやら『浅鉢』というのがこの企画展で一番貴重なもののようだ。

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布がかけられたひときわ大きなガラスケースに人々が集まる。探索者は運よく前のほうに陣取ることができ、目の前でスタッフが布を引いた。

『浅鉢』が露になる。

土台に立てかけられ、柔らかな照明を刺すように反射している。銀の平たい、文字通り浅い鉢のような形をした器だった。繊細な黄金の網模様で縁どられ、銀と金のコントラストは数千年前の遺物とは思えないほど美しかった。

しかし、この器の、最も目を引く箇所はそこではない。この『浅鉢』の内側の底には、男性の上半身のレリーフが施されているのだ。男はいやに立体的で、髭をたたえた顔は斜め上を向き、いかにもギリシアらしいキトンをつけた左肩をよじるかのように前に出している。ここにワインでも注ごうものなら、血の池に沈みゆくのをどうにか抜け出そうとしているようにさえ見えるだろう。探索者から見たら、それはただの浅い鉢だ。だが、なぜか異様な既視感と恐怖が背筋に這い上った。
☆SANc(0/1)

『浅鉢』のリアルで躍動感のある意匠は、その場にいる多くの来場者の息を飲ませた。ときおり感嘆が漏れる展示室の中、女性スタッフが落ち着いた声で解説を始める。

「こちらのセンセーショナルな浅鉢ですが、実はそこまで珍しい意匠ではありません。多くは海外での公開になっていますが、このように沈んでいくーーーもしくは抜け出そうとしてるかのような立体的なレリーフを持つ器は多く発見されています。というのも、我々がそう見えるだけで、このレリーフは権力者の肖像に過ぎないからです。男性をよくご覧ください。金色のヘアバンドをしていますよね?これが統治者・権力者を表すシンボルなのです」

「また、男性の肩口に注目していただくと、短い銘が彫られているのがわかります。これはパルティア語で179と書かれており、単位はドラクマです。つまり、『この器の重量は179ドラクマ』というタグ表示みたいなものですね。だから研究者たちはこのようなちょっと不思議な意匠の器も、当時は普通に流通していたのではないかと考えています。ただーーー」

そこで、カランと音が鳴る。

女性スタッフが立っていたところに一枚の器が落ちている。彼女の姿はない。その器は銀でできているようだった。誰かが「え?」と声をあげた。その瞬間、背後で耳をつんざくような金属音が何重にも響き、すぐに静寂が訪れた。

探索者はおそるおそる後ろを向く。誰もない代わりに、底に人間のレリーフが施された、美しい銀の器が何十枚も落ちている。
☆SANc(1/1d4)

・・・・・

バクバクと鼓動を打つ心臓を感じながら一歩よろめいた。その拍子にガイドポールが倒れる。音一つしない展示室。静まり返った館内。探索者は上を向く。背にしたガラスケースに、浅鉢が一つ。男と目が合う。

虚空を見上げていたはずの浅鉢の男が、こちらを見ている。

「我らの神の下へ来い」

たしかに、そう言った。

途端に探索者はバランスを崩す。視線が下がる。床が栓を抜かれた水のように落ちくぼみ、探索者ごと落下していく。大量の美しい浅鉢と共に、探索者は落ちていくーーー。

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※ここまで描写したら→場所:地下

場所:地下

※アナトリア半島のどこかの地下である。土や苔を調べるなら日本国内ではないと確信できる。
※後ろ側に進もうとしても財宝の山で塞がれてしまっている。

ガラガラと音を立てて探索者は見知らぬ空間に落ちる。土臭さが鼻孔をくすぐる。信じがたいことだがーーーどこかの地下のようだった。探索者は薄暗い中立ち上がる。上を見ても厚い土しかなく、戻る術はなさそうだ。遠くまで続く奥はなにがあるかわからない。

足が銀の器を踏む。探索者の周りは、夥しい量の財宝で埋め尽くされていた。銀の浅鉢、山羊のリュトン、金の水差し…あらゆる古代の宝物が散乱し、あるいは壁に埋もれ、あるいは天井から突き出し、まるで天然鉱物かのように地下と一体となっていた。

美しい器にはどれも精巧なレリーフが施されている。あの『浅鉢』の男のように。

<探索ガイド>
①財宝類②壁際

①財宝類

ほとんどがヘレニズム期の財宝のようだが、中にはそれよりも古い、あるいは新しい時代の遺物も混じっている。ただし不自然な形で埋まっていたり、山積みになっているのはやはりヘレニズム期のものばかりだ。元々雑多な時代の遺物がここに溜まっており、その上から当該期の財宝が集められたような印象さえ受ける。

「あの日神が通った」

ふと声がする。足を止める。壁に半分埋まった銀の浅鉢が目に入る。底には今にも這い出ようとしそうな若い男のレリーフがある。その男はじっと探索者を見て口を動かした。

「我らは変えられた」

そう告げると、虚空を見上げ、ぬるりと無機質なレリーフへと戻る。

「ここには街があった」

また声がする。リュトンの馬がこちらを見ている。馬が戻ると、今度は横の少女のレリーフが声を発する。

「瞬きのあいだに我らは居なくなった」

また戻る。この空間のいたるところから、財宝たちが声を上げる。一言だけ、囁くように、しかし、確実に、探索者を見つめては銀に、あるいは金に戻る。

「神は永らく穏やかだった」
「だが我らは発見された」
「多くの我らが連れ去られた」
「神に怒りはない」
「ただ」
「不足したものは補わなければならない」

探索者が歩くたび、ヘレニズムの財宝は囁き続ける。無数の遺されたものたちの声があたりに充満する。
☆SANc(0/1)

※財宝たちと意思疎通はできない。

②壁際

土と岩の壁の近くにはひときわうず高く積まれた遺物の山があった。あらゆる時代の財宝がそこにあった。探索者が近づくと、頭にコツンと何かが落ちた。手のひらに乗る程度の、小さな銀製のヘビだった。このヘビが動くことはなかったが、ほのかに青く光っており、持っていると不思議な力を感じた。

そのとき、山の中の財宝たちがーーー正確には財宝一つ一つに刻まれた精巧なレリーフたちが、有機的な動きで探索者を見つめる。彼らは一言ずつ囁くように言葉を紡ぎ始めた。

「護符を持て」
「神が待っている」
「持たざる者は神の糧になる」

少女も、学者も、兵士も、山羊も、鳥も、すべてのレリーフは一言のみを紡いで元の無機物に戻ってしまう。

「だが知られるな」
「護符は我らのうちに隠せ」
「見極めろ」

レリーフたちはそこまで言って一斉に沈黙する。もはや何をしようと口を開くことはなかった。しかしその代わりとでも言うように、財宝の山がガラガラと崩れ、探索者の足元に5つの器が転がった。

金の盃がふたつ、碧玉の盃がひとつ、銀の盃がふたつ。手に取ってよく見れそうだ。

分岐

①盃をよく調べる場合→場所:財宝の山
②なにも調べず置くへ行く場合→イベント:深淵のメダリオン

[KP情報]②はロスト直行なのでKPはよく考えるようPLに促すこと。

場所:財宝の山

探索者の足元にある盃は5つ。どれも銀のヘビががすっぽり隠れるほどの大きさだ。

ざっと見ると「男のレリーフがある金の盃」「山羊のレリーフがある金の盃」「翡翠色の盃」「牛のレリーフがある銀の盃」「男のレリーフがある銀の盃」だとわかる。

<探索ガイド>
①男のレリーフがある金の盃②山羊のレリーフがある金の盃③翡翠色の盃④牛のレリーフがある銀の盃⑤男のレリーフがある銀の盃

[KP情報]PLは記念館で得た情報をもとに鑑定し、ヘレニズム期の盃を見つけなければならない。「護符は我らのうちに隠せ」=ヘレニズム期の盃に隠せ、である。なお、一応値切り情報なしでも正解にたどり着けるようにはなっているが、PLの困り具合に合わせて代替技能を受け付ける・値切りに補正を加えるなど調整してよい。

①男のレリーフがある金の盃

両脇に取っ手が付いた金の盃で、底の一部分だけが銀製のようだ。銀の部分には首に三本の横筋がついた槍を持った男のレリーフが施されている。

【値切り】
純金・純銀が使われているとわかる。男の首にある三本の筋もわざわざ黄金で鍍金(ときん/薄く上からかぶせること)して描いているようだ。

[KP情報]スキタイの盃。不正解。

②山羊のレリーフがある金の盃

一面黄金の豪奢な盃だ。底には大きな山羊が彫られており、取っ手部分に魚の意匠が施されている。また、古代文字なので読めないが何か刻印されている。

【値切り】
純金であるとわかる。古代文字は記念館で見たものと似ているためパルティア語ではないかと思われるが、読めない。

[KP情報]ヘレニズム期の盃。この盃にヘビ(護符)を隠して持っていかなければならない。

③翡翠色の盃

正真正銘翡翠を削られて作られた盃のようだ。表面にモザイク画のような綺麗な装飾がされている。元が鉱物だからか、持ち手も角ばっているが、全体が研磨されているため美しい。

【値切り】
装飾に使われている綺麗な素材は貝殻だとわかる。

[KP情報]マヤの盃。不正解。

④牛のレリーフがある銀の盃

銀で出来た素体に赤や青の美しい石がはめ込まれている。よく見ると内側には鱗のような模様がついている。

【値切り】
全て純銀で、石は赤がカーネリアン、青がラピスラズリだとわかる。

[KP情報]メソポタミアの盃。不正解。

⑤男のレリーフがある銀の盃

精巧な男のレリーフがついた銀の盃だ。形状が違うだけで記念館で見た浅鉢と雰囲気が似ている。手に持って調べると緑っぽい汚れが付いた。

【値切り】
緑っぽい汚れは緑青だとわかる。

[KP情報]ヘレニズム期の盃を模した粗悪品。緑青は鋼や銅に付く。不正解。

すべて調べ終わったら開示

[開示情報]盃を持って奥へ進む場合、どの盃をどのように持っていくか宣言すること。この宣言は実質最終行動宣言になりうるため注意。

分岐

いずれの盃を持っていくとしても奥へ進むなら→イベント:深淵のメダリオン

イベント:深淵のメダリオン

※「山羊のレリーフがある金の盃」に「銀のヘビ」を入れて向かうという宣言がない場合ロスト確定イベントである。

探索者が歩くたび、カラカラと金属が転がる音がする。どれほど歩いていただろうか、ぼんやりとした暗さを保っていた地下道に、うっすらと光が差してくる。少し先の方から光が漏れているらしい。

もはや戻ったところでどうしようもない。探索者は歩みを進めた。軽く狭まった通路のあと、突如視界が開ける。およそ地下空間と思えない広さとまばゆさの丸い空洞ーーーその一面に、おびただしい量の金銀が光っていた。

それは嵐のようだった。無数に突き刺さる金と銀の器が針山めいた光景を成し、その上を同じく煌びやかな財宝が飛び交っている。どれもこれも毛の一本まで表現されたレリーフと冬のような銀。あるいは金が夏の河のように輝いていて、遥か昔の遺宝たちが夢幻の黄金郷を形作っていた。

しかし、その中央。

この黄金郷に浮く、巨大な塊。金でも銀でも銅でも鋼でも鉄でも錫でもない、未知の金属。

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※以下の2パターンに分岐

①銀のヘビを持ってきていない(盃の正誤は不問)
それは先史の狭間に取り遺された財宝たちを取り込み、吐き出し、収縮させ、膨張させ、同化し、分化し、ただそこに在った。探索者は無意識にそれの隙間に入っていく一枚の浅鉢を見た。探索者は無意識にそれの隙間から吐き出される一本のリュトンを見た。探索者は見た。それの動きを。水差しを。それの鋭角を。平皿を。それの長辺を。しかし絶対的に脳が理解しえない。それは無数の金属の塊であるにも関わらず、その存在を脳が拒否する。
☆ヴェールをはぎ取るもの、ダオロスを見た探索者はSANc(1d10/1d100)

[KP情報]ここでSAN0になった場合→エンドC:白痴なる銀

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②銀のヘビを持ってきている(盃の正誤は不問)
それは先史の狭間に取り遺された財宝たちを取り込み、吐き出し、収縮させ、膨張させ、同化し、分化し、ただそこに在った。探索者は無意識にそれの隙間に入っていく一枚の浅鉢を見た。探索者は無意識にそれの隙間から吐き出される一本のリュトンを見た。探索者は見た。それの動きを。水差しを。それの鋭角を。平皿を。それの長辺を。しかし絶対的に脳が理解しえない。それは無数の金属の塊であるにも関わらず、その存在を脳が拒否する。

だがその瞬間、探索者からまばゆい青い光が発せられる。かの存在に触れかけた魂を、光が静かに鎮めていく。探索者は強大な神を目の前にしてなんとか、自分を保とうとした。
☆ヴェールをはぎ取るもの、ダオロスを見た探索者はSANc(1d5/1d50)

[KP情報]デフォルトは1d5/1d50だが、KPは失敗時の減少値を[10~50]の間で自由に調整してよい。ギリギリ0にならない程度に設定するのが理想である。

分岐

①「山羊のレリーフがある金の盃」に「銀のヘビ」を入れて持ってきている→エンドA:久遠未だ遥か

②それ以外の盃に「銀のヘビ」を入れて持ってきている→エンドB:仰望すれども渺

③ダオロスのSANcでSANが0になってしまった→エンドC:白痴なる銀

エンドA:久遠未だ遥か

金と銀の嵐が探索者の体を押す。よろめきながら否応なくあの恐ろしい神へと体が近づいてしまう。そのたびにず、ず、とゆるやかに地面が落ちくぼみ、まるで浅鉢のような形になっていく。

片足が沈みかけたとき、神から吐き出された一つのリュトンが探索者の腕に当たる。既に動けない体のせいで抱えていた金の盃が弾き飛ばされてしまう。盃は他の財宝同様、彗星のように悍ましい塊へと吸い込まれていく。

しかしその瞬間、宇宙の金属と金属に挟まれた盃が、いや、正確にはその中に入れていた銀のヘビが、一面を白く覆うほどの光を放った。先ほどのあたたかさなど微塵も感じさせない、まさしく「破魔」の力だった。

鼓膜を裂くような高音を出しながら塊が大量の財宝を吐き出す。きらめくリュトンや器が四方に飛び散る。やがてあの悍ましい金属の塊ーーー久遠からの神は姿を消した。

探索者は膨大な金銀に囲まれて立ち尽くす。どことも知れぬ異常な空洞の中、何もできずぼんやりしていると、ふいにコツンと小さなものが頭に落ちる。

ただの、石ころだ。

次いで強烈な光。見上げたら空洞の天井に裂け目ができてそこから太陽らしき光が差し込んできたようだった。裂け目は瞬く間に賑やかな声とともに大きく開かれた。そこからぬっとタオルの上から帽子を被った男たちが顔を出す。彼らは一旦叫び声をあげたものの、すぐに探索者のためにロープを降ろしてくれた。

異国の言葉を浴びせられながら、ようやく地上に出る。大型トラック、スコップ、ロープ、ブラシ、ルーペ…周りのものをぼんやり見渡し、探索者の疲れ切った脳が数分遅れで答えを出す。

アナトリアだ、と。

生還報酬

生還報酬 1d10
【交渉技能】3回連続成功で好きな財宝を一つだけ持って帰る(内緒だよ)
【クトゥルフ神話技能】+8%

アナトリア半島で発見されたため自腹で帰ること
※財宝が人間に戻ることはない

エンドB:仰望すれども渺

金と銀の嵐が探索者の体を押す。よろめきながら否応なくあの恐ろしい神へと体が近づいてしまう。そのたびにず、ず、とゆるやかに地面が落ちくぼみ、まるで浅鉢のような形になっていく。

片足が沈みかけたとき、神から吐き出された一つのリュトンが一直線に探索者の懐に刺さる。骨の砕ける衝撃を感じながら腕の中を見ると、隠し持っていた盃が割れてヘビの像が露わになってしまっていた。

カラカラカラ…と周囲から金属の音がする。この空洞に存在する、すべての精巧なレリーフがこちらを見ている。カラカラ、カラカラ…。美しい金属の器たちが身をもたげる。嵐が止み、視線だけが空間を支配した。息もできないほど壮観だった。

ややあって、中央に座す金属の塊があくびをするかのように大きく膨れ上がる。そこから一枚の銀の盆がこちらに向かって吐き出されたのを、探索者は目で追うことが出来ただろうか。

盆には美しい少女のレリーフが施されていた。髪飾りだけが鍍金されたものだった。

傍には探索者の首が転がっている。

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ダオロスに首を刎ねられロスト

エンドC:白痴なる銀

探索者は「それ」を追ってしまう。美しい財宝たちをーーー遥か先史の人間たちを取り込むその存在を。探索者の視線がなめらかな金属の体を舐める。永久に追えない回転と反芻に愛おしささえ込み上げる。

一歩踏み出し、カクンと視線が下がる。探索者の周りだけが落ちくぼんでいる。ああ、これだ、そう思いながら沈んでいく。落ちくぼんだ地面がゆるく弧を描き、鉢のような形になる。足も腰も胴もなにもかもの感覚がなくなっていき、視界はどんどん下がっていった。小さく小さく圧縮されながら、探索者のやわらかな肌が冷たい銀に変わっていく。

そうだ、自分は最初からーーー擦り切れた脳でぼんやり考える。

呼ばれていたのだ。

美しい黄金郷に、新しい銀の浅鉢がひとつ。

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ダオロスの糧となってロスト

参考資料

このシナリオは作者が行った東京国立博物館特別展「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界-」(2020年2月終了)に強い影響を受けて制作されています。

▼図録情報
ザ・アール・サーニ・コレクション、東京国立博物館(編)(2019)
『特別展 人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界-』,東京国立博物館

▼モデルとなった出土品
No.37 浅鉢(p.96)
No.46 仮面(p.114)
No.91 杯(p.208)
No.103 首飾り(p.232)
No.65 杯(p.154)
No.86 椀(p.198)

▼シナリオについて
出土品を描いた素材をつけようか悩んだのですが難易度が下がりそうなのと、モデルにして描くとしても「出土品って権利関係はどういう…?」という疑問があったので(調べてもよくわからなかった)今回は何もナシです。ごめんなさい…。
一応テスプ2陣回して「普通に意味わかるよ」と言ってもらえた&謎解きも正解してたので、描写だけでなんとかなるとは思います。

余談・宣伝

諸事情でネタ出し~構成~本文まで1日でやった激突貫シナリオでした。やろうと思えばできるんだなぁ。

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21.09.04 ヴォンボ(@deitoro)

本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
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