CoCシナリオ『沈む綺羅星』
良ければ受け取ってくれ。君に合うかは知らないが。
◆概要(PL開示情報)
PL人数:1~4人
所要時間:3h~6h
探索者:新規・継続不問。探索者同士の初対面可。
KP難易度:普通
謎解き難易度:易
戦闘難易度:易
戦闘:確定発生
ロスト率:低
推奨技能:目星・人類学・歴史
形式:古城クローズド・ルルブ第6版準拠(7版改変可)
ジャンル:歴史ファンタジー
キーワード:協力、おとぎ話、戦闘
備考
・感想、リプレイ動画など→歓迎!ネタバレ配慮&シナリオ名の明記をお願いします。
・シナリオ改変→OK。根本的な世界観の改変以外ならご自由に。
・改変シナリオの配布→不可。
※概要内の戦闘難易度「易」は、情報を手掛かりに戦闘を工夫した際の難易度です。
※工夫しなかった場合の戦闘難易度は「難」です
※実際の人物・作品をモチーフにしており、歴史二次創作の気が強い内容です
※この記事は【試し読み】です。シナリオ全文・画像素材は下記ページで有料頒布しています。
※以降の項目はKPのみがお読みください。
※トレーラー画像直後の目次がネタバレなのでお気をつけください
はじめに
本シナリオはかなり前に作者ヴォンボ(@deitoro)がしずきさん(@szklibrary)の誕生日にプレゼントしたシナリオです。
そのため、「しずきさんの創作の雰囲気やしずきさんの好きなものをモチーフに書かれたシナリオ」になっています。しずきさんしかよくわかんないんじゃないの?というレベルの異常文字数の資料が出まくり、しかも謎解きにはあまり関係ない、世界観を楽しむシナリオです。読み物を楽しむ感覚で通過していただけると幸いです。
なお、内容自体はしずきさんご本人を知らなくても特に問題はありません。
また、このたびのリリースに伴い、しずきさんご本人がNPC立ち絵を描きおろしてくださいました。
この場をお借りして厚くお礼申し上げます。
しずきさんのBOOTHにて追加素材の頒布もあるので、ぜひご覧ください!
▼しずきさんの活動場所
Twitter:https://twitter.com/szklibrary
BOOTH:https://snwszk.booth.pm/
追加素材頒布ページ:https://snwszk.booth.pm/items/3456768
KP準備
本シナリオでは特別な準備は必要ありません。
一応下調べはしているものの、作者は「人魚姫」「アンデルセン」「デンマーク」について完全にニワカなのでファンタジーとして受け取っていただければ幸いです。
シナリオzipセットには、pdf版・txt版・グーグルドキュメント版の本文と画像素材セットが入っています。また、参考文献の記載もあります。
シナリオの見方
目次があるので適宜飛んでください。
●凡例
<探索ガイド>…シナリオ上用意されている探索場所。
[KP情報]あるいは※…描写不要・KPのみが知る情報。※橙色で記載
[開示情報]…なんらかの行動後、PLに開示していい情報。
【(技能名)】…該当技能を振ったときに出る情報。マイナス補正は目安であり、KPが適宜調整してよい。※朱色で記載
☆…SANチェックポイント
“”…資料
→〇〇へ…次のイベントもしくは移動先の場所
◆…戦闘相手
◎フラグ…回収されたフラグ
[]付きの群青で記載された文字…NPCによって適宜描写を変更する部分
背景
しずき誕生日おめでとう。
1834年、ハンス・クリスチャン・アンデルセンは戯曲『アウネーテと人魚』を発表した。それは祖国デンマークに伝わる同題の童謡をモチーフにしたものだったが、アンデルセンは主人公のアウネーテを人魚に惑わされた「哀れな女性」ではなく、より主体的な「選択した女性」に変更した。
翌年、祖国に帰ったアンデルセンの元に一通の手紙が届く。手紙の差出人は「海底からの友人」であり、アウネーテが実在した女性であること、自分が童謡に歌われている人魚―――「深きもの」であることが書かれていた。
この奇妙な手紙は、アウネーテがクトゥグァに魅入られ、深きものの村から宝を持ち出しクトゥグァの一部になったという、一種の告発文だった。
アンデルセンは好奇心からこの手紙にあるとおりの海岸を見に行った。小さな船を出し、彼は海底を覗き込む。なにもあるはずがない昏い海の中に、女が立っていた。女は言った「私を美しく書いてくれてありがとう」。
アンデルセンは、童謡のアウネーテが悲惨な末路を辿る理由が、彼女を封じるためだったのと理解する。自分のせい―――『アウネーテと人魚』のせいであの魔女が浮上しかけていることも。
彼は自身の言霊を以てアウネーテ―――太陽の魔女を封じることに決めた。そうして書きあがったのが『人魚姫』であった。美しく優しい『人魚姫』は彼の想像を超えて瞬く間に世に広まり、結果的に『アウネーテと人魚』は人々の記憶から薄れていった。それは魔女を深い水底に沈めた。
しかし『人魚姫』においても、アンデルセンはアウネーテを抹消しなかった。彼は、「魔女」にアウネーテの面影を託した。『人魚姫』が有名になるほど、アウネーテは彼の作品を足がかりにフォーマルハウトから地上に戻ってこようとしていた。
アンデルセンは「魔女」を残した責任を取るために、魔女を封じる物語『沈む綺羅星』を書いた。これはハンス・クリスチャン・アンデルセンなりに解釈した「まじない」だった。
彼の死後、さらに長い長い時を経て、彼の書いた物語は愛されるがゆえに色々な形に変化していった。宝石箱のような童話たちも、オリジナルを知る人が減った。かつての『アウネーテと人魚』が忘れ去られていったのと同じように。
魔女は、そのときを待っていた。自身の呪いで作品たちを侵していきつつ、外からの人間を人魚姫の役割を押し付け、守り人を殺させたあとに始末しようとした。アンデルセンが用意した全てに打ち勝てば、魔女は再び地上に戻ることができる。
登場NPC・神話生物
13世紀に登場した者
①クトゥグァ(p.213)
神格/中立/遭遇なし
13世紀にアーティファクトを手に入れたアウネーテが接触した神。フォーマルハウトに居るため今回の件は感知していない。
②アウネーテ
人間/敵対/遭遇なし
まだ普通の少女だった頃のアウネーテ。本シナリオでは、燃え盛る石をプレゼントされたせいでクトゥグァの炎に魅入られ、フォーマルハウトに行ってしまったという設定。
③深きもの(先祖)(p.188)
神話生物/中立/遭遇なし
本シナリオでは童謡に歌われる「人魚」と同一という設定。アウネーテを愛するあまり村の宝石を渡してしまう。
19世紀に登場した者
①ハンス・クリスチャン・アンデルセン
人間/味方/遭遇なし
実在したデンマークの作家。詳しくはwiki参照。本シナリオでは深きものと接触し、生ける漆黒の炎を封印するための物語を書き下ろしたという設定。
②深きもの(p.188)
神話生物/味方/遭遇なし
アウネーテを娶った深きものの子孫。アンデルセンの作品を評価しつつ、アウネーテの危険性について手紙で警告した。
現代に登場した者
①生ける漆黒の炎(マレモンp.161)
神格/敵対/確定遭遇
クトゥグァの化身。「イクズィース」「アウネーテ」「太陽の魔女」と同じ存在。アウネーテはこの炎に取り込まれた末、絶大な力を手に入れた。ただし、この化身はアンデルセンの手により「太陽の魔女」として再定義されているので実際には無い弱点や能力の低下が見られる。ちなみに「イクズィース」は「SIZUKI」を逆から読んだだけ。
導入
※以下、シナリオ本編
目が覚めて、冷たい風がびゅうと頬を撫でる。探索者は広い空間に立っていた。美しく研磨された白い石造りの床に、上が見えないほどの高い天井。壁は慎重に積み上げられたレンガでできており、素人目に見てもこれは、城の中であるようだった。
まだ夢であろうかと呆けていると、広間の奥からふらふらと女が歩いてくる。青いドレスに黒いケープを羽織った、長い黒髪の、如何にも幸薄そうな女だった。彼女は探索者を見つけると急ぎ足で向かってきたが、目の前に着く頃には相当息が上がっているようだった。
「まぁ、なんてこと。外から人が来てしまったのですね。この城は呪われています…早く帰らないと…」
そこまで言って女は咳き込んでしまう。肌は青白く、指はやせ細り、あまり体調が良いようには見えない。
「私はイクズィース。この城で唯一、まだ歩ける者です。けど…ごめんなさい、あなたたちにはなにもしてあげられない。でも、見回りをしてよかった、これを…」
女は半ば押し付けるように銀色の鍵を渡す。
≪入手≫銀色の鍵
そしてまた咳き込むと、ふり絞るようにこう言った。
「私は塔に居ないと呼吸もままならなくて…これも呪いの一つです。この城の者はみんな呪われてしまっている…。あなたがどうしてここに迷い込んでしまったのかはわからないけれど、とにかく早くあなたの世界に戻ってください。ああ、神様、どうかこの者にお慈悲を…」
イクズィースはふらりとバランスを崩し床に倒れ込む―――かと思った刹那、その体が白い煙のように雲散し、広間の左奥にある螺旋階段へと吸い込まれていった。
☆奇怪な現象にSANc(0/1)
探索者は再び見知らぬ城にぽつんと残されてしまう。城はうっすらと天窓から光が入っているものの、薄暗く、人の気配もない。周囲は異様な静けさに包まれている。
[KP情報]イクズィースはこのシナリオの黒幕、太陽の魔女アウネーテ。この城にいるNPCは彼女を含め【心理学】を振れないので注意(呪いのせいで心がよく読めない)。
—————————————–
①ここまで描写したら→場所:大広間へ
場所:大広間
探索者たちが立っているのは大広間のちょうど真ん中。左右に金縁のドアが1つずつと、広間の左奥と右奥にも暗い穴ぐらのような入口が1つずつ。この穴ぐらは見た目からして螺旋階段の入口であろうとわかる。城の西側と東側で分かれているようだ。
他には、真正面にある巨大なステンドグラスが目を引く。
<探索ガイド>
①広間全体②左右のドア③左奥の階段④右奥の階段⑤ステンドグラス
①広間全体
どれだけ見渡しても外に通ずる大きな扉はない。赤い絨毯がステンドグラスに向かって広間を突っ切るように敷かれてはいるが、その起点―――本来なら出入口の扉があろう場所はただの壁になっている。塗りこめられたようにも見え、酷く不自然だ。
建築関係の【芸術】/【歴史】【人類学】
無骨さの残るレンガ作りの壁と、大仰なステンドグラス、そして螺旋階段を包む大きな塔を見るに、中世ヨーロッパの城ではないかと感じる。少なくとも16世紀以降の宮殿的城郭ではない。
②左右のドア
どちらも金で縁取られた木の扉で、右は鳥、左は枯れた花が描かれている。鳥の扉は開けられるようだ。花の扉のほうは鍵がかかっているのか建付けが悪いのか、何をしても開かなかった。
【目星】
右の扉は茶色い地味な鳥が描かれている。何の鳥かはよくわからない。左の扉に描かれているのは可愛らしいチューリップの群生だが、なぜかすべて枯れている。
[KP情報]鳥はサヨナキドリ(『小夜啼鳥』)。チューリップは親指姫が産まれた花である(『親指姫』)。花の間へは「あたたかい涙」を入手しないと入れない。
・・・・・
②-i.鳥の扉を開ける場合→場所:鳥の間へ
②-ii.花の扉に「あたたかい涙」をかける場合→場所:花の間へ
③左奥の階段
ぽつぽつと蝋燭の明かりが付いており、安全に昇れそうだ。中を見上げてざっと調べると、2階への入口と、最上部への扉が見えた。
【アイデア】
古城の螺旋階段の最上部は広い空間になっており、見張り台の役割を果たしているものが多い。イクズィースが言っていた「塔」とはここのことかもしれない。
・・・・・
③-i.2階へ行く→場所:大書庫へ
③-ii.最上部へ行く→場所:西塔へ
④右奥の階段
入口に近づくとなぜか雪が詰まっていることに気づく。まるで上から雪崩があったかのような有様で、到底昇れそうにない。
[KP情報]「少女のマッチ」入手後に昇ることができる。「少女のマッチ」を点ける場合は以下の描写。
雪は火を避けるかのように、みるみるうちに溶けていく。このマッチを点けながらなら昇れそうだ。
④-i.昇る場合→場所:東塔へ
⑤ステンドグラス
色とりどりのガラスを使った美しい聖母マリアの像だ。
【目星】/よく見る
隅に薄い青のガラスで「私を美しく書いてくれてありがとう」と書いてある。見知らぬ言語のようだが、自分の知っている言語が二重写しになっているように見え、なぜか読める。
[KP情報]原文はデンマーク語。
分岐
①鳥の扉を開ける場合→場所:鳥の間へ
②花の扉に「あたたかい涙」をかざす場合→場所:花の間へ
③左奥の階段から2階へ行く→場所:大書庫へ
④左奥の階段から最上部へ行く→場所:西塔へ
⑤「少女のマッチ」で雪を溶かして右奥の階段を昇る場合→場所:東塔へ
シナリオ全文はBOOTHにて頒布中
無料試し読みはここまでです。
シナリオ全文は下記から購入できます。興味がございましたら、ぜひ遊んでみてくださいね。
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