【試し読み】CoCシナリオ『Usurped Scales』

CoCシナリオ『Usurped Scales』

与えられ、贈られ、愛されるべきだ。今すぐに。

◆概要(PL開示情報)

PL人数:1人固定
所要時間:3h~6h
探索者:新規・継続不問。探索者はチャールストン市警の刑事である。

KP難易度:易
謎解き難易度:易
戦闘難易度:なし
戦闘:なし
ロスト率:極低

推奨技能:目星

形式:1920年代アメリカシティ・ルルブ第6版準拠(7版改変可)
ジャンル:クライムミステリー
キーワード:1920年代、アメリカ、刑事、社会、一本道

備考
・感想、リプレイ動画など→歓迎!ネタバレ配慮&シナリオ名の明記をお願いします。
・シナリオ改変→扱っているテーマ上、基本的に不可。
・改変シナリオの配布→不可。

※事前HOがありますが該当するなら継続でもOKです。
※PCを取り巻く周囲の環境は差別的な人間が多いですが、PCに差別的なふるまいを強いる展開はありません。
※自殺・故意の戦闘(理由なく加害行動を取ったことによるNPCから抵抗など)以外でのロストは想定していません。
※シナリオ中に「黒人」という表現が多用されていますが「Black」と同義であり、差別的な意図はありません。登場NPCが差別的意図でアフリカ系アメリカ人を指す場合、「××」表記にしています。

※本シナリオは1PL固定です。タイマン形式・複数PLの改変は禁止します(理由は「KP準備」の項に記載)


※この記事は【試し読み】です。シナリオ全文・画像素材は下記ページで有料頒布しています。

CoCシナリオ集『狂人集』 - ゴムヤボシ - BOOTH
CoCシナリオ集『狂人集』 「お誕生日おめでとうございます」 本シナリオ集は以下の3つのCoCシナリオが収録されています。 ①わたあめ羊のシロップダンス ②沈む綺羅星 ③Usurped Scales なお、本シナリオ集は、過去に作者がフォロワーの誕生日に当て書きとして書き下ろしたシナリオを適宜調整し、収録したものです。...

※以降の項目はKPのみがお読みください。

※トレーラー画像直後の目次がネタバレなのでお気をつけください

はじめに

本シナリオはだいぶ前に作者ヴォンボ(@deitoro)がユースケさん(@yuuxxxxxx84)の誕生日にプレゼントしたシナリオです。

ユースケさんは身内でも屈指の地雷なし人間であり、もし私が「現代以外の、暗く、センシティブな内容をテーマにしたシナリオ」をぶつけても楽しんでくれるだろう(そして悪いところは指摘してくれるだろう)と思って書いたのがこのシナリオです。

そのため、根底に「反戦」というテーマがあり、かつ「人種差別の描写が入る」人を選ぶ内容のシナリオであることはご理解していただきたいです。探索者がかっこよく活躍できるシーンもお祭り騒ぎもありません。KPさんは事前にこのシナリオをよく読んでからPLを募集するのをおすすめします。

なお、内容自体はユースケさんご本人を知らなくても特に問題はありません。

また、このたびのリリースに伴い、ユースケさんご本人がNPC立ち絵を描きおろしてくださいました。
この場をお借りして厚くお礼申し上げます。

▼ユースケさんの活動場所
Twitter:https://twitter.com/yuuxxxxxx84

事前HO:探索者作成について

※KPは下記文章をPLに開示すること

探索者は1922年を生きるチャールストン市警の刑事だ。設定を考えるにあたり、第6版ルールブックのp.334~335の情報を活用しても良い。

以下は本シナリオの設定に則って追加される要素である。条件を満たしていれば継続探索者でも構わない。

①基本設定
探索者は1922年現在【30歳以上の白人男性】である。職業は刑事。独身・妻帯者等の設定は自由。

②職業
【サウスカロライナ州チャールストン市警の刑事】である。当時のチャールストン市警は残念ながら人種差別撤廃に意欲的だったとは言えない(探索者にレイシストRPを強制する展開はありません)。

③価値観
【捜査に意欲的】であれば探索者の価値観は自由である。ただし、探索者がどれほど博愛主義的な態度を取ろうとも、アフリカ系アメリカ人あるいはヒスパニック・アジア人からは警戒心を持たれることもあるだろう。

④経歴
現在刑事であればそれまでの経歴は自由。第一次世界大戦(1914~1918)で従軍経験のある者も多いだろう。

⑤技能
自由。各KPのハウスルールに則って取ること。

—————————————–

【注意】
当シナリオは時代背景上、人種差別的な発言・行動をするNPC等が登場しますが、シナリオ及び作者に人種差別を推奨する意図は断じてありません。
PLのみなさんもRPをする際は、PCとPLを明確に区別し、各人の良識に照らし合わせてプレイしていただけると幸いです。

背景

ユースケさん誕生日おめでとう。
無類の音楽好きだったユージーン・スネールは、元々の温厚さも相まって人種・異文化に対して非常に寛容だった。少なくとも戦争に行くまでは彼は常識的な範囲で人々と交流しており、誰からも好かれる優しい男として評判だった。

彼は第一次世界大戦で肺を患ったあと、少しずつ「使命感」にかられやすい性格になった。面倒を見る部下が増えるにつれ、人種間の軋轢を少しでもなくそうと奔走する人間になった。それは自分がいつ死ぬかわからないという焦燥感から来るものでもあったし、誰もが幸せに暮らしてほしいという悲願から来るものでもあった。

とうとう彼を一線に超えさせたのが、ニールたちのジュバを見たときだった。彼は美しい彼らのダンスに感動し、彼らを絶対に守らなくてはならないと思い込み始めた。

手段を選ばなくなったスネールは、やがてトルネンブラを知る。彼はこれこそが黒人の部下たちを救うただ一つの方法だと信じた。彼らは音楽の神となって二度と迫害されない存在になるべきだと考えた。

こうして、魔頭を手に入れたスネールはトルネンブラを招来するために白人従業員に犠牲を強いていくことになる。

しかし、実際には彼が事件を起こす前までは従業員たちは問題なく働いており、少なくとも黒人従業員の地位が保証されていくことに反抗している者はいなかった。スネールが起こした事件によって、白人従業員と黒人従業員の軋轢は取り返しのつかないものへと進行していく。

探索者はこの事件の行く末を見届ける立場に過ぎない。

登場NPC・神話生物

①トルネンブラ
神格/中立/ルートにより遭遇
スネールの儀式によって呼ばれた音楽の神。神殿に連れていくべき魂がないと判断し、自発的に消えていく。

②ユージーン・スネール
人間/敵/確定遭遇
白人男性。50歳なかば。
善意で人を殺しまくる男。好きなものはコーヒーと音楽。肺が悪く長時間歩いていられないので捜査に同行はしない。

③ニール・ベアトリス
人間/味方/確定遭遇
黒人の青年。温厚で人を傷つけることを是としない。捜査には協力的であり、PCが要請すればある程度同行して探索を手伝ってくれる。

④ハービー・リウ
人間/味方/確定遭遇
ニールやレッドヤードと友人の白人青年。スネールによって殺されてしまう。

⑤ジミー
人間/味方/確定遭遇
黒人従業員の一人。黒人従業員たちの中でもリーダー的存在であり、思慮深い。暴力的な手段は一切取らない。

KP準備

・聞き込み型のシナリオのため、NPCが重要な情報を持っています。積極的に出してほしい情報は赤字で書いています。

・タイマン・複数PLアレンジは禁止です。
┗テスプなどでいろいろ考えた結果、やはり「黒人NPCたちを複数の当時の警察PCで問い詰める」状況自体が、このシナリオの意図にそぐわないと判断しました。よろしくお願い致します。

・当シナリオを書く上で参考にした資料の一部を「主な参考資料」の項に掲載しています。

シナリオzipセットには、pdf版・txt版・グーグルドキュメント版の本文と画像素材セットが入っています。

シナリオの見方

目次があるので適宜飛んでください。
KPはNPC解説→ルート解説→背景→導入…の順で読んだほうが理解しやすいかも。

●凡例
<探索ガイド>…シナリオ上用意されている探索場所。
[KP情報]…KPのみが知る情報。橙色で記載。
[開示情報]…なんらかの行動後、PLに開示していい情報。
【(技能名)】…該当技能を振ったときに出る情報。マイナス補正は目安であり、KPが適宜調整してよい。暗い赤で記載。
☆…SANチェックポイント
“”…資料
→〇〇へ…次のイベントもしくは移動先の場所
◆…戦闘相手
◎フラグ…回収されたフラグ

導入

※以下、シナリオ本編

どういう経緯だったかもう忘れた。
たしか、最初はマッケンジーが変なものを見たと言って、仕方なくついていったんだったと思う。部屋はまだ灯りを入れてなかったからぼんやり暗かった。マッケンジーは「あっ」と声を上げて、それきりだ。

1922年8月、むせ返るような暑さの中で探索者は調書を取っていた。目の前に居るのはウィリアム・ラーク。今回の事件の目撃者の一人だ。
「それきりだ」と言ったあと、ラークは黙って探索者を見つめている。この男は幸薄そうな乱れ髪の白人で、右頬に一筋の油汚れがあった。

—————————————–

シュリンプベアー社チャールストン工場従業員連続失踪事件。
これが探索者が担当する事件の名称である。つい2ヶ月前から「第二のヘンリー・フォード」を狙う新参自動車メーカー「シュリンプベアー社」のチャールストン工場で、白人従業員が次々と姿を消しているのだ。
黒人従業員が圧倒的に多い中、白人だけが姿を消しているこの事件は、既に良からぬ噂が立っている。「最初に黒人寮には行くなよ。人権侵害だって訴えられるから」捜査を任命した上司のにやついた顔が、この事件のすべてを表していた。

—————————————–

「とにかくさ」ラークは身を乗り出す。「俺らの工場に来てくださいよ、刑事さん。じゃなきゃきっとわからない。俺たちがどんなに危険な状態か」

唾を飛ばして話すラークを残して、探索者は蒸し暑い取調室を出る。明日から数日は真夏のチャールストンを歩かねばならないだろう。

—————————————–

ここまで描写したら→探索:チャールストン工場

※捜査に持っていきたいものを準備させる時間を取ってもよい

探索:チャールストン工場

シュリンプベアー社のチャールストン工場は、世間一般の車工場のイメージと大差なく、油臭い靴跡まみれの要塞だ。期間工たちは自分たちの汚れた手をあちこちで拭いてまわり、巨大な製造マシーンは隣町まで聞こえるかと思うほどの唸り声を上げていた。

探索者の手元にはすすけた印刷の工場内部の地図と事件に関するメモがある。これを頼りに情報を集めるしかないだろう。

(上司から渡されたメモ)
シュリンプベアー社チャールストン工場従業員行方不明事件引き継ぎ
前任者のせいで警戒されてるから注意!(あの××共は口を割らんかもな)

管理棟:白人寮とつながっている建物。 責任者ユージーン・スネールは、ここの管理人室にいる。右腕として黒人を連れている風変わり。

行方不明者一覧
ジョー・ビル…黒人寮に向かったまま行方不明。
ニコラス・マッケンジー…管理棟で行方不明。
アンソニー・レッドヤード…作業場で行方不明。
バーソロミュー・ゴート…管理棟で行方不明。直近。

最初に居なくなったビルは黒人寮の警備員だった。彼はニューオーリンズから流れてきた白人で妻子はなし。 50代。 黒人寮に見回りに行った途中で行方不明になった。

ビルがいなくなってからは誰も黒人寮の見回りをしたがらず、住み込みの黒人たちを見張るものは誰もいない。その後、白人従業員が立て続けに姿を消している。

<行き先ガイド>
①管理棟②黒人寮③作業場

[開示情報]1日の探索箇所に制限はない。探索を全て終えたあとに警察署に立ち寄り、そこで専門的な情報を掘り下げることもできる。特に用事がない場合は行く必要はない。

分岐

①初めて管理棟に行く→イベント:案内する者
②黒人寮に行く→場所:黒人寮
③作業場に行く→場所:作業場
④1日目の探索を終える→イベント:踊る者

イベント:案内する者

※初めて管理棟に来たときのみ発生
※ニールは当シナリオの重要NPCのため、彼を殺したり拘束したりするとシナリオが破綻する可能性がある(そもそも理由のない加害は当時でも刑事罰の対象であるため、PCは逮捕される)。

管理棟もまた小汚い壁をしていたが、それなりに清掃は入っているようだった。 管理人室は管理棟の一番手前の部屋で、入居者の部屋の鍵を借りるなら、ここの主ユージーン・スネールに頼まなければならない。

探索者が辺りを見回していると一人の若い黒人が廊下の奥から歩いてきた。彼は一瞬探索者を訝しげな目で見たが、すぐに得心のいったような顔をして「もしかして刑事さんですか」と話しかけてきた。

青年はニール・ベアトリスと名乗ったあと、管理棟責任者補佐をやっていると説明してくれた。彼曰く、自分も入居者の部屋の案内はできるが、まずは一度管理人室に入ってスネールさんに挨拶したほうがいいかもしれないとのことだった。

「それと…僕たちの寮(黒人寮)にも行きましたか?おそらくあまり歓迎はされませんが…みんな疑われたいわけじゃないので、きちんと捜査してくれるとわかったら協力するはずですよ」

ニールは困ったような笑顔でこう続けた。作業用ジャケットは着ているものの、中からはワイシャツが覗いており、現場の労働者とは違う雰囲気を纏っている。

分岐

①-i.このままニールに案内を頼む場合→イベント:居なくなった者へ
①-ii.管理人室までの案内を頼む場合→イベント:変わり者

シナリオ全文はBOOTHにて頒布中

無料試し読みはここまでです。

シナリオ全文は下記から購入できます。興味がございましたら、ぜひ遊んでみてくださいね。

CoCシナリオ集『狂人集』 - ゴムヤボシ - BOOTH
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本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
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