CoCシナリオ『×2(かけるツー)』

CoCシナリオ『×2』は2020年7月にリリースした無料シナリオ(処女作)です。最新シナリオではないのでご注意ください。

CoCシナリオ『×2(かけるツー)』

目が覚めたら倉庫のような場所に居た探索者。脱出の糸口を探っていると奇妙な人物に会う。その人物には見覚えが――いや見覚えというよりこれは――!?うっかりすると全員死ぬ初心者向けクトゥルフSFシナリオ!

◆概要(PL開示情報)

PL人数:3PL推奨
所要時間:1h~3h
探索者:新規・継続不問。初対面可。

KP難易度:難
謎解き難易度:易
戦闘難易度:難
戦闘:完全回避可能
ロスト率:低

推奨技能:目星・芸術系・電気修理系

形式:謎空間クローズトド・ルルブ第6版準拠(7版改変可)
ジャンル:SFコメディホラー
キーワード:ギャグ・SF・クローズド・一本道・RP

備考
・感想、リプレイ動画など→歓迎!ネタバレ配慮&シナリオ名の明記をお願いします。
・シナリオ改変→OK。根本的な世界観の改変以外ならご自由に。
・改変シナリオの配布→不可。

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※このシナリオは20年7月に出した作者の処女作です。21年11月30日に記法リライト・微調整はしましたが、至らぬ点が今の50倍くらいあるため注意してください。

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【ver.2.0】CoCシナリオ『×2(かけるツー)』 - ゴムヤボシ - BOOTH
【21.11.30追記】アプデしました! このシナリオは20年7月に出した作者の処女作です。21年11月30日に記法リライト・微調整はしましたが、至らぬ点が今の50倍くらいあるため注意してください。 ・・・・・ 目が覚めたら倉庫のような場所に居た探索者。脱出の糸口を探っていると奇妙な人物に会う。その人物には見覚えが――...

※以降の項目はKPのみがお読みください。

※トレーラー画像直後の目次がネタバレなのでお気をつけください

当画像はセッション用にDLを許可します

  1. 背景
  2. KP準備
  3. シナリオの見方
  4. 導入
  5. 場所:ロビー
    1. ①休憩コーナー
    2. ②コンテナ群
    3. ③謎の機械
    4. ④ドア
  6. イベント:Aの発見
    1. 分岐
  7. 場所:廊下
    1. ①ルーム1のドア
    2. ②ルーム2のドア
    3. ③ルーム3のドア
    4. ④狭い通路
    5. ⑤事務室のドア
    6. ⑥エントランスのドア
  8. イベント:Bの発見
    1. 分岐
  9. イベント:白い怪物(ルーム1)
    1. 途中分岐
    2. 探索後処理
  10. 場所:ルーム2
    1. ①手前の機械
    2. ②壁際の機械
    3. 探索後処理
  11. 場所:ルーム3
    1. ①アサガオ
    2. ②ウサギ
    3. ③誰かの荷物
    4. 探索後処理
  12. 場所:案内ミ=ゴくん
    1. ①紙とペン
    2. ②端末
  13. イベント:案内ミ=ゴくん起動
    1. テンキーに358417を入れた場合
    2. 探索後処理
  14. イベント:Cの発見
    1. 分岐
  15. 場所:事務室
    1. ①ロッカー
    2. ②覗き窓
    3. 分岐
  16. 場所:事務員控室
    1. ①作業机
    2. ②大きな塊
    3. ③コピー機のような機械
    4. ④動かない化け物(PLが宣言した場合のみ)
    5. 分岐
  17. 情報:事務員ミ=ゴ
    1. 会話例
    2. 分岐
  18. イベント:最終交渉
    1. 人形作りを依頼する
    2. 注文した
    3. イベント後処理
  19. 場所:エントランス
    1. ①テーブルと椅子
    2. ②ソファ
    3. ③ドリンクバー
    4. ④大きなドア
    5. 分岐
  20. 処理:エンド分岐
    1. ①探索者の数×2個注文し、全員で脱出する
    2. ②探索者の数だけ注文し、´たちを残す
    3. ③それ以外の数で脱出
    4. 補足
  21. エンドA:瓜二つの友人たち
    1. 生還報酬
  22. エンドB:さよなら探索者
    1. 生還報酬
  23. エンドC:自動崩壊
  24. エンドD:大行進
  25. ルート解説
  26. 補足:NPCとの戦闘
  27. 余談・宣伝
    1. 似た系統のシナリオ

背景

とあるミ=ゴたちが遺棄された空間を使って倉庫を建設した。
彼らはあらゆる生物・物質の研究に熱心に取り組んでいる集団で、更なる研究の発展には膨大なサンプルが必要不可欠だった。
そこでミ=ゴたちは、並行世界に介入しまったく同じサンプルを自動的に2つ取得する画期的なシステムを開発した。このシステムは『並行的自動在庫補充システム』と名付けられ、倉庫に導入された。
ところが、この倉庫とシステムを作ったミ=ゴたち―――開発チームは、過激で非実用的な危機管理機能をシステムに付加してしまった。その機能とは、「権限者の許可なく登録データの数がちょっとでも変わったら倉庫ごと爆発して消滅させる」というものであった。
実際にサンプルと使いたい研究チームとデスクワークの事務チームのミ=ゴたちはすぐにこのめちゃくちゃな危機管理機能を問題視した。もちろん在庫データの編集権限は研究チームに与えられていたが、それでも突発的なトラブルで在庫数に齟齬が生じるかもしれない。そんなことで倉庫ごと―――中に居たら自分たちもだ―――爆発されてしまったらたまったものじゃなかった。
両チームは開発チームを黙らせすぐ対処に当たった。研究チームはシステムをより実用的なものにするため改善チームを結成。危機管理機能の緩和に努めた。事務班はアルバイトの常駐事務員を募集して自立行動をとるサンプルの監視およびサポート業務に当たらせた。翻訳班は、ある程度知性を持つサンプルのためにガイドマシーンを設置した。

常駐事務員の面接に受かったのは私立ドリームランド美術大学卒の現フリーターミ=ゴと、ニャルラトホテプを崇拝する宗教団体で事務経験のあるミ=ゴだった。経験者ミ=ゴは要領の悪いフリーターミ=ゴを毎日叱り飛ばしていた。
そしてある日、ストレスが爆発したフリーターミ=ゴは経験者ミ=ゴを殺してしまう。システムの登録データには在庫はもちろん、常駐事務員である自分たちも登録されていた。このままでは爆発して死ぬと思ったフリーターミ=ゴは、藁にも縋る思いで大型のフィギュア制作機と持前の制作技術で経験者ミ=ゴそっくりのフィギュアを作った。死体はこっそりエントランスから捨て去った。爆発は起きなかった。フリーターミ=ゴはこの1件から「フィギュアでシステムを騙せる」ということを学んだ。
晴れてフリーターミ=ゴはこの倉庫唯一の事務員ミ=ゴになったのである。

その後、いろいろなものが倉庫に補充されていった。
若い女は並行世界の自分とよくよく話し合い、協力しあうことにした。しかし毛むくじゃらの怪物が二匹到着し、運悪くルーム1に隠れてしまった。彼女らはルーム1で凍死した。
男はいわゆる「探索者」だった。そのため大体このこと把握し、並行世界の自分と協力しようとした。しかし相手は「探索者」だからこそ、男を信用しなかった。護身用の銃で男は射殺された。残されたほうは事務員ミ=ゴに交渉しに行ったが、在庫数に齟齬が出ていることに気づいた彼に同じように射殺された。同程度の損壊した死体なら、システムは沈黙したままだった。

そして新しい在庫として、探索者たちが到着したのである。

KP準備

KPは事前に以下を用意しておくとスムーズです。

①参加探索者全員分の駒・チャパレ
┗並行世界のPCたちをRPする際に使います。3人の場合、それぞれ探索者A・探索者B・探索者Cと割り振っておいてください。

②イベント調整
┗人数に合わせて発見イベントの数を調整してください。
※このシナリオは3人想定で書かれています。

並行世界の存在と言えど、他人の探索者のRPをしまくるシナリオなのでガバRPしても許してくれる仲のいいPLさんと遊んだほうがいいと思います(うちの子キャラブレ絶対許さない系の人と遊ぶと地獄です)。

シナリオの見方

目次があるので適宜飛んでください。

●凡例
<探索ガイド>…シナリオ上用意されている探索場所。
[KP情報]や※…KPのみが知る情報。橙色で記載。
[開示情報]…なんらかの行動後、PLに開示していい情報。
【(技能名)】…該当技能を振ったときに出る情報。マイナス補正は目安であり、KPが適宜調整してよい。暗い赤で記載。
[こんな感じの部分]…状況に合わせて適宜変更してほしい部分
☆…SANチェックポイント
“”…資料
→〇〇へ…次のイベントもしくは移動先の場所
◆…戦闘相手
◎フラグ…回収されたフラグ

導入

※以下、シナリオ本編。
※開始前に「KP準備」を参照しておくこと。

探索者はふと目を覚ますと見知らぬ部屋に居た。壁、床、天井は白を基調としたメタリックな材質で出来ているようだ。全体的に高級感のある倉庫…のような印象を受けるが、テーブルや椅子など、人が休めるコーナーもいくつかある。部屋はとても広い。

辺りを見回しても自分たち以外には誰もいないようだ。

[KP情報]ここで自己紹介RPを挟むよう誘導するとのちにKPがRPする際の参考になる。

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適宜RPなど済んだら→場所:ロビー

場所:ロビー

部屋は十分に明るく、不気味な印象は受けない。目の前のドアから出れそうだが、休憩コーナーや中央のコンテナ群、モニタつきの機械など、気になるものはいくつかある。

[開示情報]所持品はキャラシに記載されたものはすべて持っている。ただし、通信機器の電波は通じない。

<探索ガイド>
①休憩コーナー②コンテナ群③謎の機械④ドア

[KP情報]PLはここが「ロビー」だということは廊下に出るまでわからない。

①休憩コーナー

喫茶店にあるような丸テーブルが2つある。ただし、どちらも椅子が1つしかないので一人用席のようだ。部屋の隅に置かれている。ここが本当に倉庫で、荷物を移動させるのだとしたら、納得の配置だ。

【目星】/テーブルの上を見る
折られた紙がある。中を開くとカードキーのようなものが挟まっていた。カードキーを挟んでいた紙には奇妙な文言が書かれていた。

“カードキーは見つけたがあんな奴らは相手にできない!困った!根本的な問題を解決しなければ!僕はどこだ?”

[KP情報]事務室で見つかるカバンの持ち主が書いたもの。

②コンテナ群

部屋の真ん中に無造作に詰まれている。大きさは様々。固定してないと倒れて大変な事故になりそうだが奇妙に安定している。

【目星】/コンテナに近づく
よく見るとコンテナ一つ一つに鉤のようなものがあり、コンテナ同士でしっかり固定できていることがわかった。
さらに、いくつかのコンテナは無造作に積まれているのではなく、何者かが身を隠すために積まれてるように見える。目を凝らすとコンテナの隙間に人影のようなものが見えた。怯えているのか、震えてるようだ。

【聞き耳】
コンテナの隙間からか細く呼吸のような音が聞こえる。

・・・・・

※コンテナをどかす→イベント:Aの発見

③謎の機械

タッチで操作するような謎の機械がある。コンビニにあるチケット発券用の端末にとても似ている。

【目星】/近づく
上部にモニタが、下部には印刷口やコードの読み取り部分がある。やはりコンビニの端末にそっくりだと感じるが、側面にペイントされているのは得体の知れない言語のロゴだった。電源は点いておらず、故障のように見える。

・・・・・

【機械修理】【電気修理】【鍵開け】【幸運】など
端末下部を開けて中の配線を見てみるが、まったく見たことがない基盤をしている。とりあえず当てずっぽうでつないでみたら画面が点いた。
起動のロード中なのか、マスコットのようなものだけ映っている。それは頭が渦巻きで空飛ぶエビだかカニだかのような姿をしていた。
その一見かわいいようでよく見ると全然かわいくないマスコットを見た探索者は何故か寒気が止まらなかった。
☆SANc(0/1)

マスコットがぴょんぴょんと跳ね回るアニメーションが数秒続いたが、そこで画面が真っ暗になった。もうどうやっても電源はつかない。

④ドア

この部屋唯一のドア。自動ドアのように見えるが近づいても開かない。

【目星】/ドアを調べる
見るからに厳重なドアで到底壊せそうにないことがわかる。隣にカードリーダーのようなものがある。

・・・・・

※ドアのカードリーダーにカードキーをかざす場合→場所:廊下

イベント:Aの発見

※「場所:ロビー」でコンテナをどかしたら発生
※Aの台詞部分は適宜変更。

コンテナをどかしたら何者かの姿が現れた。その人物は警戒した目をしていて、酷く疲れた様子だった。

しかしなにより奇妙だったのは、[探索者A]と瓜二つの姿をしていたことである。
☆クローンか、ドッペルゲンガーか、とにかく気味の悪いものを見てしまった探索者はSANc(0/1d3)。

[探索者A]にそっくりなその人物はこのように話し始めた。

「お願いだから落ち着いて。僕もこの状況は理解できない。でも一つ言いたいのは、僕が本物ということだけだ」

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[開示情報①][探索者A]のPLは、最初から居た[探索者A]とコンテナに隠れていた[探索者A]、好きなほうを選ぶことができる。PLは以後選んだほうの[探索者A]でRPや探索をすること。選択されなかった[探索者A]が死んだとしても探索者ロストにはならない。

[開示情報②]どちらを選んだとしても生還や展開にまったく影響はない。選択されなかったほうの[探索者A]は、以後KPがNPCとしてRPする([探索者A]´表記)。

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※どちらを選んだとしても以下をPL開示。PC間で共有するかはPLの自由。

コンテナに居た[探索者A]はいきなりこの部屋で目覚めた。戸惑っている間に光に包まれて探索者たちがやってきたため、慌ててコンテナを積み上げて隠れていたのだ。もし詳しく質問するなら、[探索者A]同士は口調・生い立ち・個人的な秘密まで全部同じだとわかるだろう。

[KP情報]KPが動かす[探索者A]´は自分が本物であるとは主張するものの、基本的には協力的なRPが望ましい。

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[KP情報]このシナリオではどちらがPLの探索者か決めていない。並行世界のまったく同じ存在であるため、真偽の観点から言えばどちらも本物である。そのため、もしPLがあとから出てきた探索者を選んだならば、それまでは探索者´というNPCをPLがRPしていたという処理になる。もし、その間に成長やSAN減少などがあったなら操作対象を変えた時点でリセットされるだろう。

分岐

①[探索者A]´を殺す・戦闘するという展開になった場合→補足:NPCとの戦闘
②ロビーの探索に戻る→場所:ロビー

場所:廊下

最初の部屋を出ると廊下になっていた。同じくメタリックで小洒落た内装。一番奥の突き当りはドアがあるように見えるが、近寄らないとわからない。廊下左手にドアが3つ、右手にドアが1つ。また、すぐ右手前に細い通路がある。ホテルなどでたまに見かける公衆電話を置いてあるスペースのような狭さだ。

フロアマップ

当画像はセッション用にDLを許可します

探索者が振り返ると、さっき出てきたドアの横にパネルがあった。パネルにはフロアマップが表示されている。「言語切り替え」はボタンのようなグラフィックだ。

初めて目にするまったく理解できない、それでいて妙に強い不安を覚える言語に変わった。☆SANc(0/1)

・・・・・

<探索ガイド>
①ルーム1のドア②ルーム2のドア③ルーム3のドア④事務室のドア⑤エントランスのドア

①ルーム1のドア

開かない。両開きにロックがある仕様のドアで、他のドアに比べてさらに頑丈に見える。

・・・・・

※近づくか【目星】成功で、以下に分岐して追加描写

①-i.ルーム2で冷房を切っていない場合

ドア隙間から冷気が漏れていてひんやりしている。冷凍室のようだ。しかし、中で大きな何かが歩いている気配がする。

【聞き耳】
ドアが厚いのかなにも聞こえない…と思ったら内側から何か体当たりしてきたような音がした。

①-ii.ルーム2で冷房を切った場合

特になんの気配もない。しばらく調べているとドアの隙間から水が漏れだしていることに気づいた。

【聞き耳】
特になんの気配もない。強いて言うならかすかに水滴が落ちる音が聞こえる。

※ルーム3でレバーをひねってロックを解除している場合は前に立つだけでゆっくりとドアが開いていく。入る場合→イベント:白い怪物(ルーム1)

[KP情報]冷房を切らないままルーム1を開けてしまうとノフ=ケー2体と戦闘になる。ほぼ勝てないので注意。

②ルーム2のドア

カードリーダーがある。持っているカードキーで開きそうだ。

【目星】
ドアに血らしきもので書かれたメモ書きがある。

“頼れるのは■■■■ゴくんだけ!”

[KP情報]「案内ミ=ゴくん」。コンビニ端末のような機械の名称。

※カードキーで中に入る→場所:ルーム2

③ルーム3のドア

ドアは閉まっており、横に大きな赤いボタンがある。かなり押したくなる見た目をしている。

※押す場合→イベント:Bの発見

④狭い通路

大人1人が通れるくらいの狭い通路。ホテルで公衆電話が置いてある少し凹んだスペースといったほうが近いかもしれない。

※奥に進む場合→場所:案内ミ=ゴくん

⑤事務室のドア

閉じている。鍵穴やボタン、カードリーダーの類も見当たらない。さっきのドアと同じく頑丈で壊せそうにない。

※案内ミ=ゴくんで解除申請が済んでいる場合→イベント:Cの発見

⑥エントランスのドア

ひときわ大きい、少しお洒落な模様が施されたドア。横にカードリーダーがある。持っているカードキーで開きそうだ。

※カードキーを使って入る場合→場所:エントランス

イベント:Bの発見

※ルーム3のドアのボタンを押すと強制的に発生
※[探索者B]の口調は適宜変更

探索者がボタンを押すと、目の前のドアがウィーンと鳴って開き始めた。しかしその瞬間、探索者は飛び出してきた何者かにぶつかってしまう。なにかと思い咄嗟に身構えるとそこには[探索者B]と瓜二つの人物が居た。
☆クローンか、ドッペルゲンガーか、とにかく気味の悪いものを見てしまった探索者はSANc(0/1d3)。

[探索者B]にそっくりなその人物はこのように話し始めた。

「よかった!出られた!本当にありがとう……え?なんだそいつは?俺がいるぞ?」

どうやら今までずっと閉じ込められていてまったく状況を把握していないらしい。

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[開示情報①][探索者B]のPLは、最初から居た[探索者B]と飛び出してきた[探索者B]、好きなほうを選ぶことができる。PLは以後選んだほうの[探索者B]でRPや探索をすること。選択されなかった[探索者B]が死んだとしても探索者ロストにはならない。

[開示情報②]どちらを選んだとしても生還や展開にまったく影響はない。選択されなかったほうの[探索者B]は、以後KPがNPCとしてRPする([探索者B]´表記)。

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※どちらを選んだとしても以下をPL開示。PC間で共有するかはPLの自由。

[探索者B]は気づいたらこの部屋(ルーム3)に居た。部屋は内側からはビクともせず、真っ暗だったのであきらめて部屋の中に居たウサギと戯れていた。それ以外の情報は持っていない。
もし詳しく質問するなら、[探索者B]同士は口調・生い立ち・個人的な秘密まで全部同じだとわかるだろう。

分岐

①[探索者B]´を殺す・戦闘するという展開になった場合→補足:NPCとの戦闘
②廊下の探索に戻る→場所:廊下
③ルーム3の探索をする→場所:ルーム3

イベント:白い怪物(ルーム1)

※ルーム3でロックを解除している場合のみ探索可能。

中に入ると二つの大きな影が見えた。それらは白い長い毛で覆われていて、一見すると白熊のようにも思えたが、頭部の角がその推測を打ち消した。なにより、その生き物は足が6本あったのだ。
☆ノフ=ケーを見た探索者はSANc(0/1d10)

途中分岐

①ルーム2で赤いスイッチを押してない(冷房を切っていない)

部屋はとても寒い!居るだけで凍えそうだ。全員DEX-3の状態で強制戦闘。(ノフ=ケー第6版p.186参照)

[KP情報]ノフ=ケーに負けたら戦闘参加者全員ロスト。すべての探索者が戦闘に参加していた場合そこでシナリオ終了。ノフ=ケーに勝った場合、脅威は去るが部屋は雪と氷に覆われているため探索できない。

②ルーム2で赤いスイッチを押している(冷房を切っている)

部屋は先ほどまで氷が張っていたのか水浸しだ。探索者たちにとっては過ごしやすい室温になっている。不可思議な獣たちはぐったりしており、起き上がる気力はないようだ。

【目星】/あたりを見回す
先ほどまでは雪の下に埋もれていたのであろう二人の女性の死体がある。青白く強張った顔と凍り付いた涙の跡から、その最期は決して安らかではなかったことがわかる。そしてこの二人は同じ顔、同じ服装、同じ背格好をしている。
☆不自然な外見の死体を見てしまった探索者はSANc(0/1d3)

女性のすぐ傍にビニール袋に入ったかわいいメモ帳が落ちていた。中を開くと日々の買い物メモが大半だったが、最後のページにはこう書かれている。

“申請ID:358417(ミゴハヨイナ~)”

探索後処理

※他の部屋を探索する→場所:廊下

場所:ルーム2

見たこともない機械がたくさん置いてある。制御室のような印象を受けるが、大半の機械がシャットダウンしているようだ。

<探索ガイド>
①手前の機械②壁際の機械

①手前の機械

完全に電源が落ちてしまっている。ボタンがたくさんあり、説明用なのかテプラがいっぱい貼ってある。ただし読める言語ではない。また、機械下部に簡易ロックされた扉があった。

【鍵開け】【キック】【幸運】など
配線を見ようと中を開けると、扉の裏にキリストがあしらわれた精巧なペンダントがテープで止められていた。
≪入手≫精巧なペンダント

[KP情報]事務員のミ=ゴに渡すとフィギュアを作成してくれる(確定)。

②壁際の機械

どうやら現在も稼働中のようだ。モニタにフロアマップが映っており、隣のルーム1が点滅している。また、赤いスイッチと青いスイッチがあり、今は青いスイッチが点灯している。機械からルーム1側の壁へは大きなパイプが伸びている。

【アイデア】/パイプを触る
パイプを触ってみるとかなり冷たい。冷気が通ってるのではないかと感じる。

【クトゥルフ神話】
両スイッチの上には未知の言語のテプラが貼ってある。赤いスイッチの上には『暖房』、青いスイッチの上には『冷房』と書いてあると直感が告げる。

※赤いスイッチを押す場合は以下

赤いスイッチが点灯し始める。ブーンという何かが切り替わった音がした。

探索後処理

※別の部屋を探索する→場所:廊下

場所:ルーム3

※イベント:Bの発見を終えたあと入れるようになる。

薄暗いが、またしても物置のようだ。いろいろなものが散らばっている。ざっと見ただけでもアサガオの鉢植え、ウサギ、誰かの荷物…というなんの関連性もない物がある。ウサギはそのへんをぴょんぴょんうろついてかわいい。また、内側にはドアを開けるための仕掛けがなにもない。つまり、中に人が居る状態で誰かが外のボタンを押したら、中の人間は完全に閉じ込められてしまうだろう。

<探索ガイド>
①アサガオ②ウサギ③誰かの荷物

[KP情報]探索者たちが探索者´たちを警戒するならば、ここに閉じ込めることもできる。

①アサガオ

アサガオの鉢は2つある。どちらも同じ紫の花を咲かせており、色の濃淡といい、葉の付き方といい、2つともまったく同じであることがわかる。

・・・・・

【目星】/持ち上げる
片方の鉢は床にある小さな蓋の上に置かれていたようだ。どかして開けてみるとひねるタイプのレバーがあった。

※レバーをひねる場合は以下

ゴゴゴゴ…という重厚な音がルーム1のほうから聞こえた。

[KP情報]解除されたのはルーム1のドア。これ以降入れるようになるが、ルーム2で暖房を入れてないとノフ=ケーとの戦闘。

・・・・・

【生物学】【薬学】など
この2つのアサガオは同種どころかまったく同じ個体のように見える。クローン技術で複製されでもしない限りこのようなものは生まれない。

②ウサギ

黒と白のぶち模様の可愛いウサギだ。2羽もいるしかなり良い。

【目星】
2羽とも1ミリの誤差もないくらいおそろいのぶち模様だ。

【生物学】など
この2羽のウサギは同種どころかまったく同じ個体のように見える。クローン技術で複製されでもしない限りこのようなものは生まれない。

[KP情報]ウサギにしろアサガオにしろ、並行的在庫補充システムで補充されたものなので(背景参照)どちらか片方を殺して数が合わなくなると全員ロストエンドになる。殺すなら両方とも殺すか、事務員ミ=ゴに事情を話して対処してもらうしかない。

③誰かの荷物

誰かのグレーのビジネスバッグだ。同じものが2つ落ちている。片方はやたら汚れていてドス黒い色をしている。もう片方はわりと綺麗だ。

③-i.赤茶けた鞄

ノートが一冊入っている。こう書き殴られている。

“2つ!それもまったく同じものが必要なんだ!待てよ?あいつが残るなら1つだけでいいのか?いや!いや!あいつだって妻が居るはずだ。そう、愛しいメアリー!2人で帰る方法を探さなきゃ。この部屋に、まだ僕たちが居るって勘違いさせないと。協力できるはずだ。だって僕たちなんだから”

【医学】【生物学】
ドス黒い染みは血だとわかった。これが持ち主の血なら、量から考えてもう生きてはいないだろう。

③-ii.綺麗な鞄

拳銃が2丁、弾薬箱が2箱、ノートが一冊出てくる。片方の拳銃には弾が装填されている。もう片方には装填されていなかった。ノートにはこう書かれている。

“信じるな。僕はこういう経験を何度もしてきた。信じちゃいけない……。わからない。助けてくれ、メアリー。君にもう一度会いたいだけなんだ。”

探索後処理

※他の場所を調べる場合→場所:廊下

場所:案内ミ=ゴくん

奥の突き当りにはロビーにあったものと同じ端末が置いてあった。それ以外はなにもない。端末の横にはホルダーが取り付けられており、ご丁寧に紙とペンが入っている。端末の画面は点滅を繰り返しているばかりだ。

<探索ガイド>
①紙とペン②端末

①紙とペン

なんの変哲もない白紙の紙とペンだ。数枚ある紙のうち、一枚だけ絵が描かれていた。
同じ大きさのボールを2つ乗せた天秤の絵だった。また、天秤の真上には箱が2つ描かれており、それぞれのボールがそこから出てきて天秤に乗った…ということを表現しているらしかった。天秤は均衡を保っている。

【心理学】など
作品としての絵というよりは、なにかを理解しようとして描いたものに見える。数学や理科のノートに近い…のかもしれない。

[KP情報]かつてここに来た人間が『並行的自動在庫補充システム』を図で理解しようとしたもの。

②端末

危険な様子はまったくない。見れば見るほどコンビニの端末に似ている。むしろそれを模して造られたようにも思える。モニタは点滅しているが、完全に壊れているわけではなさそう。何回か叩けば直りそうだ。

【機械修理】【電気修理】【鍵開け】【幸運】など
端末下部を開けて中の配線を見てみるが、まったく見たことがない基盤をしている。とりあえず当てずっぽうでつないでみると、上手く再起動できたようだ。

※ここまで描写したら→イベント:案内ミ=ゴくん起動

端末を破壊する場合(非推奨)

その瞬間、端末からけたたましいサイレンが響いた。探索者は耳をつんざくようなその音に気を取られ、背後から近づく影に気づかない。

肩をつかまれようやく振り返ると、そこには巨大な蝙蝠、いや虫のような、羽の生えたおぞましい生き物がいた。細長い手足のような部位は少なくとも6本はあり、肩に置かれているもの以外はだらりと気だるげに下がっていたが、探索者の全身をこわばらせるのには十分であった。おそるおそる顔を上げるとそこには目も口もない…ただ触手に覆われた不可思議な楕円形だけがあった。
☆ミ=ゴを見た探索者はSANc(0/1d6)

[KP情報]事務員ミ=ゴと強制戦闘(第6版p192参照)。負けたら戦闘ロスト。勝っても→エンドD:大行進

イベント:案内ミ=ゴくん起動

端末が再起動すると数秒ののち、ロードのためかマスコットらしきものが表示された。それは頭が渦巻きで空飛ぶエビだかカニだかのような姿をしていた。
☆その一見かわいいようでよく見ると全然かわいくないマスコットを見た探索者は、何故か寒気が止まらなかった。SANc(0/1)

※ロビーの端末でロール済、もしくは再起動の際に目をそらすなどして画面を見てない場合はSANcなしでよい。

クッソキモいマスコットが消えたあと、画面に「LANGUAGE:『English』『日本語』…」と世界の主要な言語のボタンが出てきたため、読める言語を選択すると以下のような文章が表示された。

“ようこそ!下等生物。このガイドは翻訳チームが作成しています。画期的な機械によって私たちは探索者へガイドを届けられます:案内ミ=ゴくん。

私たちは探索者が本当に不利益なことをしないよう願っています。

サンプルの在庫は『並行的自動在庫補充システム』によって管理されています。私たちはあらゆる生物・物質を並行的にストックすることができます。

ただし、現在偉大な発明には致命的欠陥があります。以下の。
・在庫情報の齟齬を感知したシステムの自動崩壊機能:生存不可能なセクションの爆破。
・権限者以外の在庫情報編集の不許可。

致命的欠陥には改善チームが対応中です。以下の。
・齟齬感知から自動崩壊までのタイムラグを増加
・非常によく似た代替品改善チームの対応によって一時的に軽微な問題。以下の。
・在庫到着位置と時間の多少の誤差

最後に、貴重なサンプル在庫である探索者の協力に感謝します!自動崩壊を引き起こさないように共に注意しましょう!”

[KP情報]要するに2つずつあるもの(探索者含む)の数が揃わなくなると倉庫が爆発して死にますという話。PLが詰まっているようだったら重要な部分を教えるなど適宜フォローを入れるといいかも。

機械翻訳のような読みづらい文章にはまだ続きがあるらしく、『次へ』というボタンが表示されている。タップすると以下のような入力画面になった。

“探索者をサポートするための事務員が常駐しています!いつでもご相談ください。姿が見えない場合は事務室利用申請をして事務室でお待ちください。
事務室利用申請ID:______”

モニタにはテンキーも表示されている。

テンキーに358417を入れた場合

画面に喜ぶクソキモマスコットと「申請受理!事務室のロックを解除しました!」という文章が表示された。

[KP情報]IDはルーム1の女性の死体が持っている。ちなみに間違ったIDを入力した場合は「IDが違うようです…;(」という画面になる。変化なし。

探索後処理

※他の場所を探索する→場所:廊下

イベント:Cの発見

※事務室の扉を開けると強制発生。
※SANcは適宜省略してよい。口調は適宜変更。

端末での申請は正常に完了したらしい。探索者が前に立つと「ポーン」と音がして扉が開いた。中にはホワイトボードやロッカー、掃除用具などいかにも事務室らしいものが置いてある。ただ探索者の目を引いたのは事務机でうなだれている一人の人間だった。
その人物は驚いて顔をあげ、探索者の顔を見ると安心したように笑顔を見せた。[探索者C]そっくりの顔で。
☆とりあえず探索者はSANc(0/1d3)

[探索者C]にそっくりなその人物はこのように話し始めた。

「ああ、あんた…会えてよかった。ん?ああ、大体の事情は把握してる。そしてこれが最後の難関だってことも。はぁ…あの覗き窓から見てみるといいよ」

今まで出会った人物たちと比べて最も落ち着いていて、最も疲れているようだ。いや…憔悴していると言ったほうが正しいかもしれない。力なく控室のほうを指している。

[開示情報]今までの処理と同様である。PLは好きなほうを選べる。

※どちらを選んだとしても以下をPL開示。PC間で共有するかはPLの自由。

[探索者C]はロビーでの端末を操作して申請IDを手に入れた。直後その端末の電源が落ちてしまったので2台目の端末を探してこの倉庫のシステムを知った。[探索者C]はすぐに事務員に相談しようと思い、事務室に入った(他の部屋は見ていない)。しかし結局相談する勇気が出ず事務室で途方に暮れていたという。相談できなかった理由はなぜか話そうとしない。覗けばわかるの一点張りである。
もし詳しく質問するなら、[探索者C]同士は口調・生い立ち・個人的な秘密まで全部同じだとわかるだろう。

分岐

①[探索者C]´を殺す・戦闘するという展開になった場合→補足:NPCとの戦闘
②事務室の探索をする→場所:事務室
③他の場所を探索する→場所:廊下

場所:事務室

※イベント:Cの発見のあとに探索可能。

事務机が2つ向かい合っている。文房具は見られないので普段はタブレットやパソコンなどで作業しているのではないかと推測できる。ロッカーはモップなどを入れておける縦長のタイプだ。ただ、掃除用具はそのまま壁に立てかけられていた。ホワイトボードには何も書かれていない。部屋の奥には控室へのドアがあるが、ドアの横に受付窓のような…小さい覗き窓がある。

<探索ガイド>
①ロッカー②覗き窓

①ロッカー

掃除用具ロッカーに見えるが、掃除用具は壁に立てかけられている。ロッカーの下のほうを見ると中から赤黒い液体が滴った跡があった。

[KP情報]事務室に居たほうが[探索者C]´になった場合、[探索者C]´の口からロッカーの中に死体が入っていることを伝えてよい。違う場合は[探索者C]のPLのみに伝える(PLからの共有は自由)。

・・・・・

※ロッカーを開ける場合は以下の描写

ロッカーを開けると、若い同じ顔をした男の死体が2体倒れこんでくる。
☆SANチェック(0/1d4)

一方の死体は普通の射殺体だが、もう一方は電撃を浴びて死んだように見える。

[KP情報]仲間割れ(自分割れ)した男2人。生き残ったほうはミ=ゴに電撃銃で殺されている。

②覗き窓

探索者が覗き窓から向こうの部屋の様子を見ると、一気に全身が怖気に襲われるのを感じた。なぜなら探索者の視界に入ってきたのは翼竜のような羽を持ち、人間大にした昆虫の手足が何本もぶらさがった、奇怪でおぞましい化け物だったからだ。

探索者は絶叫をこらえながら目線を移すも、その化け物に顔はなく、代わりにミミズの塊のような白くうねうねとした触手のダマがあるだけだった。

化け物は部屋の中でゆっくりと歩き回っている。そしてさらに、その化け物の後ろにはもう1体、同じ種の化け物がまんじりともせず座っているのが見えた。
☆ミ=ゴを見た探索者はSANチェック(0/1d6)

[KP情報]動いてるほうはキーNPCの事務員ミ=ゴ。動いてないほうは精巧に作られた等身大フィギュア。フィギュアであることは必ず伏せること。

分岐

①ドアを開ける場合→場所:事務員控室
②他の場所を探索する→場所:廊下

場所:事務員控室

※ドアを爆破するなど明らかな敵意ある入り方をしたら事務員ミ=ゴと強制戦闘。以下は普通に入った場合の描写。

探索者がドアをくぐると部屋をうろついていた化け物ははたと止まり、探索者のほうへ振り返った。おそらく頭部であろう触手にまみれた部分がこちらを向いている。奥の化け物はまったく興味ないという風に微動だにしない。

探索者が全身を強張らせていると振り向いた化け物は数秒ののち、近くの作業机に置いてあった不可思議なヘッドセットのようなものを手に取り、頭部につけた。その直後、探索者の頭にははっきりと聞き取れる言語でこう響いてきた。

「どうかされました?」

どうやらこの化け物は会話ができるらしい。

※会話をする場合→情報:事務員ミ=ゴ

<探索ガイド>
①作業机②大きな塊③コピー機のような機械

①作業机

この化け物が使っているらしい。削りカスやインクが垂れたバケツなど、およそ事務仕事とは関係なさそうなものが置いてある。

【目星】/適した【芸術】【制作】
削りカスはなにかを細い刃物…例えば彫刻刀などでできたものに見える。インクの入ったバケツには筆らしきものも浮かんでるのがわかった。

②大きな塊

部屋の3分の1が土色の大きな四角い塊で埋まっている。見た感じだとシリコンのような材質に見える。近づこうとすると化け物に「ダメダメ」みたいな仕草で遮られてしまう。

【聞き耳】/適した【芸術】【制作】
嗅いだことのない匂いだが、ゴムやシリコンに近い気がする。このままこれを使うというよりは、細切れにして使う素材に見える。

③コピー機のような機械

見たことのない機械がある。大きさはコピー機ほどだ。操作するパネルが見えるが化け物のせいで近づけない。

【目星】【機械修理】など
全然見たことない機械だ。どうやら、天井にある細長い機械と連動するらしい。細長い機械はプロジェクターのような、なにかを照射するような機械に見える。

④動かない化け物(PLが宣言した場合のみ)

探索者がおそるおそるもう1体の化け物に近づいてみると、精巧に作られたただのフィギュアであると気づく。見た目も大きさも見事に作られた化け物の等身大フィギュアだった。

探索者がフィギュアに見入っていると化け物が急にソワソワし始めた。腕を4本ほどせわしなく動かすその姿は――照れているようにも見える。

「それ自分が作ったんですよ」

化け物は声色にはにかみを交えて話し始めた。

「自分、こう見えてドリ美卒(※私立ドリームランド美術大学)で、立体を専攻してたんです。結局プロになれなくてこうやってアルバイトの事務員やってるんですけどね。でも、これは画期的な作品なんです。ほら」

化け物はそう言うとコピー機のような機械を操作し始めた。すると上の細長いほうの機器が作動し、大きな謎の塊をレーザーでスパリと切った。さらにレーザーは切ったほうの塊の上を縦横無尽に駆け回り、1分も経たないうちに化け物の輪郭を浮かび上がらせた。

「ここの在庫データを拝借して、自動でそのとおりに立体成形をしてくれる装置を作ったんです。この荒い素体に自分で細部を詰めていくのが楽しいんですよ。それで、できたのがあれです。まさに科学と芸術の融合でしょう?」

今まで聞いてくれる相手がいなかったのか、化け物はずいぶんと熱の入った様子だ。

[KP情報]この会話の発生が最終交渉を行う際の条件になる。また、「探索者のフィギュアを作ってもらう」という生還への重要なヒントにもなっている。

分岐

①一通り探索し、事務員にさらに話を聞く場合→情報:事務員ミ=ゴ
②正解の行動がわかり、事務員と交渉する→イベント:最終交渉

情報:事務員ミ=ゴ

[KP情報]生還条件はほとんどこの事務員ミ=ゴがしゃべる。PLが事務員を無視するようならこちらから積極的に話しかけること。

化け物は姿こそ不気味だが、探索者たちと会話する気はあるようだ。少なくとも敵意は感じられない。

「どうも、僕はここの事務員をやっています。下等生物の方ですね?なにかお困りでしたらお力になれると思います」

会話例

Q.ここから出してくれないか?
→「いやぁみなさんは貴重なサンプルなので、勝手な搬出は禁止されているんですよ。でも倉庫内は各在庫に適した環境に設定できるのできっと快適に過ごせると思いますよ」

Q.ほかに人は?
→「ほかに…というのは職員のことですか?だったら今は僕だけですね。でも、研究チームが定期的にサンプルを持っていきますよ。研究所は別にあるので。エントランスはもう見られましたか?あそこが搬出口になっているんです」

Q.持っていかれたサンプルはどうなる?
→「研究に使われますね。あ、研究所への移動は探索者がたには危険なので、きちんと梱包して持っていきますよ!」と言って変な筒に入った脳みその写真を見せてくれる
☆SANc(0/1d3)

Q.(適した技能を使ったうえで)どうしても脱出したいが協力してくれないか?
→失敗:「無理ですよ…僕にはなにも思いつきません」
→成功:「そ、そうですね。立場上全面協力はできませんけど、この倉庫のシステムは今ちょっと感知が甘くなっています。だから、あなたたちの代替品があれば、システムは探索者たちがいなくなっても気づかないでしょうね」

分岐

①控室の探索に戻る→場所:事務員控室
②他の場所の探索に行く→場所:廊下
③正解の行動がわかり、事務員と交渉する→イベント:最終交渉

イベント:最終交渉

※以下の条件を満たすと事務員が脱出の手伝いをしてくれる

【発生条件1】目星で動かない化け物を調べることに成功し、情報を引き出している。
【発生条件2】交渉技能・適した制作・芸術の成功orルーム2で見つけたキリストのネックレスを見せる

※キリストのネックレスを見せた場合、その精巧さにミ=ゴは感動し、是非ほしいとせがむ。あげると上機嫌になり、交渉技能の成功と同じ効果が得られる。

人形作りを依頼する

Q.この機械を使って自分たちにそっくりな人形を作ってくれないか?
→「う~んそうなりますよね。実は…フィギュアで代替品になるのはもう実証済なんです。ウマが合わない同僚が居て…あ!なんでもありません。じゃあ、何体作りますか?」

[開示情報]ここで注文するフィギュアの数によってエンド分岐が発生するため、よく話し合って決定すること。数は一度宣言したら変更できない。

[KP情報]ベストエンドルートは「探索者の数×2」個のフィギュアの注文である。なお、もし探索者´たちを殺していたら彼らの分は死体そっくりに作ってもらわなくてはならない。詳細は「処理:エンド分岐」参照。

※エンド描写はエントランスの外へのドアから出ない限り発生しない

注文した

「わかりました。じゃあ作りますね。やれやれ…ざっくり彩色もしておくのでちょっと時間がかかります。それまではてきとうに時間を潰しておいてください」

[開示情報]製作中に時間切れになることはないので自由に過ごしていい。やりたいことが全部終わったら完成の描写が入る。

—————————————–

※完成の描写は以下

フィギュアが完成したというので控室に戻ると、事務員は得意げに探索者たちソックリのフィギュアを披露してみせた。

「どうです?急ごしらえのわりにはなかなかの出来でしょう。下等生物もよく見ると色や模様が違うんですね。勉強になりました。あとはこのフィギュアをどっかてきとうな場所に置いて、あなたたちはエントランスから出れば完全犯罪成立!ですよ」

イベント後処理

※エントランスに行く→場所:エントランス

場所:エントランス

※技能を振って出る情報は特に設定していない。

カードキーで開けるとそこは今までの無機質な印象が少し薄まった、まさしくエントランス(玄関)のような空間だった。テーブルに椅子、ソファ、ドリンクバーのようなものもある。奥には大きなドアが一つ。あそこが出入り口なら、外に出られるのかもしれない。

<探索ガイド>
①テーブルに椅子②ソファ③ドリンクバー④出口らしきドア

①テーブルと椅子

ごく普通のもの。椅子は背もたれがないシンプルなつくり。

[KP情報]ミ=ゴは背もたれがあると邪魔なため。

②ソファ

ごく普通のもの。どれも背もたれがない。

③ドリンクバー

変なにおいと意味不明な文字の羅列で頭がくらくらする。人間用のドリンクバーではないと感じる。
☆SANc(0/1)

④大きなドア

左右に開くタイプの大きなドアだ。前に立つと普通に開いた。外はもやがかかっているが、うっすらと自分たちの知ってる景色が見えている。

※「イベント:最終交渉」を経て、フィギュアも完成している状態でドアをくぐる場合→処理:エンド分岐

ほとんど探索をせず序盤でドアをくぐろうとした場合

探索者たちがドアから外へ出ようとした瞬間、横から「そこを通るのか?」と声をかけられた。驚いて視線を移すと、いつの間にか椅子に座りワインを飲んでいる褐色肌の男が居た。

凛々しく精悍な顔立ちをしているが、上半身は裸で、下半身は腰布のようなものしか巻いていない。首や腕には金細工と思しき豪華なアクセサリーを身に着けている。男は探索者たちの怪訝な目を気にも留めずこう続けた。

「まぁもちろん構わないさ。私は君たちがどうなろうとかなりどうでもいいからね。ただ、せっかく偶然こんな面白い空間を見つけて、偶然こんな面白いシチュエーションに出くわした私の気持ちも考えてほしい。私は私だから影響を受けないが、君たちはひとたまりもないだろう。これで終わらせる気かい?まだ始まったばかりだろうに」

突如沸いて出た不審者に探索者ちは動揺するだろう。しかしちょっと視線を離した隙に、男は影も形もなくなっていた。幻覚にしては嫌に濃い男だった。
☆SAN(0/1)

※それでもドアをくぐる場合→エンドC:自動崩壊

[KP情報]スピード全滅エンドを防ぐためだけに出てくるお助けニャル様。休暇中。しかしこの男の言葉を信じるかどうかはPL次第。探索者と会話してもいいが、KPは重大なヒントを与えないように注意すること。
(21.11.30作者追記:この雑なニャルラトホテプの使い方かなりムカつくので変えたかったのですが、いいのが思いつかなかったのでこのままにしています)

分岐

①他の場所を探索する場合→場所:廊下
②「イベント:最終交渉」を経て、フィギュアも完成している状態でドアをくぐる場合→処理:エンド分岐
③「イベント:最終交渉」を経ずにドアをくぐる場合→エンドC:自動崩壊

処理:エンド分岐

※この項の内容は完全KP向け情報である。PLには開示しないこと。

本シナリオでは事務員に発注したフィギュアの数と脱出した人数によってエンドが変わる。

分岐は以下になる。

①探索者の数×2個注文し、全員で脱出する

エンドA:瓜二つの友人たち

例えば探索者ABCとNPCのA´B´C´が居る場合、A・B・C・A´・B´・C´のフィギュア全6体を作ってもらう、という注文の仕方。
これで探索者と探索者´が全員脱出しても在庫システムは異常を検知しない。
つまり脱出した生き物の数とフィギュア数が同じかつ、´含む全員で脱出するとエンドA。

②探索者の数だけ注文し、´たちを残す

エンドB:さよなら探索者

例えば探索者ABCと探索者´ABCが居る場合、A・B・Cのフィギュア全3体を作ってもらう、という注文の仕方。´たちも当然脱出したいので抵抗(戦闘)するが、気絶・拘束などして置いていけば探索者のみの脱出は可能である。
つまり脱出した生き物の数とフィギュア数が同じかつ、´を犠牲に脱出するとエンドB。

③それ以外の数で脱出

エンドC:自動崩壊

脱出した生き物の数とフィギュア数が同じになってない場合はエンドC確定。
探索者のフィギュアの数は合っていても、軽率にウサギを抱えてたりしたらこれになる。ウサギも脱出させたい場合はウサギのフィギュアも作ってもらうしかない。

補足

これ以外のパターン(例えば´たちを原型を留めないくらいぐちゃぐちゃにして殺しちゃっててそもそも並列在庫として認識されなさそうとか)の場合はKPの裁量でエンドを変えてよい。

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エンドA:瓜二つの友人たち

探索者たちはどんどんもやの先の見慣れた光景へと進んでいく。あと一歩で自分たちは元の場所へ帰れるだろう―――そんな奇妙な安堵と確信があった。

ふと、自分たちと瓜二つの彼らが気になり振り返る。彼らもまた、彼らが帰るべき世界へと歩を進めていた。そうして彼らもあと一歩というところまでたどり着いたとき、探索者たちのほうを振り返った。

はにかんだような笑顔で彼らは小さく口を動かしている。声はもう届かない。しかし探索者たちはたしかに理解するだろう。「ありがとう。どうか元気で」

彼らを見送ったあと、探索者たちは足を踏み出した。途端に意識がくら…と遠のく。光があたり一面にあふれる。倒れそうになったその瞬間、突然足が地についた。

周りはあの奇妙な倉庫に来る前とまったく同じ場所だった。帰ってきたのだ。探索者たちはそれぞれの場所で安堵するだろう。そしていつもどおりの日常が始まる。

おそらく、どこか別の世界の、自分そっくりな友人たちも。

生還報酬

生還報酬 1d6
一人も欠けることなく、並行世界の自分たちと脱出した+1d3
ノフ・ケーの分もフィギュアを作り、背負って脱出+1d3
ウサギの分もフィギュアを作り、抱えて脱出+1d3

エンドB:さよなら探索者

探索者たちはどんどんもやの先の見慣れた光景へと進んでいく。あと一歩で自分たちは元の場所へ帰れるだろう―――そんな奇妙な安堵と確信があった。そう、あと一歩だ。これで正しいはずだ。

探索者たちは足を踏み出した。途端に意識がくら…と遠のく。光があたり一面にあふれる。倒れそうになったその瞬間、突然足が地についた。

周りはあの奇妙な倉庫に来る前とまったく同じ場所だった。帰ってきたのだ。探索者たちはそれぞれの場所で安堵するだろう。そしていつもどおりの日常が始まる。

それは、置いてきた彼らが歩めなかった日常だった。

生還報酬

生還報酬1d6

(23.03.20作者追記:本文のサイト移行のために再び読み直し、この謎の糾弾エンドを見てかなりムカついたので適宜描写改変して大丈夫です)

エンドC:自動崩壊

探索者たちは目の前に見える帰るべき光景に心を掻き立てられ、居ても立っても居られずそこへ飛び込もうとした。

あと一歩、これで帰れる!

その瞬間、後ろで何かを引き裂くような、あるいは何かをねじ切るような、不快な音があたりを包んだ。振り返ると宙に浮かんだ倉庫がものすごい勢いでひしゃげている。

いや、倉庫だけではない、周りの空間も一緒に。探索者たちは大きく重心を崩し、自分たちの運命を悟った。あと一歩分の距離が足らず、探索者たちは空間のねじれに巻き込まれていく。体が轢きつぶされ、魂が粉微塵になるのを感じる。

しばらくしてそこにはただの空虚な空間だけが残った。奇怪な倉庫も、人間の影も、もうどこにもなかった。

—————————————–

倉庫の自動崩壊に巻き込まれロスト

エンドD:大行進

探索者たちは死に物狂いで化け物に対抗し、勝った。おぞましい死体が転がった。気が違いそうになりながらも、脅威が去ったことに探索者たちは安堵する。

しかしその直後、一番奥のエントランスから大勢の何かが到着した音がした。ドアが開き、先ほどの化け物とまったく同じ姿をした化け物が現れた。1匹、2匹…軽く10匹以上は居る。ぞろぞろと羽や手足を鳴らしながら探索者たちのほうへ真っ直ぐ進んできた。そのあとは……化け物たちだけが知っている。

—————————————–

ミ=ゴたちに殺されロスト

ルート解説

エンドA(トゥルーエンド)にたどり着くまでの最短ルートは以下になります。

ロビーでA’回収→ルーム2でキリスト回収→青スイッチを押す→ルーム3でB’回収→ロック解除→ルーム1で死体からID入手→案内ミ=ゴくん起動→ID申請→事務室でC’回収→事務員ミ=ゴを説得→フィギュアを探索者×2個作らせる→エントランスから全員で脱出

補足:NPCとの戦闘

並行世界の探索者(NPC)は能力値・取得技能・所持品が全てPLの持ってきた探索者と同じです。
そのため、戦闘の際はPLが提出したキャラシートからチャットパレットを作って挑んでください。DEXが同一になるので先攻・後攻はKPに任せます。

なお、NPC探索者をRPするにあたり以下のことを遵守してください。
・敵対の場合:必ずPLが戦闘を宣言してから攻撃すること。敵対関係にないときに自分からPL(PC)を攻撃してはいけない。
・協力の場合:率先して推理しない・技能を振らない。頼まれたらやる程度。

▲背景(目次付近)に戻る

余談・宣伝

20年7月に初めてCoCシナリオを書き、リリースしたのがこの『×2(かけるツー)』でした。
TALTOリリースに伴い、せっかくだから移行しようとリライト作業に入ったらマジで自我のない異常記法だったので憤死しながら書きました。わかりにくい描写や面倒な処理は全部変えたので少しはマシになったかなと思います。

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21.11.30 ヴォンボ(@deitoro)

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