活動報告です!!
創作BL小説アンソロジー『冬息』に参加させていただきました!
前回は『夏雲』からの続けての参加となります(前回のサンプルはこちら)。
トロ川様(おさしみ大帝国様)からの頒布になります!👇👇
私は『冬暁のギリー・ドゥー』という冴えない男×よくわかんないデカい男のBLで寄稿しております。
前回の寄稿作品があまりにも汚すぎたため、今回は臭くない・エモい・モテを意識して書きました。モテモテ作品なので前回の作風が好きな人には御満足いただけないかもしれないのですが、読んだ時点で褒めてください。
というわけで本文サンプルを以下に掲載します。一人3000~7000字程度の短編小説集なのでサンプルも短いですが、ご参考までに。
寄稿『冬暁のギリー・ドゥー』サンプル
『冬暁のギリー・ドゥー』 作:ヴォンボ
「クリスマスまでにはこの街を出ていこうと思って」
「え」
思わず声が漏れた。バーカウンターの一番右端に座る男と、五十路のマスターが驚いた顔で目線を向ける。しかし先に驚いたのは、不動のほうなのだ。
「もういらっしゃらないんですか?」
不動は注目された勢いで問いかける。言葉を向けられた男は長い前髪を指で軽く耳にかけ、困ったように笑った。
「いつもここで飲んでる方ですよね」
「はい」
不動が頷くと、男は体ごと不動のほうに向き直った。マスターがグラスを拭く手を止めたまま二人を交互に見る。
「お知り合いだったんですか?」
「いいえ」
不動は首を横に振って、下手な笑顔を作った。
「今初めてお話しました。でもいつも見てる方で、ここに居るのが当たり前だったので、街を出ていくと聞いて思わず声が出たんです。クリスマスというと、あと一週間もないですね?」
「そうなりますね」
男は面白そうに目を細める。もったいぶった仕草でコートの下から伸びる長い脚が組まれ、高いところで結った髪が波打つ。いつも視界の片隅にあるものだったが、不動は彼の名前も知らない。不動も丸椅子ごと体を男のほうに向け、ぐ、と前のめりになった。
「実はなんの計画もなく話しかけているんですが、あと一週間でお別れだと思うと、貴方になにかしなければという脅迫じみた気分になっています。今日はおごらせてくれませんか?」
「いいですよ。そのあともう一軒はしごしましょうか」
「え」
不動の反応に男はだめですか、と聞く。
「いいえ、ぜひいきましょう。次の店もおごりますよ」
「ありがとうございます」
男は長い髪を揺らして軽く頭を下げ、マスターに合図した。不動はそれに合わせて財布を取り出した。
「たかられてませんか?」
呆れたような困ったような顔でマスターが不動のクレジットカードを受け取る。
「それでもいいですよ、あと一週間なんだから」
不動はわけのわからないことを言いながらカードとレシートを受け取り、男を連れ立って店を出た。
外は雪こそ降らないもののしんと冷え込み、月と不動の間に男の顔があった。並んだことなどなかったので知らなかったが、男はずいぶん大きかったのだ。
「威圧感がありますね」
不動の額にちょうど男の口が来るような有様だった。男が呼吸をするたび、白い息が柔らかく降ってくる。
「あなたが小さいのでは?」
「まさか。僕は中肉中背、日本男児の平均値ですよ。そちらこそ近くで見るとアスリートのようですね。そういうご職業で?」
男は少し眉を顰めて不動に目線を合わせた。紫と黒の狭間のような不思議な色の瞳の中に、冴えない不動の顔が映った。
「なんでもそうやって口に出すのは、私への好意と思えば多少は飲み込めますけど、そうであっても私たち会ったばかりなんですよ」
子供を叱っているのかと思う声音だった。
男の睫毛は長く、髪は黒く、肌は白い。
そのせいで山じみた体躯のくせにやけに儚げに思えた。
不動は近づいた男の顔に合わせて半歩前に出そうになって、自分の行動に飛びのく。うぅ、と情けないうめき声が冬の風に絡んで落ちた。
「好意は、おおげさじゃないですか。おっしゃるとおり会ったばかり──いや、顔は知ってましたが、僕と貴方としては、そうですよ、会ったばかりなんですから」
「でも今、」
男の顔が元の高い位置に戻る。
「キスしようとしませんでした?」
「僕が?まさか」
不動はかぶりを振る。誤魔化すような笑顔を浮かべて見上げたが、つんとそっぽを向いた男がいるだけだった。
「じゃあいいですよ。とにかく、あんまりずけずけと物を言わないでくださいね。質問の答えとしては『いいえ』ですけど」
男はコートを翻しながら街灯が煌めく大通りを進み始めた。クリスマス一週間前ともあって、街路樹には電飾が飾られ、通り沿いの店の多くにはサンタのオーナメントが下げられていた。不動は今日になって初めて、この街の華やかな変わりように気が付いた。
—サンプルここまで—
参加した感想や単発公開の予定など
モテだのエモだの言ってますが、「前回とは違う雰囲気でやってみる」はシナリオでもよくやってることなので、「ああ今回はこんな感じなのね」程度で見て頂ければと思います。
なお『冬暁のギリー・ドゥー』も単発公開の予定はなく、夏雲の『蠅』やskebで書いた小説などと一緒に個人誌でまとめる予定です。いつになることやら…
『冬息』ではさらに豪華メンバーが増えてどんどん肩身が狭くなってる気がしますが、これからも超繊細爆流行りエモシライターとして頑張っていきます。応援よろしくお願いいたします。
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