きさらぎ駅【映画感想】

映画「きさらぎ駅」公式サイト
映画「きさらぎ駅」の公式サイトです。
きさらぎ駅
公開年:2022年
監督:永江二朗
主演:恒松祐里
ジャンル:オカルトホラー、都市伝説
鑑賞日:2023年6月14日

『きさらぎ駅』ネタバレ感想

Twitterで話題になっていたJホラー『きさらぎ駅』。例によってホラー映画部で鑑賞しました。

映画のあらすじ

▼『きさらぎ駅』あらすじ
卒論の題材に「神隠し」を選んだ主人公は異界の駅「きさらぎ駅」からの唯一の生存者を取材する。取材で主人公は「きさらぎ駅」からの脱出方法を聞き、そのうえで自らも「きさらぎ駅」へ赴いた。駅で知り合う人間たちを先導し、手順通り「きさらぎ駅」を攻略していくが…!?

「前半ホラー、後半RTA」という評判がありましたが、前半もホラーでもなんでもないです。

ていうかホラー映画じゃないですこれ。どちらかというとアドベンチャーコメディな気がします。個人的には嫌いではなかったです。

というわけで早速詳しく見てみましょう。

ホラーの面:steamで10円くらいで売ってるホラゲー

まずホラーの面から振り返っていきます。じゃないと『きさらぎ駅』をべた褒めする人間みたくなってしまうので、ダメな点を先出ししておきます(ダメって言った)。

ホラー要素はVFXがすんごいチャチいので、1ミリも怖くないです。それ抜きにしても、急に人の顔が膨らんだり大炎上人間が出てきたりして一貫性がないため、「え?ww」と言ってるうちにホラーシーンが終わってしまいます。

また、特に時間が飛んでないのにカットを多用するせいでフリーホラーゲームが重くてカクついてるときみたいなダルさがあります。特に前半は一人称視点+デフォルト表示のモヤモヤしたエフェクト+カットのキモさ+カメラのガクガク感でホラー以前に酔う。ここで脱落する人はするかも。

とはいえ、90分未満の短さにまとめてるだけあってホラーシーン(怖くない)が出てくるテンポはかなり良い!全然怖くはないですが、隙間を埋めるようにホラーシーン(怖くない)が敷き詰められているので飽きることはありません。たぶん。

総評としてはsteamで10円くらいで売ってるホラゲーくらいの期待値で見るのがいいと思います。と思ったけど無料の「恐怖の森」とか「影廊」とかに失礼なのでやっぱりそれ以下です。

ストーリーの面:90分未満で綺麗にオチがつく

さてそれではストーリーはどうなんだという話ですが、なんと『きさらぎ駅』はストーリーがめちゃくちゃいいんです!!

何がいいかというと「90分未満で綺麗にオチがつく」点。これはつまり「90分の中で起承転結を適切に配分し、無茶をしない」映画だということ。世の中に無茶をしすぎてクソ入り粥みたくなってしまう映画のなんと多いことか。それに比べて『きさらぎ駅』はおかあさんのおにぎりのような安心感があります。

まず前半。取材を受けた生存者「はすみ」がきさらぎ駅で何が起きたかを説明するパート。ここで舞台の説明がおこなわれ、「一緒にいる人間を光のボックスに入れると、その人が死ぬ代わりに脱出できる」という情報が提示されます。ここがなんと丸々伏線にもなっています。

そして後半の主人公のきさらぎ駅RTAパート。駅で合流する人間も取材で聞いた人間とまったく同じ。どこで誰が死ぬかもわかってる状況です。が、余裕生還できるはずの主人公はなぜかおかしなルートに突入し…最後は「一緒にいた女子高生を光のボックスに入れて自分が脱出しようとする」も「失敗」し、女子高生だけが生存します。

その後、実は前半の「はすみ」は脱出方法だけ嘘をついていたことが判明します。つまり、主人公が「無謀にもきさらぎ駅に挑戦し、他人を犠牲にして自分だけ助かろうとする」ことを見越して嘘の脱出方法を教え、あのとき救えなかった女子高生を救ったのです。前半の「はすみ」の後悔の吐露や、丁寧な説明は、全部主人公を誘導するための計算づくだったわけです。

ここまで既に綺麗に風呂敷をたたんでいます。最終地神社じゃないのかよとかそういう小さな部分ははみ出してますが95%くらいは風呂敷の中に入っています。

しかし!!さらにエピローグ!!

前半パートで「はすみ」と主人公の話を盗み聞きしていた「はすみ」の姪が、きさらぎ駅に挑戦してしまいます。彼女が聞いていた脱出方法は「はすみ」の嘘。映画では語られませんが、どうなったかは明らかです。

主人公は他人を犠牲にしてRTAをキメようとして死に、そんな主人公を利用して女子高生を救った「はすみ」は自身の嘘のせいで可愛い姪を失う…二層のとろけるチョコレートのように、因果応報に因果応報が重なっている!因果応報で包んだ因果応報のちまき!!!

なんと気持ちのいい連中だろう…(カリ城)

最後まで見たときのこのまとまり感は、ここ数年で見たB級映画で一番好きかもしれません。というかマジでまったく期待してなかったせいで鑑賞後にテンションが爆上がりしてしまいました。舐めプしてすいませんでした。

邦画ホラーもまだまだ捨てたもんじゃないなと思います。ホラーじゃねぇつってんだろ!!

5段階評価

おもしろさ:☆☆☆☆
画の綺麗さ:☆
テンポの良さ:☆☆☆☆
キャラの良さ:☆☆☆
よく考えたらきさらぎ駅でもなくない?:☆☆☆☆☆

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